異世界で俺だけがプログラマー~転生して蘇った前世の知識は魔王級。家族には捨てられたけど、世界法則には気に入られた気がする。帰って来てくれと言われても、もう遅い。プログラム的呪文で最強無双~
第260話 ベーク印と、レクティの秘策と、論文
第260話 ベーク印と、レクティの秘策と、論文
入学試験の合格発表だ
もちろん、ラチェッタは受かっていた。
「タイトぅ、ベーク印の魔道具が売れない」
ベークがまた気持ち悪い目で俺を見ている。
「何をしたんだ。言ってみろ」
「新魔法は10倍の効率だろ。魔道具にしたらどうかと思って蓄えを全て使ってしまった。返品の山でどうしていいか分からない」
こいつ馬鹿だ。
俺のプログラム魔法の10万分の1の効率なのによく勝負になると思ったな。
「勝算は?」
「タイトの奴には劣るよ。でも他の工房の10倍の効率だから」
「売れると思ったと」
「ああ」
他の工房の製品が売れているのは俺のと違う機能の物を作っているからだ。
ベークに教えた新魔法の奴は当然俺が作っている。
そんなの売れるはずがないだろ。
「カビの生えた黒パン食って、過ごすんだな」
「頼むよ」
「しょうがない。婚約者ズのアイデアを聞いてやる」
「はい」
「マイラ君」
「ただの水でも霊水だと言えば売れる。スラムの鉄則」
「そんなの捕まって終わりだ」
ベークもそのぐらい分かるか。
「はい」
「セレン君」
「足を使って売り込むのよ。100軒も家を訪ねれば買ってくれるお宅もあるわ」
「無理だ。買ってくれるわけがない」
うん、そうだな。
ベークの営業スキルでは無理だな。
「はい」
「リニア君」
「腕相撲勝負で勝って売りつける」
「勝てないよ」
リニアなら酒場でそうやって売りつけるだろうな。
「どうやらわたくしの出番のようですね」
レクティが黙っていると思ったら秘策があるようだ。
「レクティ先生どうぞ」
「修理保証をつけるのです。もちろん修理代金は少し貰います。それとバージョンアップ保証もつけるのです。これも代金を少し貰います。末永く使って貰おうというわけですわ」
なるほど、高い価格はサービス込みというわけだ。
「ええと、どういう事?」
ベークには分からないらしい。
「俺の魔道具の方が性能は良いが、壊れるともうそれで終わりだ。だがベーク印は僅かな金で修理してもらえる。新製品が出た時もだ。言わなくても分かるだろ」
「修理する人が沢山必要だ」
ベークにもそれぐらいは分かるらしい。
「分かっていますわ。オルタネイトは余剰人員で溢れかえっております」
ああ、オルタネイトは実家の反乱で出た流民を抱えていたんだったな。
それが、ロータリの出稼ぎで問題が悪化したか。
修理とバージョンアップの作業は簡単だ。
魔道具の魔石を液体にして、固体に戻せば良い。
それから呪文をかき込めば完成だ。
こうすれば割れた魔道具も元通り。
それにしても、修理保証とバージョンアップ保証か。
レクティはなかなかやるな。
これを実行するのに人員は確かに必要になる。
「皆さんお茶が入りました」
ラチェッタとベスとコネクタがお茶を運んで来る。
リッツは今日もデートか。
よく飽きないな。
「僕もラチェッタとデートに行けそうだ。魔道具が高く売れたんだ」
「そうですか。無理をしていませんか」
「レクティさんのアイデアでこれからは金持ちさ」
ベーク、浮かれていると足をすくわれるぞ。
「ベーク、論文はどうした。再提出しないのか」
「うがぁ、くそう。こうなったら。レクティさん、新しい販売方式を論文に書いていいかな」
「いいわよ。でも手伝いませんよ」
「ラチェッタ、手伝ってくれ」
「ベーク、彼女に頼むのか。みっともないぞ」
「何とでも言うが良い。タイトだって、さっき婚約者の知恵を借りただろ」
「めんどくさかったからな。重大な事なら真剣に取り組むさ」
「くっ、言い返せない」
「ああはなりたくないですね」
「妹よ、そう言ってやるなよ。でも頼れる彼女は少し羨ましい」
「普通なら愛想をつかされますよ」
「いいのです。ベーク様は命の危険をかえりみず報せに来てくれたのです」
「そんな事もあったな。ラチェッタ、ベークを振りたくなったらいつでも言え。すっぱり引導を渡してやるよ」
「やるよ。一人で論文を書けば良いんだろ」
「新しい商売の論文が通ったら、経済学の単位を貰えるかもな」
単位は論文提出でも貰える。
狭き門なので誰も挑戦しないが。
「やってやるぞ」
「新商売の利点は何だ?」
「永遠に使える。新製品を安く手に入れられる」
「それは客の利点だ。売る方の利点は」
「修理代金が貰える。ええと、あれっ」
「修理代金は雀の涙だ。旨味などほとんどない。バージョンアップもだ」
「分からない」
「考えるんだ。レクティは儲けにならない商売はやらないぞ」
旨味は囲い込みだ。
長く付き合いが続けば他の商品も買ってくれる。
足を運んでくれるだけで売る為のチャンスが生まれる。
こちらから行くのではなくて来てくれるのだ。
修理やバージョンアップに来た時に別製品の割引券を渡すのも良いだろう。
とにかく色々と方法がある。
ベークにそれが分かるかな。
分からなければ、後で誰かがヒントを出すだろう。
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