第405話 友情と、床ぶち抜きと、掘る魔法

 ダンジョンは構造は洞窟だった。

 石畳を敷いたり壁を作るのは手間だから、こうなるとは思うけど。

 様式美としては、石組みのダンジョンが良かったな。


 リッチのダンジョンはトラップだらけだった。

 だが、それが魔道具で作ってあるもんだから、停止する魔道具がある俺達にとっては楽勝。

 レクティやマイラがトラップを見破ったりするからさらに安全だ。


「タイト、クリアとはどんな関係?」


 マイラが俺に尋ねた。


「友達かな」

「男女の友情は存在しないんだよ」

「そんなことないだろ」


 前世だって女子社員と一緒に仕事してた。

 まあ、気を使う場面とかあったが、けっして恋愛感情からじゃない。

 プログラムの仕事は、椅子に座って同じ部屋で長時間過ごす。

 親近感は湧くが恋愛感情はそこにはない。

 仲間というか戦友だな。

 デスマーチという戦場を一緒に渡り歩いた戦友。


 クリアもそういう友達だ。


「ぴしっと言っておかないと」

「いちいち、お前とは友達で恋愛感情はありませんというのか」

「それぐらい言っておかないと」


 クリアとは別れが近い。

 君とはいつまでも友達だ、そう言って別れようか。


「まだそこのトラップは生きてる」


 魔道具停止発動と。

 よしこれでいい。

 影に隠れていたスケルトンもバラバラになった。


「なんかダンジョンアタックしてる実感がないな」

「リッチというお方は魔道具至上主義ですわ。わたくしの分析ではそう出てます」


 レクティは敵を分析することに余念がない。


「自分の体が魔道具だからな。魔道具を否定することは自己否定につながる」


「私、モンスターの因子を持ってるけど、モンスター至上主義じゃないわ」

「リニアはサイリス以外のモンスターを飼ってないだろ。モンスター至上主義なら、新たなモンスターとか産みだしたりするはずだ」

「許せないこととして、モンスターの実験があるわ。特に新しいモンスターを生み出す実験はだめよ」

「覚えておくよ」


「ねえ、床に穴開けて最短距離で進まない?」


 セレンがそう提案。


「空間同士がうまくつながればいいが。明後日の方向に掘ると、無駄骨になる」

「私、分かるよ」


 自信たっぷりのマイラ。


「マイラさんの能力ならそうでしょうね。空気の流れで構造が分かります」

「蝙蝠を放ってみましょうか」


 そういうとリニアは手から蝙蝠を作り出して、解き放った。


「えっ、分身できるの」

「まあね。最近覚えたの」


 そう言えば、リニアの髪の毛が切り離されても動いていたな。


「じゃあ、私は測量するね」


 セレンは分度器みたいな物を取り出した。

 星の角度を測る機械らしい。

 前に使ってたのをみたことがある。


「ええと、もうちょい下」


 マイラがセレンに指示をする。

 分度器の角度と方向が変えられた。


「蝙蝠じゃ方向が分からない」


 だよね、蝙蝠を放っても、どの角度に掘ったら良いかは分からない。


「キメラ女、使うならワームかモグラでしょ」

「そうね」


 リニアの手からモグラが生み出されて、分度器が指し示す方向に潜っていった。

 さすがモンスターのモグラ、石も砕いて進んでいるようだ。


「下の階層に出たわ」


 しばらくしてモグラが戻ってきて糸を咥えた。

 ふたたびモグラが下の階層に行く。

 この糸の通りに掘っていけば良いわけだ。


 掘る魔法ね。


import magic

soil = [] *1000000 # 土100万立方センチ

global soil

mp=magic_make(soil,IMAGEUNDEFINED) # 土を魔法として登録

magic_delete(mp) # 土を消去

mclose(mp) # 魔法を終わる


 こんなのでどうだ。

 魔法で掘り進むとほどなくして下の階層に出た。

 かなり、時間短縮にはなったようだ。


 待ち構えていたリニアの蝙蝠がリニアの体の中に戻る。


「さあ、次よ」


 マイラの指示で作業は進んでいく。

 10階層ほど潜り、俺達はついにラスボスだろう部屋に到着した。

 豪奢な扉があり、標識がありそこには『“邪悪なリッチの事務所”、営業時間はAM9時からPM3時、今、リッチは *在室中*』とある。


 どうやら、リッチはいるらしい。


「よし、首を刎ねられないように注意だ」

「そんなへまはしないよ」

「ですわね」

「首を刎ねられたぐらいじゃ死なない」

「後ろの方で大人しくしてる」


 扉を蹴破ると、リッチが佇んでいた。

 俺にはリッチが笑っているように見えた。

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