第268話 翻訳と、大発見と、ソ・ミミカ語
「うーん」
リッツがノートに書き込みながら考え事をしている。
『外部にありて、返答は魔法構造の水球生成、贄は魔力。応えを魔法に求めず、何渡されず。疾く魔法開始せよ。魔法構造その名はモセ。モセは水球生成、1を渡せ。われ魔法終了せし』と書いてある。
水球生成の新魔法だな。
「よし。トレンに翻訳してもらおうっと」
そう言ってリッツは部室から出て行き、しばらくしてノートを握り締めて帰って来た。
「ノート丸めて握ると使いづらくなるぞ」
「見てくれ」
『イサカイスミ・モチキニソ・けテチカイスろコチリリろモチノイゆハリラチカ・モチミチよレ・ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・モチキニソ・けモセレ・モセほテチカイスろコチリリろモチノイゆヌルワよレ・む』とノートに書いてある。
ええとなんちゃらミミカ語でさっきの新魔法を書いたのか。
文字数はそんなに変わらないな。
リッツが無詠唱で魔法を2回発動する。
「新発見だ。イミキリニトク・ミカカ語と新魔法のハイブリッドは4倍ほど効率が良い。一般人の40倍は凄い。論文は貰ったな」
「原理が分かっているのか。それになんちゃら・ミカカ語が分からない人はどうする。リッツだって100%は分かってないだろう」
「同志よ。無詠唱でこれをやってくれ」
「心得た」
驚いた事になんちゃらミカカ語の呪文をベークが発動した。
あれっ、いやベークの新能力の翻訳が作用しただけだ。
「ベーク、意味が分かったのか?」
「分からない。でも読めて発音できるだろ」
「確かに文字は日常会話の物と同じだ。俺だって発音できる」
俺はなんちゃらミカカ語の呪文で無詠唱した。
魔法が発動した。
という事は呪文の要件は、発音出来ておぼろげに意味が分かれば良いのか。
これの方が大発見だな。
という事はC言語で書かれた呪文の読み方さえ教えれば誰にでも発動が出来るという事だ。
だが俺が教えない限り無理だろう。
『{』例えばこれの読み方を偶然に発見するなんて事はない。
波括弧だもんな。
C言語の読み方マイラに教えたら発動できるはず。
だが教えるのは危険だな。
となると。
「なんちゃらミカカ語が魔法界を席巻するな」
「なんちゃらじゃないよ。ソ・リチミキナチキイ・ミカカ語」
「んっ、前に言ってたのと違う」
「ソって言うのは3番目を表すんだって。でソ・リチミキナチキイ・ミカカ語。ソ・ミカカ語でも良いらしいけど」
「3番目?」
「イミキリニトク・ミカカ語が1番目。使われていないカクイ・スラモチミ・チリセクチコイカ・ミカカ語ってのがあるんだって」
「あんなのが2つもあるのか。それで新魔法とのハイブリッドがソ・ミカカ語か」
読めて発音できて、おぼろげに意味が分かると、発動できるとはな。
「トレンはこの発見をなんと言っている」
「下らないけど、下々には便利かも知れないと言ってたよ」
この発見をリッツから横取りするのは違うな。
「いいかリッツお前は凄い発見をした。呪文てのは細かい意味が分からなくても、発音出来ておぼろげに内容が分かれば良いらしい。凄い発見だ。論文を書けよ。通る可能性大だ。ソ・ミカカ語ありきの発見だが、よくやった」
「本当、そんなに凄い発見なの」
「ああ、歴史に名が残るほどのな」
「やった。魔法言語学と、呪文構築学、それと魔法効率学の単位は頂きだな」
「同志やったな。羨ましいぞ」
「もうソレノに振られなくて済む。ぐすっ」
「リッツ泣いているのか」
「浪人して出来ない子扱いされたのがどれだけ辛かったか。これで見返せる」
「タイトぅ、僕にも閃きを」
「ソ・ミカカ語の構成を勉強するんだな。そうすれば見えてくる物があるだろう。何が肝なのか分かるはずだ」
「同志よ。新魔法あってのソ・ミカカ語だ。ソ・ミカカ語の事ならなんでも聞いてくれ」
「同志よ。恩に着る。まずは簡単な事から教えてくれ」
「『が』が始まりで『む』が終わり。1区切りの意味が『レ』。後は単語の意味が分かれば楽勝だ。俺も単語の意味は怪しいけどね」
ベークがノートに『
イサカイスミ・モチキニソ・けテチカイスろコチリリろモチノイゆハリラチカ・モチミチよレ・
ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・
が・
モチキニソ・けモセレ・
モセほテチカイスろコチリリろモチノイゆヌルワよレ・
む』と書いた。
形がまんまC言語だ。
新魔法の元がC言語だからな。
似て来るのも仕方ない。
「同志よ。さらに付け加えると。『ゆ』と『よ』で対になっている。中に要件が入る」
おお、C言語っぽい。
効率が上がったのはそのせいだな。
C言語とは比べられないが、ベークの新魔法よりC言語に近い。
効率が良い理由は分かった。
要するにソ・ミカカ語の肝は、始まりと終わりがくっきりしている事だな。
これを解析したら、新魔法の論文も進むだろう。
比較対象があるのはやり易いと思う。
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