第325話 ワイバーンの群れ、竜巻魔法と、陶芸

「おい、あれを見ろ」


 外で焼肉をやっていた俺達が悪いのか。

 空にはワイバーンの群れが現れた。


 ディッブ人が戦闘態勢をとる。

 投げ槍を構えた部隊が出てきた。

 高射砲並みの投げ槍が放たれる。


 だがダメージになったのは少ない。


 俺の出番だな。

 スペルブックを開く。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

#include <conio.h>


extern MAGIC *tornado(float mana);

extern void magic_rotate(MAGIC *mp);

extern void mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=tornado(1000000.0); /*竜巻*/

 while(1){

  magic_rotate(mp); /*回転*/

  if(kbhit()) break; /*何か入力されたら止める*/

 }

 mclose(mp); /*魔法を終わる*/

}


 そこにあるのはこんな魔法だ。


「【竜巻】」


 俺の魔法で600メートルもの竜巻が出現し、竜巻魔法にからめとられたワイバーンが落ちていく。

 ディッブ人は地上に落ちたワイバーンに止めを刺した。


「この圧倒的な力。これこそが私の求める力だ」


 トレンがまた変な影響を受けたようだ。

 派手な魔法だったが、こんなのは大道芸と変わりない。

 ただ規模を大きくしただけだ。


「トレン、こんな上っ面の力でいいのか。こんなの魔道具でも可能だ」


 魔石を合成して大きくして、100万魔力の魔石を作る。

 俺が使った竜巻魔法を入れれば完成だ。

 でもそんなのは本当の力じゃない。


 俺にも本当の力とは何かが分からないが、これは違うと分かる。


「構わない。教えてくれ。どうやったら可能だ」


 そうだ、トレンはまるで核兵器に頼る前世でのとある小国だ。

 強大な兵器さえあれば全て解決すると思っている。

 解決する場面もそれはあるだろう。

 だが、そんな国はなかなか上手くはいかない。


 何となく、どういう力が、国を豊かにそして幸福にするのか分かった気がする。

 それは武力じゃないことは確かだ。


「トレンには俺の力を教えるつもりはない」

「そんな。どうして」

「力で全ては解決しない。そこが分からないうちは駄目だ。力で全てが解決しないと判ったら、俺の力など欲しがらないはずだ」

「言っていることが分からない」


「俺だって分からないが、過ぎたる力は扱いを間違えると不幸になる。だから不幸にならない幸福にするための力を考えるべきだ」

「分からない」

「それがディッブ人に課せられた宿題だ」

「だから、それが貴殿の魔法だ」

「俺の魔法は武器として考えれば魔闘術と変わりない。だが、生活を豊かにするためにも使っている。魔闘術を生活のために使うとかそういう道を模索すべきだ」

「魔闘術は神聖なる戦士の技だ。生活のために使うなど考えられん」


 駄目だな。

 視野狭窄、極まれりだ。


 別のアプローチを示してみたが駄目なようだ。


「とにかく魔闘術で生活を豊かにしろ。それが俺からの課題だ」

「ふむ、例えばこんなか」


 トレンが地面に手を置いた。

 素焼きの皿が出来上がった。

 凄いな。

 魔法は確かに召喚した物質を変形させる。


 手を置いただけで皿ができるなんてすばらしい。

 俺は皿を手に取ってみた。

 焼かれた皿と変わりがない。


「こういう物を作って豊かにしていくんだ」

「そしたらどうなる」

「豊かになって、争いや下らない風習が消えて行く」

「そんなことは信じられない」


「皿ですか。いいできですね。驚きましたディッブにも特産品があるのですね」

「ほら、レクティもそう言っているだろ。交易するんだよ。土に手を置くだけで、他所の国の品物が手に入るんだ素晴らしいだろ」

「この技を洗練して広めろというのか」

「そうだ。他にも生活に役立てられる技を見つけろ。それがディッブを変えていく」


「考えてみる」


 トレンは渋々納得した。

 それにしても魔闘術で皿を作ることができるなんてな。


 【皿作成】この一言の魔法でも土から皿は出来る。

 作られるのは粘土の皿だ。

 【皿作成。焼き物になれ】、こうすれば焼けるが、均一に火が通るかと言ったら難しい。

 たぶん割れてしまうだろう。


 だが、魔闘術は作る皿を自分の体のように操る。

 出来の差は一目瞭然だ。


 魔力の流れを操るということはそういうことか。

 大げさにいうと万物を操れる。


 魔法で再現した魔闘術じゃこうはいかないな。

 とにかく、いろいろと応用は利きそうな技術だ。

 特産品がひとつできてよかった。

 交易するにもモンスター素材だけじゃ先行きが暗い。

 あとふたつ、みっつの特産品が出来れば十分だ。

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