第380話 灯りと、見張りと、センサーライト

 灯りの魔道具だが、リサーチしようと思う。


「ええと、灯りの魔道具なんてあったら買う?」


 ウォシュレットを買いに来た客に聞いてみた。


「何でそんな魔道具が必要なの?」


 逆に訊かれてしまった。


「何でって、夜何かしたい時とか」

「ないよ。基本、空が明るくなると起きて、暗くなると寝るだから」


 マジか。

 そりゃ作っても売れないな。


「夜トイレとかに起きないの」

「そんなの【灯り】の呪文一言で済むよ」


 ごもっとも。


「ええと魔力が枯渇したりは?」

「ないない」


 手を振って否定されてしまった。


「どれぐらいあるの?」

「平均1万はあるから。多い人だと100万を超える」


 そりゃ、少しぐらい魔力を無駄遣いしたって気にしないよね。

 俺なんか113だぞ。

 もっとも魔道具で増やしているけど。


「どんな灯りが欲しい?」

「要らないんじゃない」


 ごもっともな回答ありがとう。

 なんか負けた気分だ。

 何と戦っているのかって話だが、不便さと戦っている。

 ウオシュレットは受けたのだから、便利な物なら受ける。


「夜に起きているエルフっていないのか?」

「そう言えばいるね」


「誰?」

「見張りだよ。村の境界で夜も起きて見張っている」


「じゃあ彼らは灯りがいるかな?」

「夜、煌々と灯りを照らしてたら、モンスターが寄って来る」

「ええと、モンスターがきた時だけ点けば良いって事だよね」


import magic

mp1=obj_make(1,IMAGEBUTTON,HOLOGRAPHY) # ボタンを作る

while 1 : # 無限ループ

  while touch(mp1) == 1 : # ボタンに触った

    mp2 = light() # ライトを点ける

    mclose(mp2) # 魔法終わり


 極小のホログラフィのボタンに触るとライトが点灯する。

 見張りに使えるはずだ。


 長老のハロゲンに出来た魔道具を見せた。


「ふむ、これはいかん魔道具じゃな」

「いかんというとどこら辺が」

「例えば魔力を充填し忘れてこれがあると過信すると、接近されてしまうわけじゃ」


 なるほど。

 命が掛かっているものなミスの要因は少なくした方が良い。

 シンプルに行かないといけないようだ。


 じゃあシンプルに行こう。


「1000個ばら撒けば。ひとつの動作不良は関係なくなる」

「そんなにたくさんの魔石をどこから持ってくるのじゃ」

「ここいらのモンスターの魔石は大きい。ゴブリンサイズの魔石がたくさんあれば良いんだ。魔石を分割すれば容易い事だ」

「じゃが、そんなにたくさんの魔道具は作れんだろう」

「作れるよ。前は一日1万個とか作ってた」


「おぬし何者だ」

「タイトだよ。それ以上でもそれ以下でもない。魔王という肩書はあるけど、今は魔王じゃない」

「ふむ、力を失った魔王か。平和を考えたら……。じゃがしかし、我らはモンスターではない。被害にあったわけでもないのに客人をどうとは出来ない。厄介なことじゃ」

「敵対するつもりはないよ。話し相手がいなくなると困るからね」

「それを信じるしかないか」


 エルフの文化はわりと気に入っている。

 壊したりしたくない。

 便利魔道具は作るけど、こんなので文化は失われはしないだろう。


 センサーライトの魔道具は出来た。

 触ったら点くというホログラフィを大きくしてくれと言われた。

 夜ならホログラフィが見えないからだそうだ。

 夜目も効くモンスターもいるが、ホログラフィを恐れて近づかない奴は放っておいて良いそうだ。

 問題はそういう警告を無視して踏み込んで来るモンスターだそうだ。

 そんなものかな。


 ホログラフィの大きさを3メートルほどにした。

 魔力は食うがプログラム的魔法の効率を考えたら、1晩ぐらいは軽く持つ。


 センサーライトの魔道具は紫色の塗料を塗った。

 紫は毒の色なので、警告になるんだそうだ。


「タイトは不思議だな。なんでこんなにエルフのことを考えてくれる」


 クリアにそう聞かれて、どう答えようかと思った。


「人間同士いがみ合っても何も始まらない。いいや生物全体で共存の道を考えるべきだ」

「スケールの大きな話だな。世界全体で仲良くか。理想だな。その壮大さが羨ましい。タイトがエルフでなくて残念だ」


 前世の地球はどうなっているだろうか。

 温暖化は止まったのかな。

 異常気象で人が住めなくなっていなきゃ良いけど。

 今の俺には何も出来ない。

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