異世界で俺だけがプログラマー~転生して蘇った前世の知識は魔王級。家族には捨てられたけど、世界法則には気に入られた気がする。帰って来てくれと言われても、もう遅い。プログラム的呪文で最強無双~
第335話 チューニングと、ヒュドラと、妬みの視線
第335話 チューニングと、ヒュドラと、妬みの視線
「マイラ、トレンの剣をチューニングしてやってくれないか」
「うん、タイトが言うなら」
マイラがトレンが作ったミスリルの剣をチューニングし始めた。
剣の腹をトントンと指で叩いていく。
「出来た」
「助かった。自分で作った剣なのにしっくり来なくってな。ずれがあるようでもどかしかったのだ」
「お礼ならタイトに言って」
「タイト、ありがとう」
「どういたしましてだ」
「よし、試し切りだ」
そう言うとトレンは5センチはあるウロコを軽く上に投げた。
落ちてくるところを剣で一閃。
ウロコは真っ二つになった。
「何のウロコだ?」
「レッサードラゴンだ。たぶんこの剣ならドラゴンも斬り裂けるだろう。そうと分かれば、大佐認定試験だ」
「ああ、あのモンスターを一人で狩って来る奴」
「大佐はレッサードラゴンクラスを狩らないといけない」
「武運を祈っているよ」
俺はそう言って送り出した。
「キララシ・リナソノ」
リッツがミカカ語でそう言って送り出す。
「カクチミノト」
そう言ってトレンが去っていった。
そして、夕方になりトレンがレッサードラゴンを引きずって帰ってきた。
「トレン、おめでとう。これで大佐だな」
「おめでとう。次は俺が大佐にチャレンジする」
リッツがホラを吹いた。
「ありがとう」
「その剣の調子はどうだ?」
「バターを切るようにレッサードラゴンが斬れた。一撃だったぞ。引きずって戻るのが大変だっただけだ」
「だが、またしっくりこなくなった」
「メンテナンスが必要なようだな。トレンの魔力が魔闘術を使って剣に流れ込み、流れが変わったのだろう」
「きっと、そうだな。私と相性の良い魔導金属を作る奴を見つけないと」
そして、3日が経ち。
「見てくれ。女だけの戦士軍団を作った。チモチツラミイトトだ」
女だけの戦士集団で、中にはモヒカンにしている女もいて、みんな思い思いの武器を持っている。
翻訳するならアマゾネスだろうな。
「強いのか?」
「みんな少佐ぐらいの力はある」
少佐かぁ、前世では赤いのに乗って三倍のスピードで動く奴がいたな。
少佐最強説が流れたぐらいだ。
「うん、強そうだ」
「タイト、家を運ぶ時に使った魔道具を貸して」
マイラがそんな事を言い始めた。
「いいけど」
何に使うのか分かるレッサードラゴンを倒してくるつもりだな。
マイラは魔道具をひったくるように奪うと、飛ぶ板に乗って飛んで行った。
そして、一時間もしないうちにマイラが帰ってきた。
獲物はレッサードラゴンでないな。
「クンシスチ!」
トレンが息を飲む。
このモンスターが何かは一目見て俺にも分かった。
ヒュドラだ。
頭がいくつもあるドラゴン。
Sランククラスのモンスターだ。
エルダードラゴンに匹敵するだろう。
マイラは胸を張っている。
「マイラも魔王を名乗っていいかもな」
「ううん、魔道具の力を使ったから、素の力ではできないよ」
「確かに俺なら魔道具無しでもやれるかも知れない」
「とりあえず、これで私も大佐だね」
「ディッブの中でしか通用しない称号だけど、確かに大佐だ。いや元帥でもいいかも知れない」
「ミカカ語だと元帥はモチストクチリかな」
「この街を代表してマイラ殿には元帥の称号を与える」
トレンがそう言って、斜めに手を上げた。
敬礼の一種だろう。
敬意を表していと思う。
「ところで、これ食えるの?」
リッツがそう言って巨大な死骸を眺めた。
「食えるぞ。淡白だが美味いと伝わっている。ディッブでも討伐されたのは初めてだが。遭遇して尻尾をもぎ取って食ったという話はある」
「じゃあ、宴会するか」
宴会が始まった。
男の戦士達の視線がなんだか嫉妬を孕んでいるように見える。
女に負けたということが我慢ならないのだろう。
アマゾネスを見る目にも、同じ視線を感じた。
これは衝突が起こるかもな。
試合でもさせて、発散させるべきだろう。
「トレン、男達が不満を溜めているようだ。試合でもさせて現実を教えてやれ」
「そういう話なら大歓迎だ」
ただし、叩きのめしたら後が大変だ。
裏切りなどされたら堪らない。
「マイラ、五分五分になるように試合を組んでくれ」
「うん、大体の力量は分かるから、簡単だよ」
引き分けや勝ったり負けたりすれば女戦士を認めるだろう。
侮れないと分からせるだけでいい。
だが、そのうち本格的に衝突するはずだ。
どう決着をつけるかだが、上手い着地点が見つかるといい思う。
俺が心配することでもないか。
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