第367話 学園祭と、雪祭りと、卒業


 試験が終わると学園祭だ。


 今年は何をするか迷ったが、冬なので雪を作ってみた。

 で雪遊びだ。


extern MAGIC *snow_make(float mana);

extern void mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=snow_make(1.0); /*雪を作る*/

 mclose(mp); /*魔法を終わる*/

}


 この魔法で雪が作られる。

 雪遊びはお子様に受けた。


 マイラは俺がビシッとポーズを取った雪像を作っている。

 レクティは雪にシロップを掛けて食べていた。

 きっとオルタネイトで夏に売るつもりなんだろうな。


 セレンとリニアは滑り台を作った。


「さあ、順番に並んで、横入りする悪い子は一回休みだからね」

「滑ったら、飴をあげる」


 子供達が並んで何回も滑る。


 セレンとリニアは嬉しそうだ。

 子供が喜ぶところを見たいのかも知れない。


 ベークとラチェッタはミニチュアの城を作っている。

 可愛らしい王子と姫様の人形付きだ。


 コネクタは台座に刺さった剣を作って、ベスは雪だるまを作った。

 楽しんでいるようで何より。

 コネクタの台座に刺さった剣は男の子に受けた。


「聖剣を引き抜いて、勇者になる。あっ聖剣が壊れちゃった。ごめんなさい」


 剣を抜こうとした男の子が雪の剣を壊してしまった。

 べそをかく男の子。


「大丈夫、聖剣は不壊だから、何度でも甦る」


 コネクタが剣を作り直す。

 それからも、剣を抜こうとした男の子がいて、何度も壊されて、その都度コネクタは作り直していた。


 雪像づくりに参加する大人や子供もいて、学園の敷地は雪像で彩られた。


 レクティがオルタネイト商会の人を呼び集めて、雪のシロップ掛けを振る舞い始めた。

 今の季節は果物が少ないから、はちみつ、練乳、紅茶、ワインのシロップが用意された。


 俺は練乳を選んだ。

 懐かしいな、前世のかき氷もこんなだった。


「何かシロップのアイデアはないでしょうか」


 レクティが聞きにきた。


「夏だと青いシロップが受けるかもな。涼しそうだろ」

「ええ、それですと青い花の絞り汁に砂糖ですね」

「花で毒がなくて美味しいのは少ないから、探すのが大変だな」

「でも、他の店で真似できないのなら、利点になります」


「それと南国フルーツだな」

「リッツがディッブと交易しますから、彼に頼んでみましょう」

「俺は冷蔵庫の魔道具を作るよ。そうすれば果物が傷まないだろう」

「ありがとうございます」


 出し物の雪は大いに盛り上がった。

 大成功だと言って良い。


 そして、卒業式になった。


「私達は今日卒業します。ですが、学園魂を胸に刻み何時までも忘れません」


 卒業生の挨拶は付き合いのない生徒だ。

 主席らしい。


 レクティは主席ではないのだな。

 挨拶が終わり、紙吹雪を撒いて卒業式は終わった。


 ラチェッタ、ベーク、コネクタ、ベスが卒業のお祝いの言葉を述べて、花束を二人に渡す。


「レクティ、セレン、卒業おめでとう。ドレスが似合っていつもの何倍も素敵だ」

「晴れ舞台ですから、メイドがよりをかけました」

「写真の魔道具貸して、両親に送るの」


「よし、色んなバージョンの写真を撮ろう」


 何十枚と写真を撮って、

 この瞬間を焼き付けた。


「二人にプレゼントがある。レクティには姿隠しの魔道具で、セレンには望遠鏡の魔道具だ。悪用するなよ」

「このプレゼントが何よりうれしいですわ」


 レクティらしいな。

 セレンは泣いている。

 嬉しいのかな。

 それとも学園生活が苦しかったのか。

 いいや、思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡っているんだろうな。

 色々な記憶が嬉し泣きという形で現れたんだと思う。


 俺はハンカチをそっと差し出した。


 セレンは涙を拭うと、俺にキスしてきた。

 記念のキスのようだ。


「ずるいですわ。わたくしも」


 レクティともキスをして湿っぽい雰囲気がピンク色に染まった。

 たぶんセレンが気をつかったのだろう。

 後輩たちも目をうるうるさせてたからな。


 来年になったら、新入生が来るのかな。

 色々が変わって行く。

 寂しいような、まだ見ぬ未来を想像して楽しいような。

 でもまだ見ぬ未来が楽しみだ。

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