第384話 獣人と、和平への道と、アルゴ

 警告だろう笛の音がエルフの村に響き渡る。

 モンスターの襲来か。


 俺は現場に急いだ。

 そこにいたのは縦横無尽に動き回る獣人。

 エルフは弓矢で応戦している。


 この魔境の森には獣人もいたのか。

 頭の上のほうの耳と尻尾があって、顔は人間と変わりない。


 肉体強化関係だとディッブ人とかぶっているな。


 四つん這いで獣人が走る。

 だがエルフは矢で弾幕を張り近づけさせない。

 ほどなくして獣人は諦めたのか引き上げていった。


「獣人がいたんだな」


 クリアを探して話し掛けた。


「あいつらは盗人だ。食べ物欲しさに攻めてくる」

「この森は豊かだと思ったんだがな」

「やつらの縄張りだけでは我慢できないのだろう。何しろ子を一度に4人ぐらい産むのはざらだ」


 多産傾向の獣人か。

 人間のいる地域に攻めて来たら一大事だな。

 数の力は偉大だ。


「それは大変だ」

「だが奴らの寿命は短い。20年も生きれば良い方だ。知識がないので、道具もほとんど使わない」


 そう言えば着ている物は毛皮だった。

 文化レベルが低いのか。

 となると魔道具とかは作れないな。

 そういうことを加味すると人間の敵じゃないな。


「どういう特殊能力持ちなんだ?」

「物音とか匂いとかとにかく五感が鋭い。矢の軌道も捉えるところから、そういう能力だろう」

「となると身体能力は自前か」

「そうなるな。魔法もろくに使えないやつらだから」


 ええと、マイラに似た能力だな。

 戦い方もどことなく似ている。


 多産で短命。

 ある意味自然法則に従っているな。

 エルフと真逆な生き物と言える。


「エルフと獣人の争いをなくしてやろうか」

「そんなことができるのか。出来るならやってくれ」


 人口を抑えるには避妊だ。

 これで人口調節するしかない。

 食料は畑を作ればいい。

 焼き畑農業なら出来るだろう。

 草食のモンスターが来たら狩ってしまえば良い。

 うるさい法律もないからな。


 水は魔道具で出せる。

 これの安定供給はエルフに任せればいいだろう。


「彼らの文化が分からない事には交渉は難しい」

「歩く獣だからな。言葉は通じるが、道徳や法律はない」


「宗教とかないのか?」

「あるぞ、彼らはドラゴンを神と崇めている。崇めてても食われたりするのだがな」

「祟り神から発生した宗教だろう。恐ろしい物は神に封じてしまえというやつだ」


 さて、ドラゴンのあてならある。

 アルゴを呼び出せば良いのだ。

 それをやると一戦交えないといけない。

 魔力アップと攻撃魔法はあるから大丈夫と言いたいが、世の中には絶対はない。

 気掛かりなのはアルゴに俺が魔法を教えたことだ。


 魔法を使うドラゴンは厄介だ。

 作戦を立てねばなるまい。


 まず、バリアを張って、巨大火球を撃つ。

 相殺されることを考えて次の一手はなんだ。


 より大きい火球か。

 戦いの余波で森が大変なことになると、エルフと獣人は飢える。

 本末転倒だな。


 殺しはしない程度にガツンといくか。

 アルゴを殺しても仕方ないからな。

 アルゴには獣人を説得する役目がある。


 あれだな。

 あの魔法だ。

 必滅矢。

 あれなら相殺されない。


import magic


orbit = [0] * 2000 # 軌道データ200メートル


mp=vibration_arrow_make(100) # 1メートルの振動の矢を作る

magic_straight(mp,orbit,sizeof(orbit)) # 真っ直ぐの軌道データを入れる

magic_move(mp,orbit,sizeof(orbit)) # 矢を動かす

mclose(mp) # 魔法終わり


 ええと、こんなのでいいか。


 ついでにこれも。

 姿隠しの魔法だ。


import subprocess


subprocess.call('attrib +H カニキクカ.body') # 体の属性を隠し属性に



 アルゴも相手の位置が分からなければ苦戦するだろう。



 準備は整った。

 森奥に行き、伝言魔法でアルゴに話し掛ける。


『話したい事がある』

『うるさい。羽虫がごちゃごちゃ言うな。これ以上言うようなら食ってやる』

『掛かって来い』


 アルゴは俺の位置が良く分るな。

 そういう能力があるのか。

 ドラゴンの能力は分からない。

 文献にもほとんど載ってないからな。


 きっと不思議パワーだろう。

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