第397話 問題点と、石製品と、毛糸

 リッチエリアの入植の問題点は、ずばり野菜不足。

 木材不足。

 とにかく荒野で何にもない。

 石を召喚して家の建材に使うのはできるが、それ以外はどうにもならない。


 樹の成長は遅いし、一度荒野になるとなかなか森に復活はしない。

 リッチエリアの獣人が輸出する品目の少なさと言ったら。

 輸出品のほとんどが骨だ。


 骨を使い過ぎるとリッチがスケルトンを作れなくなって怒るだろうな。


「参った。リッチのエリアってなんでこうも物がないんだ」

「まさに死の領域ね」

「なにかいい案はない」

「すぐに生える雑草の種は蒔いたけど、この地をすぐに緑あふれるというわけにはいかないわ。輸出品は土を使った物が良いかもね」

「土か? 焼き物の類かな。獣人は素人だからどうにもならない。そりゃ魔法で簡単な瓦ぐらいは焼けるけど、そんなのじゃ行き詰る」


 詰んでるな。

 リッチが王国と交易することしか考えてなかった。

 ここの獣人の入植は失敗か?


 地下資源の採掘は、獣人の手には余る。


 何かないかな。

 太陽光発電。

 スライダー国と交易がなれば、太陽光充填の魔法陣が手に入る。

 それまで手をこまねいているのもな。


「獣人の視点で考えてみたら」

「獣人の視点ね。獣人は狩猟民族だ。俺が来るまで畑という概念はなかった。そうか石の武具だって彼らにとっては貴重品か」


 そうか、石でつくっちまえば良いんだ。

 何もスライダー王国とここの獣人が交易しなくてもいい。

 ここの獣人が、他のエリアの獣人と交易できればそれで成り立つ。


import magic

mp=stone_sword_make() # 石で剣を作る

mclose(mp) # 魔法を終わる


 こんな魔法の魔道具を作った。

 石の剣なんて笑っちゃうほど、性能は悪い。

 ほとんど切れなくて、まるで鈍器だ。


 だけど、獣人にとっては宝物。

 所変われば品変わる。


 石の剣の所を、盾とか、冑とか、コインとか、矢じりとか色々変えて魔道具を作った。

 ここを石製品の産地にするぞ。


 でも、石道具作成の魔道具に魔力を使い過ぎるとリッチに献上する魔力が減る。

 掟を作った。

 石の魔道具は一日10個まで。


 石製品のバリエーションを増やすのは意見を聞きながらでいい。

 皿とかすり鉢とか色々と考えられる。


 石製品以外にも何かないかな。

 獣人は魔法で火を起こしてない。

 火起こしの道具だ。

 一番簡単なのは火打石。

 石のまんまだからね。


 弓を使った弓切り式火起こし器。

 これが獣人の間で大流行。

 他のエリアでも真似した製品で溢れかえった。

 コピー対策してなかった。


 でもこんなののコピー対策は考えられない。

 失敗だが、獣人の生活がひとつ豊かになった。


 獣人の生活で便利な物と言ったら、糸紡ぎの魔道具だろう。

 このエリアはスケルトンがモンスターを狩って来る。

 毛皮には不自由しない。


 毛を刈り取って、紡げば糸が、編めば布になる。


import magic

wool=[]*1000 # 毛

transform_yarn(wool) # 毛を糸の形に


 こんな魔法で魔道具を作った。

 毛糸を量産するのだ。


 毛糸の輸出品は有り難がられた。

 染色とかの技術が進めばもっといい。

 とりあえず草の汁や、果物の汁で染めることを教えた。


 ところが毛皮から取った毛糸は染まり難い。

 うん、魔道具の出番だね。


import magic

yarn=[]*1000 # 毛

dye=[]*10 # 染料

for i in range(0,100,1): # 100回ループ

  dye_yarn(yarn,dye) # 毛糸を染める


 魔道具だと100回染めるのもあっという間だ。


「毛糸はいいな。エルフの村へお土産に持って行こう」

「獣臭いのは嫌じゃないのか」

「食べるのことはしないだけだ。装飾品だって、獣の物からだって作っている」


 エルフと交易できるのは嬉しい誤算だ。

 他のエリアの獣人だけで十分と考えていたからな。

 案外、スライダー王国との交易品になったりしてな。


 ここでしか採れない木の実とかを使っているから、真似されない。

 コピー対策にもなっているな。


 他のエリアの獣人に対してのコピー対策は出来てないが、魔道具を使った生産量と安さで太刀打ちできるはずだ。

 雑草が育ったら、毛が採れるモンスターの畜産も考えるとしよう。

 このエリアは毛糸と石製品でやっていくぞ。

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