第406話 遊戯と、敵前逃亡と、秘密結社
「リッチどういうつもりだ」
「ダンジョンは楽しめたかね」
「楽しみのために裏切ったのか」
「ふむ、全ては遊戯なのだよ。我は悟ったのだ」
「こんなのは遊戯とは言えない」
俺は魔道具停止の魔法を発動した。
リッチの体が崩れ落ちる。
そばにいたスケルトンも同様だ。
「よし、リッチを組み立てるぞ」
リッチの骨を床に並べる。
骨って形が似ているのがあるから、元通りにするのは難しい。
まあいいか。
だいたい合ってれば。
リッチ起動。
「むっ、吾輩、負けたのであるか」
「魔道具を停止する魔法を使った」
「くっ、それはずるだ。チートは嫌われるぞ。通りで早いと思ったのである」
「裏技もゲームの醍醐味だ」
リッチは納得してないようだ。
「で、まだ歯向かうか」
「どのような形であれ攻略されては致し方ない。賞品として護符をあげよう」
リッチの護符は呪われそうだ。
これは装備しないでおこう。
「アスロン侯爵の貸し出しているスケルトンを引き上げるんだな」
「もちろんだとも」
アスロン侯爵軍からスケルトンが引き上げていく。
アスロン侯爵軍は大混乱した。
「リッチは負けたらしい」
姿を隠して耳を澄まして兵士の話を聞く。
「あんなモンスターは端から信用してない」
「だけどよ。これで魔王が1対3。勝てねえんじゃないかな」
いや、1対4だけど。
「逃げるのか。モンスターがうようよいる中をか」
「どうだ。逃げたいやつらを集めてみては」
「ばれると懲罰ものだぞ。軍法会議に掛けられて死刑になるぞ」
「顔を隠して活動してみたらどうだ。誰か捕まっても、首謀者である俺達しかメンバーの顔は知らない」
「それならひとりぐらい捕まっても問題ないな」
「よしやるか」
兵士は麻袋を探すと、目の位置をくり抜いて覆面を作った。
それを被って兵士の前に出た。
「剣を下ろせよ。俺は敵じゃない。逃げたいとは思わないのか」
「そりゃ逃げたいさ」
「だよな。秘密結社『豆袋』に入らないか。人数を集めて脱走しよう」
「なるほど」
兵士の前に、麻袋が差し出された。
兵士は麻袋を被って、用心深げに辺りを見回した。
「いいか、集会には麻袋を被って出るんだ。後で日時を報せる」
面白くなってきた。
もっと見ていたいが、姿を隠しても、空気の流れや足音や匂いでばれる危険性もある。
俺は秘密結社『豆袋』の首領の魔法神秘名を覚えた。
似たようなこと考える奴がいたらしい。
脱走するための秘密結社が他にも出来た。
「脱走を企てたとしてお前を逮捕する」
憲兵が兵士を逮捕するのを俺は見つけた。
上手くやれない奴もいる。
「くそう、この戦いに大儀なんかない。侯爵の私腹を肥やすために命なんか掛けられるか」
「言いたいことはそれだけか」
何人か処刑されて晒しものにされた。
あの『豆袋』の首領は上手くやっているらしい。
今のところ処刑されてない。
俺は姿を隠して『豆袋』の首領と手紙のやり取りをした。
俺が脱走に手を貸すと書いたら喜んだ。
その第一陣100人余りが今日、脱走する。
陣に向かってウサギやネズミが放たれる。
警報の魔道具があちらこちらで、警報音を発した。
脱走する人間が、陣から離れて走る。
獣人が彼らを安全な場所まで案内した。
第一陣はこれでいいが、次はこう上手くはいかないだろうな。
次なる手は偽物の襲撃だ。
マッチポンプともいう。
獣人が襲撃を開始する。
兵士が陣から出撃して、その一部が戦闘地域から離れる。
獣人が戦闘を切り上げた。
第ニ陣は上手くいった。
次はどうするかな。
止めを刺すとしたら、トプスのダンジョンを攻略だろう。
俺を含めた5体の魔王で圧力を掛けたら、軍は瓦解するはず。
斥候役のマイラが帰って来た。
「ワームの巣になってるね」
「攻略は難しそう?」
「魔法で焼き尽くせばいいけど、奴ら横穴をたくさん開けてひそんでる。魔法でも厳しいかな」
うーん、魔道具停止は役に立たない。
自動迎撃も、遮蔽物があると、撃ち洩らしが生じる。
行ってみてから、考えるか。
脱走兵達は、アルゴに護衛させて、魔境のふちまで送らせた。
よし、トプスのダンジョン攻略だ。
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