第365 裸魔法と、いいわけと、野性の勘

 これはディッブへ特使として派遣される少し前。

 俺は現在、魔法学園に在籍していて、ここは部活動、魔法おもしろ研究会の部室だ。

 そして、俺は会長を勤めている。


「なるほど、同志。これは凄い発明だ」

「だろ、同志」


 おも研の部室でベーク、リッツがひそひそ話をしている。

 俺にはまる聞こえだが。


 俺はリッツのスペルブックを覗き込んだ。


 【体のシルエットから、裸を想像してそれを幻として、紙に描く。題して裸魔法】

 なるほど、服を着てても大まかな体型は分かる。

 それに想像した裸の幻のテクスチャーを貼るというわけだ。

 そんなに女の子の裸が見たいのか。


 たぶん聞けば、男なら見たいさと語るに違いない。


「【裸魔法】。くあああ!」

「どうした同志よ」


 リッツのスペルブックを覗き込んだ。

 この部室にいるリニアの顔が描かれていて胴体はぼやけている。


 リニアを標的にするとは大した奴だ。

 何で魔法が失敗したかの理由は、俺には分かる。


 裸を想像するところが上手くいかなかった。

 きっと女の子の裸を見た事がなかったのだな。

 だから、想像できない。

 見慣れている男でもまじまじと見つめたりはしないし、案外、記憶はあやふやだ。

 画家並みの能力があれば、想像でも描けるのだろうがな。


 リッツが大声を出したのでみんながリッツのスペルブックを見てしまった。

 もちろん呪文も裸もどきもだ。


「落ち着き給え。ここは一つ話し合いといこうじゃないか」


 そうリッツが虚勢を張って述べた。


「いいえ、裁判よ」


 そう言ったのは被害者のリニア。


「では、わたくしが裁判官を」


 レクティが裁判官をするらしい。


「事件はおも研の部室で起きました。被告人のリッツが魔法でリニアの裸を見ようとしたのです」

「意義あり。魔法の呪文を見て分かる通り。想像を描いただけに過ぎない。ここは自由な想像も出来ないのか。魔法おもしろ研究会だろ。違いますか」

「それがあなたのいいわけ!」


 リニアからカマキリの腕が生えた。

 リニアはモンスターの体の組織を内包していて、それを自由に出せる。


 リッツの罪を考える。

 想像を禁止する法律は前世でもなかった。

 ただ猥褻物陳列罪というのはあったけど。

 そこからいくとあの映像では無罪だな。

 肖像権侵害とかはあるかも知れないが。


「陪審員の方はどう思いますか」

「有罪よね」

「有罪」

「有罪」

「有罪ですわ」

「もちろん、有罪」


「棄権。すまん同志よ」

「妹が怖いから。有罪」

「俺は魔法の悪用として罰するべきだ。スカートの中を撮影して上手く撮れなかったといって罪がなくなるわけじゃない。未遂で罪が成立すると思う」


 会長として意見を述べた。

 俺は自動完全回復の魔道具をリッツの手に握らせた。

 リッツ、強く生きろ。


「最後に言わせてくれ。これが男のさがなんだ」

「分かったわ。別室でゆっくり聞かせてもらう」


 リニアがリッツをどこかに連れて行った。


 遠くからギャーという声が聞こえたような気がする。


 想像を形として出力するという魔法は興味深い。

 複雑な構造とかを説明するのにぴったりだ。

 ニッチな需要だがな。

 物を作る職人なんかにぴったりだろう。


extern MAGIC *project_blueprints(void);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=project_blueprints(); /*設計図投影*/

 while(1); /*無限ループ*/

}


 こんな感じかな。

 付け加えるなら、設計図がどこから来ているか書くだけだろう。


 魔法を実行して蛇口を描いてみた。


 リッツがあの魔法をあんな目的で作らなければな。

 この魔法に罪はないけど、どうしたものかな。


 こうすれば良いか。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

#include <string.h>


extern void mystery_magic_name_get(char *str);

extern MAGIC *project_blueprints(char *mm_name);

extern char liar_checks(char *q,char *mm_name);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 char str[256+5]; /*神秘魔法名の格納場所*/


 mystery_magic_name_get(str); /*神秘魔法名ゲット*/

 strcat(str,".soul "); /*神秘魔法名に『.soul 』を連結*/


 if(liar_checks("エロ目的か?",str)=='N'){ /*エロ排除*/

  mp=project_blueprints(str); /*設計図投影*/

  while(1); /*無限ループ*/

 }

}


 ちなみに神秘魔法名というのは個人一人一人についている重複のない名前だ。

 魂と体に分かれている。


 とりあえずこれで良いはずだ。

 俺は出来た魔道具をみんなに配った。


「あれっ、魔道具が起動しない」


 ベークがエロ目的で使ったようだ。

 俺はベークの恋人のラチェッタにその事実を教えてやった。


「ベーク様、いいわけは?」

「待ってくれ、ラチェッタ。魔道具が故障しただけなんだ」

「別室でゆっくりと聞きますわ」


 しばらくたってギャーっという声がした気がした。


 女に下手な言い訳は通用しない。

 あの鋭さは野性の勘に匹敵すると思う。

 マイラ、睨むなよ。

 言い訳はいけないのな。

 そうですか。

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