第410話 ウォーターカッターと、簡易エディタと、脱出

 この苦境を脱するヒントは、Pythonパイソンと魔力譲渡魔法だ。


 プログラムを組むぞ。


for i in range(0,100,1): # 100回ループ

  print("【レクティから俺に魔力を移せ】")

  print("【石英粒と水を召喚】")

while 1 : # 無限ループ

  print("【レクティから俺に魔力を移せ】")

  print("【召喚した物を流動させよ】")


 ウォーターカッターの魔法だ。


「レクティ、手を伸ばして」

「ええ」


 レクティとしっかり手を握る。


「【Pythonパイソン】」


 さっきのプログラムを打ち込んだ。

 水晶が混じった水が召喚され、檻の鉄格子にまとわりつく。

 音が出るが、馬車もうるさい。

 このくらい大丈夫だろう。


 鉄格子が切れていく。

 レクティが貴族で、魔力がたくさんあって良かった。

 しかし、プログラム的魔法を使うたびにプログラムをいちいち打ち込むのは大変だ。


s=input("ファイル名を入れて下さい:")

f=open(s+".py","w")

s=input()

while s!="" :

  f.write(s)

  f.write("\n")

  s=input()

f.close()


 こういうプログラムを作った。

 簡易エディタだ。

 さっきのプログラムをウォーターカッター.pyとして打ち込む。


「【Pythonパイソン ウォーターカッター.py】。うん使えてる」


 全員が檻から解放された。

 俺は荷台と御者台を繋ぐ窓を除きこんだ。

 御者台には3人座っていたが、誰も気づかれてない。


「【Pythonパイソン ウォーターカッター.py】」


 ウォーターカッターを解き放つ。

 人さらい達は声もなく死んだ。


「【スキルを鑑定せよ】」


――――――――――――――――――――――――

スキル:

  Python

  火魔法レベル1

  鑑定魔法レベル1

  魔力譲渡魔法レベル5

  土魔法レベル2

  水魔法レベル2

  念動魔法レベル8

――――――――――――――――――――――――


 うん、かなり良い調子で上がってる。

 こうなるとPythonパイソンスキルはレベル上げチートだな。


「どうどう」


 リニアが馬に声を掛ける。

 馬が止まった。


 俺達の他に捕まっていた人は6人。

 ここで彼らに好きにしろと言ったら、不人情だろう。

 だが、さらわれて来た場所に返すのは容易ではない。


 全員から話を聞くと、隷属魔法がありこれを使われると奴隷になってしまう。

 レジストは出来るが拷問されたら大抵の人は折れてしまうだろう。


 それに目的地の街に、この馬車が出入りしてたところをみると、役人などと癒着していることも考えられる。

 だが、街に行かないという選択肢はない。

 捕まってた人達を安全に返すのは護衛が要る。

 護衛を雇うなら街だ。

 冒険者ギルドはあるようだから、金さえあれば問題ない。

 困ったことに俺達の金は、先に帰った人さらい達が持って行ってしまった。

 手元にあるのはさっき殺した奴らのお金だけだ。


 全員は帰れない。


 俺達もゲートまで行きたいが、あそこに行くのは大変だ。

 道が分からないからな。


 とにかく安全に街に入ろう。

 街が見える所まで馬車で行くのが確定だな。


 道を観察してみる。

 踏み固められている普通の道だ。

 アスファルト舗装とかされてたら、文明度合いは近代だと思わないといけない。

 まあ、馬を使っている時点で、近代ではないか。


 武器もないのが痛い。

 この世界はモンスターが出るようだ。

 ただ街道沿いは兵士が定期的に狩っている。

 出ても弱いらしい。


 ホーンラビットとかだと馬の大きさで威圧されて逃げるようだ。

 ゴブリンクラスになると馬も襲って食っちまう。

 そういうのに出会わないのを祈る。


 レベルが5も違うとまず歯が立たない。


「【レベルを鑑定せよ】」


――――――――――――――――――――――――

レベル:2

――――――――――――――――――――――――


 さっきの男達を殺してレベル2になった。

 とにかくまだ俺達は弱い。

 パワーレベリングが必要だな。

 安全にそれを成すには、チートな魔道具とか作らないといけない。

 頑張れば作れるはずだ。

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