第336話 男戦士対女戦士と、トンファーと、魔法エンジン

 男戦士対女戦士の試合が始まった。

 女戦士はアマダンタイトの武器を持っているのでリーチが違う。

 だが、男戦士はタフで、力や俊敏性も勝っている。


 魔闘術の技は女戦士の方に分がありそうだ。

 総合的に見ると同じぐらいの力量だ。

 もっともマイラが目利きしてそうなるように試合を組んでいるのだから、そうなのだろう。


 試合は白熱した。

 住民も手に汗握って応援している。


 粘り勝ちで女戦士が勝った。

 やはり武器を持たれると無手ではダメージが大きいな。


「前にも思ったが、魔導金属は使えるな。輸出品としてもってこいだ」

「わたくしとしては魔法陣技術と合わせてみたいですね」


 レクティがそう言った。

 魔法陣はアナログ回路的な動作をするから、魔導金属とどうなんだろう。


 上手く技術が融合できるかな。

 まあ、研究は無駄ではない。

 というか新しい試みは常にしないと。


「魔導金属でメテオ魔法がしてみたい」


 セレンが物騒なことを言った。


「それは威力が凄いだろうな。とくにミスリルは魔法の力が増幅される。レールガン並みに速いメテオ魔法になるだろう」


 魔導金属の平和利用を模索したいところだ。

 アマダンタイトは車軸とか、板ばねとかがいいかもな。

 金庫は魔力の流れを乱されて破られる未来が見えそうだ。

 乗り物関係が良いだろう。


 試合は進み、男女で勝ち負けが五分五分になった。

 女戦士もなかなかやると認識を改めてくれたらいいのだが。


「見ていて痛快だった。大半の男が負けたのだからな」


 勝ち誇った顔でトレンが言った。


「魔導金属の平和利用を考えたらどうかな」

「農具は作れるが、この辺りでは農耕はしない」

「狩猟民族だからな。包丁とか鍋とか調理器具が精々か」

「女が作り手だから既に作っている」


 俺は紙にトンファーの絵を描いてみた。


「こういう武器もあるけど」

「おお、ディッブにはない発想の武器だ。外国でも見たことがないな」

「これは殺傷力が低くて、扱いが素手の武術と共通したものがある」

「さっそく作ってみよう」


 トレンは大地から鉄を抽出して、トンファーを作った。

 取っ手を握ってクルクルと回し始めた。

 そして突きや払いといった動作をする。

 無手での戦闘の素養があるとトンファーはしっくりくるのだろう。


「チモチツラミイトトの正式武器にしよう。名前はカラミハチだな」


 ミカカ語でなくてもカラミハチは良いかも、絡むハチか。

 突きとかで刺されるからな。


 ちょっと真面目に考えよう。

 武器でない魔導金属の使い方か。


 魔導金属は腐食とかに強いのだろうか。

 強いのなら野ざらしになる柵とかに良いかもな。

 この辺は要研究だ。


 魔導金属って魔力を含んでいるよな。

 動かないかな。

 魔導モーターとかできたら最高なんだが。


 魔道具で回転を生み出すことはできる。

 魔導金属を使わなくても別にいいが、別の角度からのアプローチは新しい発見につながる。


「トレン、魔導金属に命令を与えて動かせられないか」

「大地から抽出して成型しているから、変形して動かすのは出来る」


 トレンがそう言うと持っていたトンファーがぐにゃりと曲がった。

 これはこれで凄い技だが、ちょっと違う。


「面白い攻撃が出来そうだが、自動的に回転するとかできないか」

「できるが、手から離れると止まるぞ」

「素直に魔道具で作った方がいいか」


 魔法エンジン作ったら、自動車が作れるな。

 発展したら、色々な応用が利く。

 魔導金属は意外に使い勝手が悪いな。


 魔道具の応用範囲の広さに軍配が上がるか。

 まあそうだろうな。


 魔法エンジンは暇ができたら、研究してみよう。


「銅とか鉛とか錫とかを魔導金属で試してみたか」

「やったぞ。銅は光を発して、鉛は重くなった。錫は粘土みたいに柔らかくなったぞ」


 銅はライトの魔道具と同じか。

 ディッブ人の暮らしを良くすることは間違いないが、魔道具と比べると利便性がな。

 光る剣とか作ったら、子供に受けそうだ。


 鉛の魔導金属は碇ぐらいしか用途が思いつかない。


 錫の方は更に加工しやすくなるんだろう。

 民芸品を作るのにはいい特性だな。


 魔導金属って使えない。

 ミスリルも大したことがないし、オリハルコンも魔法で再現できる。

 魔力を使っているのだから、同じような感じになるのは仕方ないことなのかも。


 上手くはいかないな。

 こうなると、魔法陣との融合に期待だな。

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