第2部 異世界編

第8章

第409話 人さらいと、鑑定魔法と、パイソンスキル

「あっちに逃げたぞ」


 別の異世界を偵察中に山賊みたいな連中に追われてる。

 言葉が通じるのは良かったが、状況は悪い。

 魔道具は全滅で、動作しない。


 理由は分かる。

 エラーになるものな。

 そしてあったスキルらしき物も消えている。

 マイラの流体把握も、レクティの思考加速も、リニアの共生も、セレンの2点間転移もだめだ。

 リニアの体が暴走しないのか幸いだが、それだけだ。

 俺達は少し強い一般人。


 頼みの綱の魔法だが、プログラム的魔法ではないので効率が悪い。

 種火の魔法10回ぐらいで魔力が枯渇すると思われる。


 ゲートから離れたのが失敗だ。

 いい気になっていたのだろう。

 慢心は良くない。


「このままだとジリ貧。あっちは馬を持っている」

「そうですわね。この世界で毒がどれだけ効くか分からないですが、足掻いてみせましょう」

「私もモンスターの力は使えないけど、打って出ることは賛成」

「剣が使えるのなら、一矢報いることができるはず」


「よし、一斉に掛かろう」


 茂みから俺達は飛び出た。

 マイラが男の死角から斬りつける。

 だが、短剣の刃は通らなかった。


 リニアが蹴りを放つと男はニタリと笑って蹴りを片手で止めた。

 レクティが男に毒液を浴びせる。


「おっと、毒使いか」


 男はそう言うと解毒ポーションらしきものを飲んだ。

 そしてリニアの足を掴んで投げ飛ばした。

 100メートルぐらいは飛んでいる。


 その隙にセレンが剣で男に斬りつける。

 俺は石を拾って投げつけた。


 だが、セレンの剣も通らなかった。

 くそっ、バリアみたいな物がある感じだ。


 男は足元にいたマイラを鬱陶しそうに蹴った。


「くっ」


 マイラがバウンドして30メートルほど転がる。


「おっと、力を入れ過ぎたが。お前らレベル幾つだ」


 くっ、よりにもよってレベル制の世界かよ。

 セレンが剣を振るう。

 男は剣の刃を摘まむと、セレンに蹴りを放った。

 セレンが土埃を上げて転がって行く。

 そしてレクティも蹴られて、俺も蹴られて意識を失った。


 気が付いたら馬車の檻の中だった。

 みんないる。

 どうやら打ち身ぐらいで済んだようだ。


 俺達以外にも女子供が檻の中にいる。


「ええと、こんにちは」


 俺は同じ檻の中にいる男の子に話し掛けた。


「こんにちは」

「ええと、ここってレベルがあるよね。どうやったらそれを確認できる?」

「鑑定魔法だけど」


 怪訝そうな男の子。


「【レベルを鑑定せよ】」


――――――――――――――――――――――――

レベル:1

――――――――――――――――――――――――


 出た。

 ええとレベル上げしてないからな。

 くそ弱いってことなんだろう。

 たぶんみんなも同じだ。


 ここから脱出するのは大変だな。

 とりあえず魔法が使える。

 レベルが上がれば魔法の威力も上がるんだろうな。

 とにかく情報だ。


「効率よく魔法を使うにはどうしたら良いかな」

「近代魔法を使えば良いけど、どんな呪文なのかまだ習ってないんだ。それと魔法スキルレベルを上げるといいらしいよ」


「【スキルを鑑定せよ】」


――――――――――――――――――――――――

スキル:

  Python

  火魔法レベル1

  鑑定魔法レベル1

――――――――――――――――――――――――


 うん出たね。

 この世界に来た時から使ったのがスキルになってる。


「魔法スキルのレベルを上げる方法は?」

「魔法を繰り返し使うと良いらしいよ」


 なるほどね。

 さて、俺の強みはPythonパイソンスキルだ。

 Pythonパイソンは言わずと知れたプログラム言語。

 これがスキルになったということは自由に使えるってことだ。


 男の子から魔法について色々と聞いた。

 魔力譲渡魔法なるものがあるらしい。


 スキルの使い方も聞いた。

 Pythonパイソンスキルを使うなら、【Pythonパイソン 種火.py】みたいに使うのが正式らしい。

 「【Pythonパイソン】。おっ出た出た」


>>>_


 『>>>』はプロンプト、プログラムを受け付けますよという状態だ。

 プログラムをファイルにしなくても、Pythonパイソンにはこういう使い方がある。


>>>print("【種火】")

>>>_


 ちゃんと作動してる。

 火が出た。

 俺は脱出計画を立てた。


 プログラム的魔法はどの世界でも最強だということを証明してやる。

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