第304話 文化祭と、写真と、フリップフロップ

 ひと月経ち、魔戦士の噂はさっぱりと入ってこなくなって、試験の季節になった。

 例年通り、ベークとリッツはひいひい言っていた。

 それが終わり、文化祭の季節だ。


 今回は何をしよう。


「というわけで何かアイデアがあるか」

「写真を撮る魔道具はあるんだから。女の子の写真展を開きたい」


 そう言ったのはリッツ。

 懲りない奴だ。

 たぶんエッチな写真を撮りたいんだろうな。


 エロ目的かどうかは嘘判別魔法で判る。

 これを組み込めば良いだろう。


「一部採用だ。写真を撮る魔道具を貸し出して、写真の展示会をやろう」

「では私は御猫様の姿を記録してまいります」


 ダイナがそう言って、俺が前に作った写真魔道具を掴んで出て行った。

 久しぶりにダイナの顔を見た気がする。

 ダイナは王家の影所属だから、魔戦士の件で忙しかったのだと思う。


 俺の護衛は、ダイナではなく密かに王家の影が付いていたはずだ。

 この間のダイアックとの決闘は、民衆の保護が優先だったから、俺の方に手が回らなかったのだろう。


「じゃあ、写真のコンテストということで」


 みんな賛成してくれた。

 魔法を作り始める。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

#include <string.h>


char ray[100000]; /*光を指定*/

char paper[1000]; /*紙を指定*/

extern void mystery_magic_name_get(char *str);

extern char liar_checks(char *q,char *mm_name);

extern MAGIC *paper_init(char *paper_material,int paper_size);

extern void paper_draw_color(MAGIC *mp,char *scene_material,int scene_size);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 char str[256+5]; /*神秘魔法名の格納場所*/


 mystery_magic_name_get(str); /*神秘魔法名ゲット*/

 strcat(str,".soul "); /*神秘魔法名に『.soul 』を連結*/


 if(liar_checks("エロ目的か?",str)=='N'){ /*エロ排除*/

  mp=paper_init(paper,sizeof(paper)); /*紙を魔法の対象に*/

  paper_draw_color(mp,ray,sizeof(ray)); /*情景を紙に描く*/

  mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

 }

}


 カメラ魔法が出来た。

 欠点は染料を持ってないと発動しない事だ。

 カメラの魔道具は、四角いケースに魔石を収め、照準の穴を開け、染料容れを付けて、出来上がり。


 俺は何を撮ろうかな。

 そう思って思案している場面をマイラに撮られた。


 とりあえず、婚約者の4人は一枚ずつ撮らないとだな。

 俺が他の女の子を撮るとマイラ達は嫉妬するだろうな。


 エレクを撮るのも良いが、ダイナと被るのも芸がない。

 何か面白い被写体はないか。

 アキシャル辺りだと花を撮っただろう。

 エミッタとかだと花火だな。


 俺を象徴するのは魔法だな。

 C言語の呪文は撮っても映えない。

 魔法で作った幻を撮ってもそれほど面白くないだろう。


 俺はフリップフロップ回路を、魔法を使って宙に描いた。

 そしてそれを写真に撮った。

 デジタル回路の基本の一つだ。

 コンピューターの大元と言っても良い。


 ほとんどの人間は意味が分からないだろう。

 でも良いんだ。

 のちの世にこれを見て何か発明してくれると嬉しい。


 みんなの写真が出そろった。

 俺のは婚約者4枚とフリップフロップ回路。


 マイラのは俺を10枚ぐらい。

 レクティは色とりどりの、何かの結晶。

 セレンは星や月が数枚。

 リニアはサイリスの姿が数枚だった。


 ベークはラチェッタの笑顔数枚。

 リッツはトレンの運動しているところと、ソレノがほほ笑んでいるところ。

 ラチェッタは何の事はない畑の風景が数枚。


 ベスは花々。

 コネクタは鳥だった。


 ダイナは言わずと知れた猫達。


 文化祭が始まった。

 俺達の作品は言わばサンプル。


 来た観客はカメラの魔道具を手にすると被写体を追い求めて、色々な場所に散っていった。

 優勝したのは王都の夕日を撮った作品だった。


 エロ作品を撮ろうとして、魔道具が起動せず、文句を言って来た馬鹿な奴らは、マイラに叩きのめされたのは言うまでもない。

 写真の魔道具は売れに売れた。

 また儲かってしまったな。

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