第277話 襲撃と、撃退と、抑止力
ダンスパーティから寮への帰り道、閃光がきらめいた。
その方向は門だ。
門を突破されないように、バリアの魔道具を設置してたんだった。
おそらく魔戦士が攻めてきたんだな。
だが、門で足止めを食らった。
それでパーティが終了してからとなったんだな。
間抜けな事だ。
「みんな、行くぞ」
門の所に行くと、肩パッドを着けたやつらが、魔法の集中砲火を行っていた。
魔道具は何重にも、設置したから破られていないようだ。
ランシェが手配した兵士が、破られた時に備えて臨戦態勢をとっていた。
「キイカ・モイ・ラナカ・ラハ・クイスイ!」
トレンが兵士と揉めている。
「トレン、駄目だよ。今は出られない」
リッツが必死に抑えているのが見えた。
「トレン、あなたの弱点は分かっている。いまここでばらされたくなかったら退くことね」
マイラが説得してくれるようだ。
「1回勝ったぐらいで、いい気にならないで」
「じゃあ言っちゃうけど。魔法を防いでいるのは魔力の流れよね」
「ふん、何を分かった気で」
「高速の石弾を当てられたら大ダメージじゃないの」
「くっ」
ええと、魔力は反発する。
魔法の炎なんかをぶつけると、魔力の反発で消える。
もちろん熱は消せないから、ダメージにはなるけど、反発で緩和される。
トレン達は魔力の流れで、強固な反発を起こすんだな。
石弾をぶつけられると、魔法の推進力は消えるけど、石の重量と移動エネルギーは消えない。
大ダメージになるわけだ。
もっとも石弾を銃弾ぐらいに加速するには工夫が必要だけどね。
だけど、不可能じゃない。
「あんたの国が攻めて来ないのは、この弱点があったからよね」
「それを知ってどうする?」
「どうしもしないけど。学園の生徒を何人か倒したぐらいで、無敵みたいな顔されても笑っちゃう」
「くっ。キラシシチモミ」
トレンは外出を諦めたようだ。
とりあえずトレンの国が強くなるには、防弾装備だな。
蛮族の国ではどうしようもないけど。
この国からそういう装備を支援することも無いだろう。
さて、ちゃちゃっと終わらせますか。
「【腸内細菌毒化】」
「おい、しっかりしろ」
どんどん行くぞ。
立ち止まっている相手なら、魔力を体内に侵入させて殺せる。
動かれると駄目だがな。
セレンも体内に石を飛ばし始める。
敵の数はどんどんと減っていった。
「剛力のテトロード参る」
巨漢が一人突進してバリアに拳を叩きつけた。
こいつは見覚えがある。
魔戦士の幹部の一人だったと思う。
「くっ。だが破ったぞ」
テトロードの拳は血にまみれていた。
バリアは魔道具だから魔力さえあれば、幾らでも張り直すことができる。
「【加速砲】」
筒状の重力場で石弾を加速して撃ってみた。
この魔法を使うとトレン達には大ダメージになる奴だ。
「ぐわっ」
テトロードの胸板が撃ち抜かれて、血だまりに沈む。
「テトロード様がやられたぞ」
「退却」
魔戦士が逃げていく。
弱いな。
やっぱり魔導師は弱体化している。
バリアを1回破るのがせいぜいか。
「見せてもらったわ。それがあなたの切り札ってわけね」
トレンは帰ってなかったらしい。
「こんなの児戯だよ。でも魔道具を作れば、誰にでも同じ事が出来る。子供が人を殺すような魔道具は作りたくないからしないけど」
「戦争になると違うというわけね。肝に銘じておくわ」
トレンが去っていった。
「はったりは下手なパンチより効く。スラムの鉄則」
マイラの言う通り、結局、行き着く所は抑止力なんだよな。
トレンが学園に入学したんだって、ディッブの力を見せつけるためだろう。
それと調査かな。
脅威がないか調査に来た。
いざという時のために加速砲の兵士用魔法を作っておくか。
起動する時に持ち主の神秘魔法名で認証するようにする。
他人には装備が使えないわけだ。
こうしておけば鹵獲されて、捕虜の兵士が裏切っても、最小限の被害で済む。
盗難防止にもなるし。
司令官クラスが裏切ったら、その時は仕方ない。
もちろん一斉に停止させるような仕掛けはしておく。
「残党を狩って来る。サイリス、行くよ」
リニアがサイリスを連れて残党狩りに出た。
「ではわたくしはアジトを突き止めるといたしましょう。死んだ者から色々と手掛かりが得られるというものです」
「わたしは、今回活躍したよね」
「セレンはよくやった」
「わたしはトレンと口喧嘩で勝ったから満足」
「そうだな、マイラのおかげで戦争が避けられた。トレンが死ぬようなことにならなくて良かったよ」
トレンは捨て駒じゃないと思っているが、その可能性も捨てきれない。
厄介な事だ。
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