第350話 大規模魔法と、環境破壊と、再生
とにかく、ロータリは人海戦術をとっている。
輸送でも偵察でも警備でも全てだ。
俺が一発、大きい魔法を放てば終わりなのだが、全てがもどかしい。
少しイライラしているかな。
よし、ロータリに嫌がらせをしてやろう。
1000万魔力をつかって大火球を放つ。
その大きさ1キロメートルにも及ぶ。
ロータリの軍に直撃させたりはしない。
陣の手前1キロを焼け野原に変えたのだ。
サバンナの土が高温でガラス化する。
ロータリ軍は突然の大魔法にパニックになって潰走した。
嫌がらせになったかな。
あースッキリした。
「こんなことをされては困る。サバンナは死んでいる大地に見えるが生きているのだ。水があれば緑の絨毯になるのは知っているだろう」
トレンに文句を言われた。
猪武者のディッブ人に考え無しだと指摘されるとは。
もどかしいのでイライラしてやってしまったとはいえない。
「元に戻すよ」
ああ、めんどくさいことになった。
ガラス化した大地の表面を地中深く沈める。
俺は大地に雨を降らせた。
種が残っていれば緑の絨毯ができるはずだが。
どうやら雑草の種は残ってなかったらしい。
ぜんぜん生えない。
環境破壊してしまったのだな。
魔法は召喚まほうなので、雑草の種を召喚は出来る。
だが虫などもいたはずだ。
完全に環境が元に戻るのは何時になるだろう。
「短慮だったな」
「あなたらしくないですわね」
レクティにそう言われた。
スライダー国が懐かしいのかな。
ホームシックに掛かっているとは思いたくないが。
「ロータリ軍を皆殺しにしなくて良かったよ」
「そうですね。そうなったらロータリは働き手が無くなって、大不況に見舞われるはずです。その余波はどの国も無縁ではいられません」
「警告なら、セレンにメテオ魔法を使って貰えばよかった」
「過ぎたことをぐちぐち言っても仕方ないよ」
とマイラが言う。
「魔王の本気は凄いですね。私のメテオ魔法など比べるべくもない威力です」
セレンが会話に入ってきた。
セレンなりに俺を慰めてくれたのだろう。
「スカッとしたよ。ガラス化した大地はそのままでも良かったのに。魔王が戦った跡とか名所になると思う」
そう言ったのはリニア。
「素直に喜べないが、慰めてくれたんだよな。ありがとう」
「同志よ、見たかあれが魔王の本気だ。恐ろしいな」
「だが、あの力には憧れる」
「力には責任が付きまとうんだ。僕なら遠慮する」
そうベークとリッツを諫めるコネクタ
「だが、確実にもてる。そうだろベス」
ベスに問い掛けるリッツ。
「武力や財力、もろもろの力に惹かれる女性はいるけど、私は優しい人なら力など要らない」
「俺はハーレムが手に入るなら、悪魔に魂を売れる」
「同志よ、愛の力が最強だよな」
「同志よ、そうだな」
リッツが静かに燃えている。
空回りしなければ良いのだけど。
リッツに言いたいやらかすと後始末が大変なんだよ。
いまそれで困っている。
雑草の種を召喚してみたが、元通りとはいかない。
「果樹を植えるといいわ。果樹を食う動物が色々な植物を生み出すのよ」
リニアが変なことを言い始めた。
動物が植物を生み出すだって。
「動物が植物を生むわけないじゃん」
マイラがすかさず突っ込んだ。
「馬鹿ね。例えよ」
「例えでも、違うと思うけど」
ええと。
「動物の生活サイクルが土地に緑を作るんだ。例えば糞は肥料になるだろう。そして、糞には種も含まれる。色々な役割を果たすんだ」
「ほらみてみなさい」
「くっ」
勝ち誇ったリニアの顔と悔しそうなマイラ。
「じゃあ、果樹の森植樹計画を発動しよう」
俺は果物の種を戦場跡に植えた。
この作業が大変だった。
2週間近く掛った。
果樹の世話はどうしよう。
一定時間置きに水を出す魔道具は作れる。
1回の充填で何万回も持つから木が大きくなるまで、大丈夫だろう。
破壊は一瞬で再生は長い年月が掛かる。
今回は短慮はいけないとという教訓にしよう。
潰走したロータリ軍だが、被害が少なかったので、また集まり始めた。
そして俺が後始末をしている間に立て直したみたいだ。
なるべくなら大量虐殺はしたくない。
ディッブ人に欠けているのはチームワークだ。
儀式魔法が作れないかな。
集団魔闘術みたいなのでも良い。
とにかく集団で力を合わせて攻撃に変えるような何かだ。
一考の価値はあると思いたい。
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