第416話 結婚と、ゴブリンと、巣穴

 結婚式をすることになった。

 純白のドレスを身に纏った四人はいつもより輝いて見えた。


「ところで、純白のケーキはどこの風習?」

「さあどこだったかな。きっと行けないほど遠くの風習だ」


 マイラの問いをはぐらかした。

 ウェディングケーキで嘘はつきたくない。


「わたくしはとっても良いと思いましてよ」

「反対してるわけじゃない。ただどこの風習かなと」

「美味しいから正義」

「うん、美味しい。中に果物が挟んであるのね」


 そして、夜になった。


 はにかみながらマイラが家に入って来た。

 後の3人は外だ。


 うん、激しい夜の運動をした。

 あー、詳細は触れない。

 ブラックボックスだと言っておこう。

 プログラムにはつきものだ。


 二人とも汗でぐっしょりだ。

 お湯を出して互いを拭う。


 後これが3人分か。

 体力がもつかな。

 休憩を入れて全員やり切った。


 その頃には夜が明け始めてた。

 泥に潜り込むような気分で眠る。

 いいや良い匂いのする餅のようだ。


 そう思ったら朝になって、4人に抱きつかれてた。

 朝になったが、なにか変わったということはない。

 ただなんとなく距離が近くなったかなと。


 よし、新年も開けたし気持ちも新たに出発だ。

 冒険者になるためには一人大銀貨1枚とレベル10。

 大銀貨1枚は砂糖を売ればなんとかなる。

 問題はレベル10だ。

 とりあえず全員分のナイフは手に入れた。

 刃こぼれしたのは無理やり砥いでなんとかしたナイフだけども。

 刃が波型でこれで切ったら傷痕が凄いだろうなとは思う。


 街の外の森はどこにでもあるような森だ。

 カエデの樹液から砂糖を採った時はモンスターには出会わなかった。

 まあそれほど深く入ったというわけではない。


 森の奥に進むと、汚い緑色のゴブリンが歩いてきた。


「【Pythonパイソン ウォーターカッター.py】」


 ゴブリンは傷口から緑の血を吹き出して死んで魔石を残した。

 所詮ゴブリンだからな。

 これで死ななかったら撤退しているところだ。


「次は私にやらせて」


 マイラが自信満々に言う。


「無理するなよ」

「うん」


 ゴブリンが出て来た。

 リニアが髪の毛で絡めとる。

 マイラとセレンが髪の毛の隙間にナイフを突き立てて殺した。

 レクティは見てるだけだ。


「効率が悪いですね。巣穴を強襲しましょう」


 レクティからの大胆提案。

 みんな頷く。


 まず、巣穴をどうやって見つけるのか。

 マイラが先導する。


 俺にも手筈が分かった。

 獣道を辿っているんだな。

 ただ獣道は突然途切れたりする。

 山道を歩いてたら、突然がけになっていてぞっとしたという話がある。

 獣道あるあるだ。


 だが、分かれ道もマイラは迷わない。


「どうしてそっちだと」

「臭いがするから。リニアの鼻もそうだと言っているし」


 なるほどね。

 匂いか。

 それなら間違いないのだろう。


 そして洞窟に辿り着いた。

 見張りにゴブリンがいることから巣穴だと思う。


 マイラが見張りの死角に滑り込む。

 そしてナイフを突き立てた。

 声もなく死ぬゴブリン。


 レクティの指示で枯れ木が集められる。

 そして火が点けられた。


 洞窟に吸い込まれていく煙。

 これは死ぬな。

 確かに効率が良い。


 そして枯れ木が燃え尽きたので中に入る。

 魔石が散らばっている。

 すまないな。

 生きていくためだ悪く思うなよ。

 魔石を拾いながら進む。

 物凄く臭い。

 おもわず消臭魔法を使ってしまった。

 洞窟の奥には宝と呼ぶにはみすぼらしい物が沢山置いてあった。

 錆びたナイフ。

 欠けたガラス玉。

 布切れ。

 奇麗な石。

 金にはならないみたいだ。


 魔石が唯一の収穫かな。

 後で魔道具を作ってみないと。


 更に奥には骨が多数あった。

 獣の骨か人間の物かは分からないが。

 とりあえず手を合わせる。


 俺のレベルは6に上がった。

 みんなは5だ。

 煙で殺してもレベルは上がるらしい。

 俺の推測ではゲームの世界だから、そういうプログラムが組んであるんだろう。


 魔力も98上がってた。

 この調子だ。


 あと何回かゴブリンの巣穴を潰せば、レベル10に届くに違いない。

 ただ、煙が吸い込まれて行くような巣穴は滅多にない。

 あれは運が良かった。

 空気の流れを読むマイラがいたから出来た戦術だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る