第400話 到着と、方針と、裏切り

「タイトぅぅぅ」


 到着したマイラに抱きつかれた。

 アスロン侯爵の軍が来たからそろそろだと思っていたけど。


「いちゃつきは後にして下さいませ」


 レクティも来たんだな。


「セレンとリニアは?」

「セレンとリニアはここら辺りの見て回っている。タイトに対して愛情が深いのはやっぱり私だね」


「酷い。マイラの提案でじゃんけんして役割を決めたのに」

「全くね。隙を見せるとすぐにこうなんだから」


 セレンとリニアが現れて、婚約者4人が揃った。


「さて、アスロン侯爵軍をどうするかだな」

「殺しちゃえば」

「マイラ、あの人数の男が死んだら、アスロン領は飢饉になるぞ」


「理想は戦わないでお帰り頂くと行きたいものです」

「そんなわけいかないよ」


 レクティの提案にマイラが異を唱えた。


「ここは補給部隊を叩いて、戦闘できなくすれば良いのではないでしょうか」


 セレンは補給部隊を叩くという提案か。


「私の出番かな」


 指の関節をリニアがポキポキと鳴らした。

 補給部隊を叩いて帰らせるとなると、軍の大半は帰る途中で脱落する。

 戦闘で大半葬るのと変わりないような気がする。


 指揮官だけ暗殺するという手がもっとも損害が少ないかな。

 だがそれはアスロン侯爵も分かっているに違いない。

 古代魔道具を持って手ぐすねを引いて待ってると思う。

 全財産賭けてもいい。


「タイト、手加減なんかしたら負ける。あっちはタイトを殺すつもりできているんだから。捨て身のチンピラにボスが余裕を見せて負けるのはよくあること」


 マイラに心を見抜かれた。

 いや、表情を読まれたのか。


 最悪はアスロン侯爵軍を全滅させて、いなくなった労働力はリッチのスケルトンで補うか。

 俺はアスロンの民に恨まれるのだろうな。

 だが、これも魔王の宿命か。


「殲滅は最後の手段にして、とりあえず魔王4体で威嚇してみよう。怖気づいたらこっちの勝ちだ。そこから話し合いだな」


 4人が頷いた。

 各魔王に、伝言魔法を送る。

 リッチと地竜のトプスから返事がない。

 あいつら、裏切りやがったな。

 どういうつもりだ。

 アルゴとベヒモスが寝返らなかったのが意外だ。


 リッチとトプスの様子を偵察しないと。

 まず、リッチの方から尋ねた。

 入植した獣人に変わりはない。

 いつも通り働いている。


 リッチの石の家に行くと、家の脇にぽっかりと穴が開いていた。


「ダンジョンね」


 マイラに言われなくても分かる。

 ええと、リッチの考えとしては魔法戦では俺に敵わないから、籠城する。

 こんな感じか。

 籠城して隙をみて出陣するのだろう。


 まあ、それなりに考えているな。

 リッチの戦力のスケルトンは魔道具だから損傷は気にしなくて良い。

 ダンジョンに入るとトラップ満載で、あの手この手で掛かってくるのだろうな。

 厄介なことになった。


 トプスのもとに行ったリニアが戻ってきた。


「ダンジョンができてる。ちらっと潜ってみたんだけど、ワームモンスターの巣になってたわ」


 トプスも他のモンスターを従えるという頭があったんだな。

 アスロン侯爵の入れ知恵かも知れないが。


 賢い戦術だな。

 しかし、トプスは餌である草木を地中にいてどうやって確保するんだろう。

 補給は大事だ。

 アスロン侯爵軍が補給してやるのかも知れない。

 すぐに行き詰るようなことにはなってないだろう。

 トプスも馬鹿じゃない。


 うん、アスロン侯爵も思ったよりやるな。

 俺はベヒモスに会いにいった。


「なんで裏切らなかった?」

「あいつら、俺の宝物を侮辱しやがった。キラキラしているように見えるがただの石だと言ったんだ」


 こいつ、それを聞いても俺に騙され続けたのか。


「疑問に思ったりしないのか?」

「キラキラしてる物は正義。他の奴が価値がないなんて言っても関係ない。とにかくキラキラした物に囲まれて幸せ。俺の価値観を馬鹿にする奴は敵だ」


 こいつ、我が道を行くタイプなんだな。

 自分の価値観がルール。

 他人は関係ない。

 強者だからこんな考えにもなるか。


 アルゴの考えは聞かなくても分かる。

 強い奴が正義。

 アスロン侯爵軍は弱く見えたのだろう。

 だから、寝返らなかった。

 さて、2体の魔王で威嚇してどれだけ効果があるか。

 それで戦いがどう動くか分からないが、やってみるだけだな。

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