第302話 魔法舞踏祭と、襲撃と、眠り薬
大掃除の季節も終わり、季節は11月。
魔法舞踏祭の季節がやってきた。
魔戦士で残った幹部はダイアックひとり。
仕掛けてくるとしたらここだ。
魔導師反抗組織のレジスタも最大の警戒を見せている。
リニアがそう教えてくれた。
魔法舞踏祭の流行は、手足に色とりどりの光を纏う。
ダンスの動きに合わせてヨーヨーみたいな動きをする。
滅茶苦茶、制御が難しそうだ。
4つの魔法をいっぺんに行使は出来ないから、4つの光を一つの物として扱う。
とにかく凄い。
俺にもこの真似は出来そうにない。
いや、プログラムで細かく制御すればやれない事もないが、ダンスとずれると修正が利かないだろうな。
トレンが舞台に上がった。
ミカカ語クラブの声援が上がる。
トレンが踊り始めた。
構えから正拳突き、回し蹴りを連続して行って、サマーソルトキック。
手足はぼんやりと光っている。
「ノイイセ・ニカ・ナセ!」
リッツが声を張り上げる。
ミカカ語の応援だという事は分かる。
印象としては武道の演舞だな。
数分激しく動き、トレンの踊りは終わった。
身体能力ありきの魔法舞踏だな。
手足を光らせているのは魔法かな。
トレンが魔法を使うのは初めてみた気がする。
そして、何人か踊り、次はラチェッタの番だ。
「ラチェー! 頑張れ!」
ベークが声援を送る。
ラチェッタは振り返り、にっこり笑って、手を振った。
ラチェッタが踊り出す。
両手に光があり、それが踊りに合わせて点滅している。
踊りはチアダンスみたいな感じだ。
側転はあったが、宙がえりとかの派手な技はないので、今ひとつだ。
魔法を使い空気の力で宙返りとかすれば、見栄えが良いのにな。
最後のポーズを決めて、ラチェッタの踊りは終わった。
そして、何事もなく魔法舞踏は進んで行く。
「あれ見て」
群衆がざわめく。
指を差した先を見ると、王都の一角で煙が上がっている。
魔戦士が最後の反乱に出たのかな。
会場は騒然となったが、煙はすぐに消えてなくなった。
普通の火事だったか。
「レジスタの人が来て。魔戦士と戦闘になっているって。私、行って来る。サイリス、行くよ」
そう言ってリニアが、駆け出した。
遅れないようにサイリスが懸命に駆けていく。
ちぐはぐだな。
何が狙いだろう。
ラチェッタを拉致する事は諦めたのか。
最後の一花を暴動で終わらせようというのかな。
それにしては、なにもこの日を選ばなくても。
魔法舞踏祭は粛々と進んだ。
そして優勝者が発表されて終わったと思われたその時。
観衆の一部が武器を魔法で作った。
生徒だけでなく、一般の見物客もいるので、会場がパニックに。
これが狙いか。
ラチェッタの周りを俺達は固めた。
「タイト、魔戦士の一味を一網打尽には出来ないの?」
イラついた感じのマイラ。
重力球は不味いな。
武器をもっているから、民衆が怪我をする。
磁力はどうだろう。
装飾品とかもあるから、関係ない人も被害を受ける。
テロはほんと防ぐのが難しい。
魔戦士に一矢報いたい。
俺が笛で合図すると、会場にいた王家の影が、一斉に魔道具を起動した。
自動迎撃の魔道具だ。
味方として登録してあるのは影と生徒達。
攻撃は空気の塊を打ち出すタイプだからジャブ程も効かない。
だが、魔法行使中や、戦闘中に衝撃を受ければ、魔法に失敗したり、攻撃の手が緩む。
こちらが有利になるはずだ。
魔道具から空気の塊が発せられて、そこらじゅうでパスパスと乾いた音がする。
よろけたりする魔戦士が続出。
関係ない民衆もよろけているが、それぐらいは勘弁してほしい。
「とりあえず、ラチェッタを安全な場所に避難させよう」
「それがいいかもね」
魔戦士は砂鉄で出来た武器を持っているので丸わかりだ。
向かって来る魔戦士を叩きのめしながら進んだ。
会場からは出られた。
あと、一手、何かあるといいな。
「任せて下さいまし」
レクティが自信ありげだ。
「やってみろ」
「では」
レクティが合図すると、バタバタと人が倒れ始めた。
「眠り薬ですわ。自動迎撃の魔道具のそばに撒くと、毒霧の塊となって敵を襲います」
「魔道具も使いようだな」
レクティの部下は優秀だ。
魔戦士の一味はどんどん数を減らした。
巻き添えになった関係ない人もいるが、多少の犠牲は仕方ない。
影は毒対策をしているので、眠った奴はいないようだ。
民衆に紛れてテロを起こすという手は、眠り薬で防がれたか。
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