第261話 誘拐と、罠と、書き換え
新年になった。
俺は10歳に、見た目は15歳にしている。
マイラは14歳、思春期真っただ中だ。
レクティとセレンは16歳、もう大人の女性だ。
リニアは相変わらず17歳ぐらいの外見で、たぶん20歳ぐらい。
「新年おめでとう」
「「「「おめでとう」」」」
さて、部室に顔を出すかな。
たぶん他のメンバーも来るだろう。
部室でお茶を飲んでいたら、ドアが勢いよく開けられた。
「大変だ。ラチェッタがさらわれた」
ベークの焦った顔。
「魔法でラチェッタの居所はすぐ分かる。状況を説明しろ。犯人によっては出方が変わるからな」
「魔導師の新年パーティがあったんだ。そこにラチェッタと出席したんだけど魔戦士の集団が殴り込んできて」
「幹部はいたか?」
「いなかった。でも、魔戦士は強かった。魔導師が何人もやられて。僕も頑張ったけど、どうしようもなかった」
ベークよ、負けイベントは1回だけにしとけ。
負け癖がつくぞ。
「気づいた事はないのか?」
「ロータリ訛りがあった」
むっ、戦闘員はロータリ人か。
出稼ぎできた奴が魔戦士に加わったのか。
ありがちだな。
今のロータリ人の待遇は良くない。
奴隷同然で扱っている貴族もいるからな。
反発する奴が出てきてもおかしくはない。
「他には?」
「やつらモンスターを従えている」
何だって?!
奴隷化の魔法は確かに俺も作ったが、やつらも厄介な事を。
やり方によっては都市を壊滅させる事も出来る。
「タイト、どうやら魔戦士を撲滅しないといけないようね」
マイラがやる気を出している。
「とりあえず、ラチェッタを助け出すぞ」
神秘魔法名で居所を探る。
王都からは出てない。
そう言えば王都の中にモンスターをどうやって入れたのだろう。
何か腑に落ちない。
「レクティ、場所を書いた。部下に偵察させてくれ」
「ええ。お願い!」
レクティがスナップを効かせ書いた紙を投げる。
紙はドアの隙間から廊下に出た。
廊下に待機しているんだろうけど、姿を見た事がない。
どうやって隠れているんだろう。
それはともかく、おかしい。
魔法で場所の検索を掛けると、幹部達はすかさず移動を開始してた。
ラチェッタの事を探ったという事はばれているはずだ。
となれば移動を開始してもおかしくはない。
敵の不手際だとは考えられない。
嫌な予感がする。
「早く助けてよ!」
「ベーク、人に頼るな」
「分かった。僕は僕で動く」
そう言ってベークは出て行った。
ベークは何時の間に手下を作ったんだ?
それとも自分一人でなんとかするつもりなのかな。
無駄だとしてもやらせておこう。
俺の邪魔にはならなさそうだからな。
しばらく経ってドアから紙が差し込まれた。
レクティは手に取って一瞥すると、俺に差し出してきた。
アジトには魔戦士の集団とモンスターがいる。
ラチェッタの姿は確認できずか。
さらってきて外を自由に歩かせたりはしない。
屋内で監禁しているのだろう。
「よし、アジトに行くぞ」
マイラ達とアジトに行った。
トゲの付いた肩パットをしている奴らがうようよいる。
モンスターはオークだな。
「マイラ、リニア、蹴散らしてやれ」
「了解」
「気づかれても良いのね」
「場所を探った時点で襲撃はばれている。遠慮しなくて良いぞ」
マイラとリニアが敵に突っ込む。
血しぶきが上がった。
二人に敵う奴はいなかったようだ。
外の連中は片付いた。
屋内から増援は出て来ない。
籠城策か。
ラチェッタの居場所は変わってない。
秘密の抜け穴もなしか。
おかしいな。
罠の匂いがプンプンする。
こういう時は姿隠し発動。
俺とマイラは邸宅に入った。
中はがらんとして人はいない。
ラチェッタがいる部屋のドアを思い切って開ける。
ラチェッタはおらず、知らない女が立っていて、周りを魔戦士が固めていた。
俺とマイラは急いで部屋を出た。
「セレン、星を落とせ」
「分かったわ。【星落とし】」
天から石の塊が落ちてくる。
そして、邸宅に落ち、大爆発した。
やっぱりな。
セレンの魔法だけで爆発したわけじゃない。
罠が張ってあったんだ。
ラチェッタの神秘魔法名は消えた。
たぶんだが、神秘魔法名の書き換えを行ったんだ。
ラチェッタの神秘魔法名を別人が使って、ラチェッタは別の名前を使っている。
参った。
糸が途切れた。
いや諦めるのは早い。
モンスターを王都に入れた謎が残っている。
ここから手繰ろう。
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