第353話 リッツ出陣と、ハーレム力と、落ち

「ニやモ・カクイ・モチミ・テクラ・シイハイチカイシ・カクイ・センカクラミ。ハスラモ・ミラテ・ラミネ・ニやモ・キラニミキ・カラ・スナミ・ラミイ・ラミ・ラミイ。ニ・テチミカ・ンラナ・カラ・テチカソク」


 リッツがアマゾネスを前に演説する。

 ミカカ語なので何を言っているか分からないが、たぶん成功したらハーレムに加わって欲しいとか言っているんだろう。

 アマゾネス達から歓声が上がった。

 リッツが魔闘術の魔道具を使う。

 リッツは太陽の如く光輝いた。


 リッツの奴、魔力アップの魔道具を使いまくったのか。

 それにしては発する魔力が膨大だ。

 リッツはサバンナを駆け抜けると敵陣に突っ込んだ。


「テラテ!」


 アマゾネスから歓声が上がる。

 リッツの光が更に強くなった。

 俺の知らないカラクリを使っているな。


「マイラ、分かるか」

「アマゾネスから、リッツに力が流れ込んでいる。男の戦士からは流れ込んでないから、ある程度好意を持つとそうなるみたい」

「リッツの野郎、ハーレム力に目覚めたのか」

「そうみたい」


 リッツは無双状態だ。

 まるで無双ゲーだ。


 ますますリッツの輝きが強くなる。


「ノニミキ・ラハ・カクイ・トナミ!」


 アマゾネスからそう歓声が上がった。

 アマゾネスだけでなく、物を売りに来てたディッブ人の女性も声を上げた。

 女性が続々と集まって声を上げる。

 リッツの光はもはや眩しくて見てられないほどだ。


 ロータリの大群が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 リッツとうとうやったな。

 そして、リッツの光が唐突に消えた。

 何が起こった。

 望遠鏡の魔道具で見ると、リッツが女兵士を両脇に抱え、顔を引っ掛かれていた。


 ああ、これを見てディッブ人の好意が下がったのだな。


「トレン、嫌がる女を無理やりってのはディッブ人は嫌がるのか」

「もちろんだ。女性からは求婚できないが、だからと言って武力で無理やりはない。戦って強さに惚れさせるのがディッブ人の流儀だ。断られたら何度も戦いを挑めば良い」


 リッツ、最後で本性が出てハーレムが無しになったな。

 リッツの所に皆で行く。


「リッツ、捕虜にいやらしいことをしたら、俺は罪人として処分しなきゃならない。戦争にもルールがあるんだ」

「離せぇぇぇ!」

「くそ野郎がぁぁ!」


「彼女達もそう言っている。捕虜としての扱いは守れ」

「そんな、ハーレム要員ができたと思ったのに」


「なあトレン」

「戦った相手を辱めるなど戦士の風上にも置けん」

「それがハーレム力ダウンの原因か。無敵になれたと思ったのに。魔王になれたかと。大ハーレムの夢がぁぁぁ」


 リッツが慟哭した。

 そして、ロータリから停戦を伝える軍使が来た。


「ロータリとしては停戦を提案します」

「別に構わない」


 軍事の言葉に残念そうに返すトレン。

 ディッブ人としては停戦で構わないらしい。

 停戦すら要らないみたいだ。

 とっちかと言えば戦いの機会が減ってがっくりらしい。


「家宝の剣や鎧、アクセサリーの返還を要求します」

「戦利品は戦いで得た正当な物だ。銅貨1枚とて返還しない」

「そんな無体な。謝礼を払うと言ってもですか」

「もちろんだ。悔しければ戦って取り戻すのだな」


 もちろん、逃げ出した時に置いてった物資は全部貰って返さない。

 死者の遺品もだ。

 戦利品は別らしい。

 ロータリの評議員が持ってきた家宝とかも返さない。


「捕虜は返して頂けるので」

「ああ、生憎と奴隷の文化はないのでな。身代金と交換だ」


 軍使との話し合いが終わった。


「リッツのスキルがハーレム力だったなんてな」


 そう言えば前兆はあったよな。

 大蛇退治とか、大佐とやる前に子分に無双してたな。


 女性の声援でやたら強くなってたし。

 そして、残念行動で弱くなってた。


「リッツの重要度が上がりましたね。ソレノの任務を解くのがまた伸びそうです」


「でもリッツだと能力を完全に使いこなせないな。イケメンとも言い難いし、女性に惚れられる要素が少ない」


 アキシャル辺りがこの能力を持っていたら、魔王になれただろう。

 リッツは本当に残念な男だ。

 女兵士を両脇に抱えてなんて、普通の神経じゃ出来ない。

 まるで山賊だな。

 いや山賊だとお宝に目がいくか。

 人さらいの思考かな。


 やっぱりリッツの行動は笑って済ませられない。


「リッツ、力が手に入って浮かれたのは分かるが。女兵士をさらうのはやりすぎだぞ」

「俺もあれはどうかしてた。戦いで血がたぎってたんだよな。分かるだろ」

「分からんでもないが、気をつけろ」

「犯罪者にはなりたくないからね」


 リッツも反省しているみたいだから許そう。

 嫌らしい事をしたわけでもないからな。

 リッツもそのうち分かるだろう。

 自分のスキルを十分に発揮するには人間的な魅力が大事だってな。

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