第407話 ワームと、口喧嘩と、地震

 トプスのダンジョンに来たが、どうやらこのダンジョンは一直線みたいだ。

 ただしワームが出てくる横穴がたくさん開いている。

 ここのワームは小さいので胴回りが30センチ、大きいのだと10メートルを超える。


 横穴にワームが潜んでるので、いつ出て来るか分からない。

 攻略するにしても洞窟みたいなところで火は不味い。

 大規模な魔法は行使しづらい。


「密閉空間だと毒がお薦めです」


 レクティに毒を頼むのも一つの手だ。

 俺達は魔道具で毒対策しているから、散布しても問題ない。

 だが、あれはトイレが近くなるという欠点がある。


 ダンジョンの中はトイレなんかない。

 俺は別にいいけど婚約者の4人は恥ずかしいだろう。


 それにワームっていうのはミミズのでかい奴で予想外に気持ち悪い。

 いや益虫なのは知ってるよ。

 でも生理的嫌悪はまた別だ。


 こんなのを倒しながら進むのは願い下げだ。


「ワームは気持ち悪いから、討伐はパス」

「気持ち悪いってのは賛成だけど、じゃあどうするの?」

「大きな鳥さんを召喚しましょう」


 マイラの問いにセレンが答えた。


「鳥の知り合いはいないから、アルゴ辺りにやらせるのも手だな」

「アルゴならきっとタイトが弱くなったと思って、戦いを挑んで来るか裏切るんじゃない」


 リニアがそう意見を述べた。


「じゃあさ、キメラ女がでかい鳥に変身してワームをついばむ?」

「そんな物が食えるわけない。マイラみたいなスラム育ちじゃないんだから」

「どうだか。蜘蛛女とキメラ女は食えそうだけど」

「元はと言えばセレンが鳥さんなんて言うからだ。責任もってセレンがワーム退治しなさいよ」

「私が悪いの」

「だから毒が良いと言ってますわ」


 4人の口喧嘩が始まった。

 アルゴに頼むのは駄目かもな。

 裏切られたら余計な手間が増える。


 大規模魔法で薙ぎ払えとかしたい。

 そうすれば解決だ。

 あれっ、それがなぜできないと思ってた?

 できるよな。

 地震を起こしてダンジョンを崩落させてトプスを生き埋めにしちまえばいい。


import magic

mp=earthquake(7.6) # マグニチュード7.6の魔法を起こす

mclose(mp) # 魔法を終わる


 魔力がたくさんいるから、10億ぐらいに魔力を増幅しておこう。

 よし、やるぞ。


「【地震発動】」


「「「きゃあ」」」

「タイト、喧嘩止めるなら別の方法があるでしょ」


 轟音を立てて地面が陥没した。


「いや、魔王らしくダンジョンを潰そうと思って」

「ワームは生き埋めしても死なないでしょ」


 マイラ以外の三人はお花を摘みに行くと言って離れた。


「いやここまですれば、あとはアルゴに丸投げしても平気かなと」


 俺がダンジョンを潰したけど、後始末は任せたとか言えるからな。


「それにしても、案外3人はだらしないのね。こんなことでちびってしまうなんて」


 3人は地震に驚いてちびってしまったのか。

 そういえば、大きな地震に遭遇したことがないな。

 ここは大陸だから、地震が少ないのだろう。


「マイラはなんで驚かないんだ」

「魔力の流れでタイトが大きいのをぶっ放すって分かったから。さすがタイトという魔法だったわ」


 3人が恥ずかしそうに少し赤い顔をして帰ってきた。

 下着を着替えたんだな。

 それには触れないでおこう。


「びっくりしましたわ。ダンジョンを崩落させるなんてさすがタイト様」

「豪快な一撃だった。さすがはタイト」

「不意打ちはちょっと。次からは教えてね」


 さて、とダンジョンは陥没してクレーターみたいになった。

 ワームが一斉に飛び出して来る気配はない。

 トプスは死んだかな。

 エリアボスである魔王がひとつ消滅したけど、ひとつぐらいならなんとかなるか。

 獣人を大規模入植させて、モンスターを狩らせてもいい。

 何とかなるだろう。


「マイラさん、その目は許せませんわ」


 マイラが三人を可哀想な子供を見る目つきで見てる。


「喧嘩はなしだ。どうしてもやると言うならワームの肉を食わせる」


 みんなぶんぶんと首を振った。

 分かってくれたようで何よりだ。


 獣人がワームの肉を食っているのは知ってる。

 前世でも食用ミミズはあったから、食えない物じゃないのは分かるけど。

 俺は食わんぞ。

 4人も同じ意見らしい。


 ダンジョンの陥没跡がもこもこと持ち上がった。

 ワームが出て来るのか。

 勘弁してくれ。

 と思ったらひよっこり現れたのはトプスの顔。

 死んでなかったのだな。

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