第391話 餌泥棒と、骨の利用と、テント

 トプスとの仲は順調にとはいかなかった。

 家を建てるのにも雑草を抜く必要がある。


「餌泥棒。許さん」


 トプスが餌泥棒だと騒いだ。


『これはトプスに奉げるために採ったんだ』


 実際は邪魔だから抜いたんだが、それは言わない。


「なあみんな、捧げ物だろ」


 獣人はぶんぶんと首を縦に振った。


「分かった。ありがと」


 初めてトプスから感謝された。

 獣人たちは抜いた雑草を全部トプスに持って行って、トプスの機嫌が直った。

 トプスは食い意地が張っていて、みみっちい奴なのが分かった。

 家に使う木はどこから輸入しないとな。

 元の獣人の領域は木が多いので、とりあえずはそこからだな。


 ここの獣人が食べていく方法を見つけないと。

 野菜を食わないと病気になるのは獣人も一緒だ。

 ただ野草を摘むとトプスが怒る。


 それも輸入しないといけないとなると、大変だ。

 草食モンスターが狩っただけで暮らせるだろうか。

 獣人たちは家の柱や屋根の梁などを、トプスが殺した草食モンスターの骨で作り始めた。


 トプスに気にした様子はない。

 骨は邪魔者だったのだろう。

 獣人は骨を加工して色々な物を作り始めた。


 弓やナイフの柄などの武器。

 スプーン、皿などの食器。

 首飾りや、腕輪などのアクセサリー。

 本当に色々な物を作る。


 俺が考えなくても、彼らは必死になってやっている。

 この分だと骨のあるうちは骨製品を輸出するだろう。


 トプスが草食モンスターを殺して骨の墓場に持ってきた。


「わぁ」

「まだ待て、トプス様が去った後だ」


 はやる獣人達をリーダーが抑える。

 獣人達の目が輝く。


「よし、作業開始だ」


 トプスが去ったあと、草食モンスターの死骸に獣人達が群がった。

 皮を剥いで、肉は燻製に、爪や牙や骨も加工品になる。

 トプスが草食モンスターを狩り続ける限りは、獣人は飢えないな。

 ビタミン摂取の問題は残っているけど。


 骨製品と燻製肉の一部は交易品となり、果物に化けた。

 これでビタミン問題も解決だ。


 トプスの一日のサイクルは決まっている。

 今は何度目かの食事を終えて、居眠りの時間だ。

 獣人達がトプスに群がり寄生虫を採る。


 俺はあの虫を食う気にはなれない。

 トプスがどこから寄生虫を貰ってくるかと言えば、草食モンスターからだ。

 草食モンスターを仕留める時に寄生されるようだ。


 獣人達の家の屋根は毛皮製。

 腐ったりしないのかと心配になったが、油と防腐剤が塗ってあるらしい。

 獣人の知恵も馬鹿にならない。

 この水をはじく皮で作ったテントは王国でも売れるに違いない。


 テントの支柱は骨製が良いだろな。

 俺は獣人達に一つ作らせてみた。


 出来上がったテントに入る。

 水をはじく皮は良いんだけど、匂いがきつい。

 防腐剤と油の匂いだな。


 匂い消去魔法を作る。


import magic

smell = [] *10000 # 匂い一万立方センチ

global smell

mp=magic_make(smell,IMAGEUNDEFINED) # 臭いを魔法として登録

magic_delete(mp) # 臭いを消去

mclose(mp) # 魔法を終わる


 こんなので良いかな。

 臭い消去と。

 これなら、このテントも使える。


「ふむ、私もそのテントが欲しくなった」


 使ってみてクリアも欲しがった。


「臭い消去魔法が必須だけど」

「それぐらい私にも出来る」


 テントの支柱が骨というのは案外いいな。

 軽くて丈夫だ。


 ところどころ金具を使えばもっと良くなるだろう。


「そんなんじゃ駄目だよ」


 テントを獣人から駄目出しされた。


「どこが駄目なんだ」

「臭いが抜けると虫がやってきて刺されるんだ」


 あの防腐剤の匂いは虫よけの効果もあったのか。

 匂いをなくせば良いってものでもないんだな。


「虫は魔法で退治するから平気だ」

「これだから毛なし人間は」


 獣人は魔法を使わない。

 魔法を使うことへの複雑な思いがあるに違いない。

 妬み、恐れ、憧れ、羨望、渇望、とにかく色々な思いがあるに違いない。

 獣人にも魔法を使わせてみたいな。


 草食モンスターの骨を魔法で変形させたりすれば、骨製品を作るときに楽になる。

 必要は発明の母だ。

 魔法の普及と貿易の活性化。

 特にエルフとの交易は視野に入れたい。

 骨と皮のテントはクリアにも受けたから、エルフの気に入る製品も出来るに違いない。

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