第301話 大掃除と、断捨離と、物の美しさ

 10月がやって来て、大掃除の季節。

 収納魔法の中の物を片付けたいと思う。


 靴下が出てきた。

 もちろん着替えのための物だから洗ってある。

 でも何年か前のだから、サイズが合わない。


「ちょっと懐かしいな」

「その柄なら覚えている。バリアブル動乱の時に履いてた奴ね」


 マイラが俺の片づけを手伝ってくれるようだ。


「狼モンスターの毛皮もあるな。魔導師が被っていた仮面もある」

「捨てるの?」

「いいや整理して収納魔法の中に入れておく」

「タイトは物を捨てられない人ね」


 バックアップとか消せないんだよな。

 消すと必要になった場面が出てくると大慌てだ。

 仕事柄、バックアップは消せないと思っている。

 そのソフトが使われなくなってもだ。


 他のソフトでそのプログラムが必要になったりもする。

 バックアップ=財産みたいな感じだ。


「オルタネイトの領地の本宅も、ガラクタが山ほどありますわ」


 レクティも話に入ってきた。


「どんなのがある」

「何代か前の当主が討伐したモンスターの骨などは、保管しておく意味があるのか常々思います」


 俺は慌ててモンスターの骨を収納魔法に入れた。


「骨は要らないよな」

「ドレスも流行遅れになるので要らないと思うのですが、実家のクローゼットの肥やしになってますわ」


 くそう、昔着た服もとってある。

 レクティの方が片付けが上手いように思える。


 たぶん容赦なく捨てているのだろう。


「古くなったら捨てるのは基本だ」


 ベークがそう言った。

 ベークは捨てる派のようだ。


 思い出の品って捨てられないんだよな。

 突然必要になる事がある。

 1年経って使わない物は処分した方が良いらしい。


「私の思い出の品は故郷と共になくなりました」


 悲しそうにラチェッタが言った。

 そんな事もあったな。


 そう言えば、前世の記憶が戻る前の品は持ってない。

 元バリアブル邸に保管されているのだろうか。

 あそこはニオブの品物もあるんだろうな。


 処分した方がいいのかな。

 いや、これも歴史だ。

 確かに古い品は要らないように思うが、積み上げてきた歴史のようにも思える。

 よし、保管する建物を地下に作るか。


 場所は適当でいいな。

 思い立ったが吉日。


 俺は王都を出て街道から外れて森に入った。

 鉄筋コンクリートで地下室を作る。

 場所は誰にも秘密だ。


 マイラ辺りにはばれているかもしれないが。

 収納魔法の中にあった1年経っても使わない物を収納した。

 ふうスッキリした。

 でもこれはDVDを焼いてデータを保管した行為となんら変わりがない。


 減っているわけじゃないんだよな。

 場所を移しただけ。


 学園に帰って、部室の片づけを手伝う。


「片付けは、さっぱりして、すっきりしますけど、どこか物悲しいですわ」

「ラチェッタ、新しい物で心を満たせば良いんだよ。僕が満たしてあげるよ」

「思い出の品は何物にも代えられません」


「ベーク、さっきの発言はマイナスポイントだな。プラスにしてみろよ」

「ラチェ、新しい思い出の品を作ろう。きっと気に入るさ」

「ベーク様、気遣いありがとうございます」


 まあまあだな。

 俺なら過去にあった品物を魔法で復元する。

 粉々になっても魔法なら復元できるはずだ。

 でも、物は壊れる所も良いのかも知れない。

 物が壊れると、いつまでも古い事にしがみつくなよと、言ってくれているような気がする。


「マイラはあまり物に対する執着がなさそうだ」

「違う、スラムでは自分の物が無かった。すぐ人に盗られてしまうから。だから、結婚記念ホールみたいなのを作ったのかも」


 何か、永久に残る物でも作ってみようか。

 タイムスタンプを操作すれば時間は止められる。

 その魔道具に、魔力自動供給システムを付けるだけだ。


 その行為を思い浮かべて辞めた。


「何か思われたのですね」


 レクティがそう言った。


「物は壊れるから美しいという面もあるような気がする」

「滅びの美学に通じるお話ですか」

「そこまでは考えていないけど」

「滅びは負け。美しい負けなんか存在しない。美しさは常に勝利にこそある」


 マイラらしいな。


「違うわ。美しさは多様性の中にあるの。だから物を保管しておくのは大切。そして多様性は変化をもたらす」


 リニアがそう言った。


「ええと、美しさは心の中にあると思います。物にある美しさはいずれ色あせる」


 セレンがそう言った。

 何となく深い考えのになった。

 美しいと感じるプログラムは確かにある。

 俺はそれを追求して残していかないといけないのかな。

 何となくそう思った。


――――――――――――――――――――――――

 鉄筋コンクリート魔法。

 別に読む必要はありません。


extern MAGIC *magic_make(char *obj,int obj_size,int imege);

extern void magic_alchemy(MAGIC *mp,char *process_data);

extern int mclose(MAGIC *mp);


char concrete[1000000]; /*合成する物質100万立方センチ*/

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 char process[10]; /*工程データ*/



 mp=magic_make(concrete,sizeof(concrete),IMAGE_LIQUID); /*コンクリートを魔法登録*/


 process[0]=PLASTER; /*石膏*/

 process[1]=BAKE; /*焼く*/

 process[2]=WATER; /*水*/

 process[3]=VOLCANICASH; /*火山灰*/

 process[4]=SAND; /*砂*/

 process[5]=LIME; /*石灰*/

 process[6]=MIX; /*混ぜる*/

 process[7]=REBAR; /*鉄筋*/

 process[8]=DRY; /*乾かす*/

 process[9]='\0'; /*終わり*/


 magic_alchemy(mp,process); /*プロセスに従って錬金*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}

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