第351話 集団魔闘術と、魔力吸収と、触媒

 儀式魔法もしくは、集団魔闘術か。

 他人の魔力は反発する。

 この原則から考えるに、あり得ない魔法だな。


 ディッブ人に集団戦がないのは集団魔闘術がないのも一因か。

 どうすればいいかな。


「難しい顔してるね」


 マイラからそう話し掛けられた。


「集団魔闘術が出来ないかと思って」

「流れを合わせるのは難しいね。特に反発する力だと」


 流れが見えるマイラも難しいか。


「魔力の反発ってなんで起こるのかな?」

「他人には心を許せないってことだと思うよ。完全に理解し合える人はいないから」

「魔力がその人の思考に染まるってことか。で考えがみんな違うから相容れないと。リニアなら共生のスキルでなんとかなるかも」


「私? 無理だと思う。体の中に取り入れれば、一体化されて魔力も共有化されるけど、それじゃ駄目なのよね」

「リニアも無理か」


 思考を合わせるなんてことはちょっと無理だな。

 魔法を組んでみてもいいが、成功するとは考えられない。

 魔力の波長を変える方が楽そうだな。

 ただそれだど、他人の魔力を奪う魔法だ。


 それはそれで使いどころはあるかも知れないが、考えているのとは違う。

 もっとそう。

 型みたいな感じでなんとかならないかな。

 ひとり目がパンチを繰り出し、その力をふたり目が吸収、さらに強力な攻撃に変える。

 そしてさんにん目がという具合になっていくのが理想だ。


 おも研のメンバーに話してみた。


「簡単にまとめると、集団による連撃で、攻撃する毎に威力が上がっていくというわけですね。攻撃の時にダメージに直結しないで散っていく魔力を吸い込んで次の一撃を放つですわね」


 レクティが要点をまとめてくれた。


「魔法でも良いけど、魔闘術でそういうのできるかな」


「同志よ、それができたら最強だな。自然界の魔力も吸い込んで使えるということだろ」

「ああ、憧れるな」


 二人とも魔力アップの魔道具はその原理で動いているのだぞ。

 そうなんだよな。

 他人の魔法や魔闘術の残滓をかき集める利点がない。

 魔力アップで大規模魔法を放つのがシンプルで良い。

 あれっ、俺はなんで集団魔闘術を模索しているんだ。

 ああ、ディッブ人に集団戦してほしいからだな。


「力を併せて強大な力を発揮する素晴らしいですわ」


 ラチェッタは集団魔闘術に興味を持ったらしい。


「力を併せるのは常に愛の力だよ」


 力説するリッツ。

 だったらその方法を示せよ。


「同志よ、愛を得るのは難しいな」

「ベーク様、私の愛に何かお疑いでも」

「いや、ラチェッタ違うのだ。愛にも色々あるだろう友愛なんかも愛だ」


 集団魔闘術のヒントは得られず終いか。


「錬金術でいうところの触媒をどうするかですね」


 ベスが何やら閃いたよう。

 触媒か。

 コンバーターを作れば良いのか。

 ええと他人の魔闘術の残滓を、自分に合うように変換して、取り入れる。


 どうやら出来そうだ。

 ただ運用が難しいような気がする。


extern MAGIC *magic_select_residue_mana(void);

extern void magic_convert(MAGIC *mp);

extern void magic_circulation_add(MAGIC *mp);

extern void mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=magic_select_residue_mana(); /*残滓を魔法として登録*/

 magic_convert(mp); /*魔力を自分の物にする*/

 magic_circulation_add(mp); /*循環に加える*/

 mclose(mp); /*魔法を終わる*/

}


 100個ほど作ってトレンに渡してみた。

 アマゾネスが装備して魔闘術を使う。

 一撃を放つごとに魔力が吸収され打撃に重みと速さが増していく。


 こんなのでいいのかな。

 問題はロータリ人が持っている魔闘術破りの魔道具を打ち破れるかだ。

 こればっかりはやってみないことにはな。


「協力して連撃を加えるのは面白いな。個の活躍を邪魔しないのも良い」


 トレンの感想は面白いだから、興味は引けたみたいだ。


「ディッブ人に流行りそうか?」

「男は駄目だろうな。女は協力して何かをやるのに慣れている」

「とにかく、次の襲撃で使ってみてくれ」


 男は協調性がないのか。

 その答えは分かっていたよ。

 協調性があれば、俺がこんな魔道具を作るまでもない。

 とっくに集団戦をやっているに違いな。

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