第413話 スラムと、スキルと、消臭
この街のスラムは城壁の外の北側にある。
北門をくぐってすぐだ。
「おい、ここから出るとスラムだぞ」
門番が親切に教えてくれる。
「宿を取る金がないもので」
「そうか」
可哀想な人を見る目つきをされた。
また人が落ちぶれて行くのが堪らないという顔だ。
優しいひとなんだろうな。
だが、選択肢がない以上仕方がない。
城壁があるから、スラムの日当たりは壮絶に悪い。
スラムには糞尿の臭いとすえたような臭いが漂っていた。
建てられている建物はどれも急ごしらえで、嵐が来たりすると倒壊しそうだ。
城壁の外なので、一応スラムの外側には柵が設置してある。
この柵もボロボロだ。
これはかなり気を引き締めないと。
後ろをひたひた裸足でついて来る住人が現れた。
その人数は時間が経つほど増える。
「ビクつかないで、カモ認定される」
マイラがそう言った。
いざという時はウォーターカッター連発だな。
レクティに目配せしてその手をしっかりと握った。
「羨ましい」
マイラがぽつりと呟いた。
いやマイラの魔力量も少ないだろう。
それが分かっているのか、挑発するような言動はない。
リニアの金髪が波打った。
暴走だけはやめてくれよ。
リニアの髪がスルスルと伸びると後をつけてきた住人に絡みついた。
「放せよ。この化け物」
「こいつらただものじゃない」
「領主の手の者か」
「逃げろ!」
蜘蛛の巣を散らすように、住人が逃げる。
髪の毛に捕らえられていた住人も逃れて逃げた。
「リニア、髪の毛を操れるようになったのだな。スキルが生えているかも」
「【スキル鑑定】。うん、共生と体変形と鑑定魔法ってスキルがある。全部、レベル1だけど」
やはり行動でスキルが生えるみたいだ。
「【スキル鑑定】。火魔法と、死角察知と、流動把握と、体術と鑑定魔法ってスキルがある」
マイラにもスキルが生えたらしい。
「【スキル鑑定】。わたくしは、魔力譲渡魔法と毒魔法と思考加速と鑑定魔法がありますわ」
レクティのスキルはそれか。
「【スキル鑑定】。ガーン、わたし鑑定魔法しかない」
「セレン、炎を出せば火魔法が手に入るぞ。とにかく色んな魔法を試してみろよ」
マイラの案内でスラムを進む。
そして空き家とおぼしき家を見つけた。
ただ屋根は腐って落ちている。
雨が降ったら寒さに震えないといけないようだ。
しかし、この臭いは何とかならないかな。
消臭魔法を作るか。
while 1: # 無限ループ
print("【もし、消臭魔法が切れていたら、レクティから俺に魔力を移し、消臭せよ】")
レクティと手を繋ぎ、やってみたらくさい臭いがなくなった。
セレンがクンクン鼻を鳴らしてる。
これでどうやら眠れそうだ。
「食料を調達してくる」
「マイラ、無理をするなよ」
「分かってる」
しばらくしてマイラが持ってきたのは5羽のウサギの死骸。
さすがだな。
死角察知があるからか。
死角から近づけば、ウサギとて逃げられない。
鉄のナイフを召喚して、ウサギを捌く。
切れ味には期待できないので、肉がボロボロになった。
しょうがないよな。
塩が欲しいところだ。
土の中にある塩は不味い。
試してみなくても分かる。
不純物が混ざっているからだ。
print("【塩召喚、製塩せよ】")
こんなのでどうかな。
うん、上手くいった。
肉に塩をパラパラと掛ける。
かぶりついた肉は極上の味だった。
空腹は最大の調味料とはよく言ったものだ。
ウサギ肉の大半がリニアの胃袋に消えたのは言うまでもない。
香辛料とか欲しいが贅沢は言うまい。
腹が満たされたら、眠くなってきた。
レクティと離れると消臭魔法が使えないので、密着した横たわった。
マイラがレクティの反対側に陣取った。
リニアは何と体を変形させて俺に絡みついた。
温かいから大歓迎だ。
セレンが一人寂しそう。
「足が寒いな」
セレンが俺の足に抱きついた。
うん俺だけが優遇されているような気がしないでもない。
ハーレムの主の特権だと許してもらおう。
穴の開いた屋根から星空が見える。
どこの世界の空もそんなに変わりないな。
この世界でも俺達はどうにか暮らしていけそうだ。
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