第401話 人質と、腹下しと、祟りじゃあ
アルゴとベヒモスを伴ってアスロン侯爵軍に対峙した。
「こっちにも魔王の味方が2体いる!! 恐れることなどない!!」
あー、駄目か。
「何するんだ」
縄を掛けられた獣人が前面に押し出された。
人質を取るとは卑怯な奴だ。
一旦退くしかないか。
「アルゴ、ベヒモス、ご苦労様」
2体の魔王が退場して、アスロン侯爵軍の空気が弛緩したように見える。
そして、スケルトンの大軍が出てきた。
リッチの野郎、アスロン侯爵になんかくみしやがって。
「【マシンガン礫】」
腹いせとばかりに石弾の雨をスケルトンに浴びせる。
スケルトンはなすすべなく壊れていった。
アスロン侯爵軍はその隙に守りを固めたようだ。
盾を持って方陣を組んでいる。
今日はこのぐらいにしておくか。
俺達は獣人の村に引き上げた。
「脅しに屈せずか。上手くない展開だな」
「スパッとやらないと、ストレスが溜まるよ」
「そうはいってもな。皆殺しには抵抗がある。3割ぐらい見せしめに殺しても、敗残兵は各地で野盗になるに違いない。ひとの迷惑も考えないと」
「私達は、相手が死なないように戦闘を勝利しないといけないのですね」
「まあな。それが理想だ」
4人が話し合い始めた。
「この地を見捨てるというのはどうでしょうか。自分達で守れないのは蹂躙されても仕方ありません」
「不人情だと思う」
「こう、スカッとぶっ飛ばしてという展開に持って行きたいねぇ」
「幹部の暗殺しかないんじゃない」
それは俺も考えた。
「仕方ありませんね。毒を使いましょう。食事に混ぜれば戦闘不能です」
「蜘蛛女はすぐに毒を使う。それだと敗残兵が脱落しまくるでしょう」
「私も毒はちょっと」
「刃物に毒を塗ってスパンとやるのは賛成だけど」
毒か、うん、後始末が大変そうだ。
でも嫌がらせするのは悪くない。
兵士の1割ほどが腹を壊せば、戦闘するのが嫌になるかも。
「よし、食事に毒を混ぜよう。レクティ、腹を壊す毒で味と匂いがしないのを選んでくれ」
「はい。それですとバイ菌の出番ですね」
俺達はレクティが培養した菌を持ってアスロン侯爵軍の陣地に向かった。
姿隠しを使ってだ。
ある地点まで近づいた時に警報音が鳴った。
くそっ、敵もやるな。
姿を隠しても魔道具は欺けない。
俺は撤退の合図をした。
兵士が警報を聞いて駆けつけてくる。
「誰もいないぞ」
その時、ウサギが走り去った。
「なんだウサギかよ。モンスターでなくて良かったぜ」
「侯爵様から貸与された古代魔道具があれば、モンスターも容易いぜ」
うん、敵もそれなりに考えているようだ。
帰って作戦の練り直しだな。
「で、どうする?」
「私の出番のようね。姿を隠して空から侵入するわ」
「リニア、任せた」
リニアが服を脱ぎ下着姿になる、そして背中から蝶と蝙蝠と鳥の羽を生やした。
あまりグロテスクではないな。
見ようによっては美しい。
「キメラ女、がんば」
リニアが姿を消して飛び始めた。
さて吉報を待とう。
リニアは問題なく帰ってきた。
「出来た料理に腹下しの菌を仕込んだけど。上手くいくかどうか」
「上手く行っても行かなくても、有効な手として、次はこの遠征は呪われていると周知することだ」
「ビラを撒くのだとあまり効果が出ないでしょうね」
「そこは魔道具だ。ホログラフィで老婆を出して、呪われている、祟りだとやればいい。空から侵入できるのが分かったから、魔道具を幾つかばら撒くさ」
「固有名詞が必要ですね」
○○村の祟りじゃあみたいな奴ね。
「腐敗竜ディケイの祟りで良いだろう」
「その腐敗竜というのは?」
「物が腐るのは腐敗竜の仕業なんだよ」
「雑菌のことですか」
「まあな。人質になっている獣人に物語を吹き込め」
腐敗竜ディケイ作戦が始まった。
魔道具のホログラフィの老婆役は獣人の老婆がやってくれた。
ぼろきれを着せておどろおどろしくする。
顔によく分からない紋様を描き込んだ。
紋様はマイラがノリノリで考えた。
そして、ホログラフィの魔道具を投下。
いくつか放り込んだから、そのうちのひとつでも兵士の目に触れれば良い。
捕まっている獣人はリニアから腐敗竜ディケイの話を聞いて震えあがった。
作り話なのに信じてしまったらしい。
信じてくれた方が都合いいけど、なんだかな。
リニアが兵士の様子を偵察する。
腐敗竜ディケイの話は兵士に広まった。
迷信深いのが多いからな。
まあこんなもんだろ。
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