第361話 ぐちゃぐちゃ魔法と、恋のぐちゃぐちゃと、解決

「うーん」


 俺は顔に手を当てて考えた。


「何を見ているの?」

「風力調整とお休みタイマー付きの魔法」


 【応えを魔法に求めず、何も渡されず。疾く魔法開始せよ。魔法構造その名はモセ。数、起動、風力、時間を定義する。もし、起動してなければ、条件分岐開始。起動は起動開始。もし起動開始なら、条件分岐開始。モセは風生成の、贄は風力。分岐閉じる。分岐閉じる。そうでなければ、分岐開始。起動は起動停止。もし起動開始なら、条件分岐開始。モセは風生成の、贄は風力。分岐閉じる。分岐閉じる。われ魔法終了せし】と書いてある紙を見せた。


「分からないけど、上手く動いているの?」


 そう婚約者であるマイラが言った。

 プログラムでさっきの呪文を表すとこうだ。


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 int onoff,power,timer; /*起動、風力、タイマーのパラメーター*/


 if(onoff==0){

  onoff=switch_on(); /*スイッチオン*/

  if(onoff==1){ /*スイッチオンになったら風を起こす*/

   mp=wind_make(power);

  }

 }

 else{

  onoff=switch_off(); /*スイッチオフ*/

  if(onoff==1){ /*スイッチオンのままなら風を起こす*/

   mp=wind_make(power);

  }

 }

}


 完成してない魔法だが、もう既にぐちゃぐちゃだ。

 このぐちゃぐちゃ魔法はベークという奴が作った。

 作るならこうだ。


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 int power=0,timer=0; /*風力、タイマーのパラメーター*/


 while(1){

  power=switch_operate(); /*風力スイッチ切り換え。0がオフ*/

  if(power!=0) mp=wind_make(power); /*風を起こす*/

  else mdelete(mp); /*風を止める*/

  if(timer!=0){ /*タイマーが設定されている*/

   timer--;

   timer=timer_operate(timer); /*タイマー再設定*/

   if(timer==0) power=0; /*タイマーが切れた、オフにする*/

  }

  else timer=timer_operate(timer); /*タイマー設定*/

 }

}


 外部宣言とか、付け加える部分はあるが、こんな所だろう。

 ぐちゃぐちゃなスパゲッティコード解けてすっきりだ。

 今は夏なのでとても暑い。


 完成した送風機の魔道具を前に涼む。

 俺の隣にはマイラがいて、しな垂れかかる。


 反対側の隣には、同じく婚約者のレクティが座って、しな垂れかかる。

 そして背中には、またまた婚約者のセレンが、しな垂れかかる。


 そして最後の婚約者のリニアがむーっと声を上げた。

 これ以上くっ付くなよ。

 だがリニアはあぐらをかいている俺の膝に乗った。


 めちゃくちゃ暑い。


「ちょっと、タイトが凄い汗かいているわ」

「あんたがどきなさいよ」

「喧嘩は美しくないですわ」

「譲り合いの精神です」


 4人の婚約者が喧嘩しはじめた。

 さらに暑くなった気がする。


 このぐちゃぐちゃした関係を解くには。


「キスしてやるから離れろ。離れない奴にはもうキスしてやらないぞ」

「そう言われたら、仕方ないわね」


「じゃあ、マイラから」

「歯を磨いてくるから少し待って」


「じゃあ、レクティ」

「乙女力の差が出ましたね。物を食べたら何時でも口の中は綺麗にしておくものです」


 セレンとリニアも洗面台に駆けていく。

 俺はマイラが戻ってくるまでレクティと長いキスをした。

 レクティとのキスは香草の味がした。


「お待たせ。ちょっと次は私の番。離れろ」

「おいで」


 マイラとキスをする。

 マイラのキスの味はミントみたいだった。


 続いてセレンとキスをする。

 セレンとのキスの味は柑橘系だった。


 最後のリニアのキスの味は、ミルク味だった。

 おいこれ犬用だろ。

 サイリスの物を使ったな。


 まあいいか。

 キスで場が丸く収まって、ぐちゃぐちゃが解けてすっきりした。

 だが、またすぐに絡まるのだろうな。

 プログラムほど簡単に解けたら苦労しないのに。

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