第393話 荒れ地と、スケルトンと、弱点

 そろそろ、地竜のトプスの領域から、別の魔王の所に行こう。

 好奇心を刺激されるのは、アンデッドの魔王リッチだ。

 この世界にアンデッドはいないはずだ。

 どういう仕組みなのか聞いてみたい。


 リッチの領域は荒野だ。

 足を踏み入れた途端、ここは死の世界だと悟った。

 虫一匹、植物のひとつも、生きている物が何もない。


「これは酷い。大地の嘆きが聞こえてくるようだ」


 クリアの感想に俺も同意する。

 ここに入植するのは難しいな。

 テラフォーミング並みの努力が必要だ。


 何もない荒野を進んでいく。

 雑草をひとつ見つけた。

 死の荒野でも植物は生えるんだな。


 環境的には生き物が暮らしていけないわけじゃないのか。

 何がこの荒野を作り出しているのか。

 しばらく進むとちらほら雑草が生えていた。


 何か来る。

 近くにきて分かったスケルトンだ。

 スケルトン達が雑草に手をかざすと、雑草はみるみる枯れていった。

 アンデッドが死の領域を作り出しているのだな。


 スケルトン達は俺達にも手をかざしたが、俺達は別段痛くも痒くもなかった。

 生命力を吸い取る攻撃なのだろうか。

 でも、これも魔法の一種に違いない。

 魔法は他人の魔力に反発する。

 レジストできるから、エネルギーを伴わない魔法はほとんど効果がない。


 スケルトン達は諦めたのか去っていた。

 そして、しばらくして剣を持ったスケルトンの集団がやってきた。


 どうやら、一戦交えたいようだ。

 剣を持ったスケルトン達は、攻撃をバリヤに阻まれ、俺達は無傷。

 どうするか見ていたら引き上げていった。


 話し合いに来ているのだから、なるべく暴力は振るいたくない。

 テリトリーを侵しているのはこちら側だからな。


 モンスター相手だと事情は少し違う。

 モンスターは人間を餌だとみているふしがある。

 アンデッドもモンスター枠に入れるべきだろうか。


「また来たぞ」


 クリアが警告を発する。

 投げ槍を手に携えたスケルトン集団が近づいてきて、投げ槍を構えて投げる。

 投げ槍はバリヤに当たって爆発した。


 バリヤを破る程ではないが、結構な威力だな。


「こちらから手を出さざるを得ないか」

「攻撃は厳しくなる一方だから、しょうがないと思う」


 投げ槍を放ったスケルトンに火球を当てる。

 スケルトンは燃え灰になった。

 レジストした感触がないことから、スケルトン自体は大した魔力をもってないようだ。

 スケルトンの一体を爆発で粉々にする。


 復活しないのだな。

 ある小説のスケルトンは核を壊さない限り、活動をやめなかったのだが。


 爆発の余波で骨折したスケルトンも、怪我が治ったりしないようだ。


 そして、スケルトンは撤退していった。


 粉々にしたスケルトンの残骸を調べる。

 残骸の中に魔石を5つ見つけた。

 なんだモンスターなのか。

 それとも魔道具の一種か。

 姿形からみるに魔道具のような気がする。


 魔道具だとするとかなり高度だな。


 俺は木の棒を取り出して、スケルトンだった魔石を取り付けた。

 そして、魔道具を起動。

 木のスケルトンが立ち上がった。


 やっぱり魔道具か。

 主人は魔道具を起動した者になるらしい。

 俺に襲い掛かるそぶりは見せない。


 リッチサイドの弱点が分かった。

 スケルトンの魔石を回収されると、敵に武器を与える感じになる。

 数を100万体ぐらい用意すれば別だが、人間には敵わないと思う。

 それが分かっているから、ここに引きこもっているんだな。


「間抜けな魔道具だ。寝返ってしまうとは」


 クリアもそう考えたみたいだ。


「敵味方、の識別が出来なかったのかな。神秘魔法名を使えば出来ると思うけど」

「雑兵だから手を抜いたんだろ」


 調べたら、スケルトンは神秘魔法名を持ってなかった。

 神秘魔法名で敵を判別すると、スケルトン同士で同士討ちが発生するのか。

 動いている物を攻撃から除外すると、スケルトンは飛び道具に対するなすすべがないことになる。


 こういう魔道具の設計は難しいな。

 AIでも組み込めればいいが、学習が手間だ。

 学習されたデータが全て揃っていれば出来ない事はない。

 だが、それは出来ないと言っていることと等しい。


 それからは暇な物だった。

 スケルトンは現れない。


 うーん、あれが魔王の最大戦力だとは思わないんだけど。

 たぶんどこかで様子を窺っているな。

 そんな気がする。

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