第414話 顔役と、依頼と、動き出す

「顔役と話をつけようよ」


 朝起きて、マイラがそう言った。


「スラムで過ごすなら挨拶ぐらいしてもいいか」


 顔役の所に行くことになった。

 スラムの住人が寄って来たので、リニアがそのうちのひとりを捕まえる。


「顔役と会いたい」

「くそっ、ついてないな」

「駄賃も出す」

「絶対だぞ。ついて来い」


 スラムの奥深く。

 スラムにしてはましな建物があった。

 嘘ではないようだ。

 顔役かボスがどうなのか知らないが、とにかくスラムの重要人物がいるに違いない。


「ほら駄賃の銅貨3枚だ」


 俺が銅貨を差し出すと、ひったくるように奪って案内役は去って行った。


「お邪魔するよ」


「朝から誰だ。お前ら、領主の手の者じゃないだろうな」


 そう俺達に問いかけているのは、スラムの顔役らしき人物。


「どうして、俺達が領主の手の者だと?」

「見慣れない奴はたいていが領主の手先だ」


 どうやって信じさせるかな。


「ごちゃごちゃうるさい。死にたいの?」


 マイラがドスの利いた声でそう言った。


「お前はスラムの住人の匂いがする。認めてもいい。だが小僧と、後の3人の女は違う。特にお前、貴族だろう」


 そう言って指差されたのはレクティ。

 分かっちゃうのか。

 まあ、人さらいに服ははぎ取られてないから、レクティは貴族の服だ。

 それに所作が貴族らしい。


「生い立ちをざっと説明する。俺は貴族の息子だったが、魔力が少なくて、6歳の時に放り出された。マイラはスラムで育った。レクティは貴族庶子だということになってる。いろいろと貴族絡みの複雑な事情だ。リニアは学園の生徒だったんだが、さらわれて実験動物扱いされた。セレンは平民だ。だが医者だ。医者はどこでも信用して貰えると聞いた。まあ俺達はこういった訳ありの集団だ」

「そうか。俺はカカオシ。お前の言葉に嘘はなさそうだが、それで領主の手の者じゃないという証明にはならない」


「じゃあ、どうすればいい?」

「仕事を頼みたい。それをやってくれたら信用してもいい」

「何だ?」

「人さらい組織のことは知ってるか?」

「知ってる」

「やつらスラムでやりたい放題だ。懲らしめたい」


「何だ。そういう話なら早く言えばいいのに」

「マイラさん、順番というものがありますのよ」

「今の力でもチンピラ程度ならなんとかなるさ」


 リニアは髪の毛を波立たせた。


「私、頑張ります」


 セレンが両拳を握った。


「うん、みんなにはやる気になっているところ悪いが、すぐには無理だ。レベルを上げるから待っててほしい。そうだな10日ぐらいあれば楽勝だろう」

「分かった。10日以内に方をつけろ」


 話がついた。


「人さらい組織を潰しても、顔役は信用しないよ」


 顔役のもとから帰り道、マイラがそう言った。


「金の切れ目が縁の切れ目。そういうことだ。顔役は俺達が利用できているうちは敵対しないだろう」

「諜報でもそういうことはあります。ダブルスパイだと疑っても、利用できるうちはする」


 レクティは顔役の心理が分かっているらしい。

 レクティがいれば顔役の罠に嵌ったりはしないだろう。


「さて、役割分担だ。全員のレベルを上げるのはもちろんだが、住む所も改善したい。マイラには調達を頼めるか」

「うん、こういう場所でどうやって物を獲得するのかはよく分かってる」

「レクティは諜報だ」

「かしこまりました。小規模ですが諜報網を築き上げてご覧に入れます」

「リニアには家の警備を頼みたい」

「ええ」

「セレンは家の修復だ」

「分かった」


 俺はとにかく魔法の構築だ。

 それが一番の近道になるだろう。


 まずは塩を作る。

 塩は生活に必要だから、たぶんどこの世界でも売れる。

 これをお金や色々な物に変えよう。


for i in range(0,100,1): # 100回ループ

  print("【レクティから俺に魔力を移せ】")

  print("【塩召喚、製塩せよ】")


 こんな魔法で良いか。

 レクティの魔力ありきの方法だが、使えるものは使わないとな。


 それと誘導弾。


print("【火球生成】")

print("【レクティから俺に魔力を移せ】")

while 1:

  print("【火球を敵に向かって誘導せよ】")

  print("【レクティから俺に魔力を移せ】")


 こんな感じで良いか。


 何とかして俺の魔力量を増やしたい物だ。


「【魔力量鑑定】」


――――――――――――――――――――――――

魔力:115/115

――――――――――――――――――――――――


 俺の魔力量は113のはずなのに。

 もしかしてレベルアップして増えた。

 それならこれからもっと強くなれる。

 とにかくレベルを上げたり色々と実験だ。

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