第256話 文化祭と、神の好みと、クラブ

「タイト、次は赤に右手」


 リニアからの非情な宣告。


「くふう、何で密着してくるの」


 素数だ素数を数えるんだ。

 いや円周率の方が良いかも。

 パイ、パイは駄目だ危険すぎる。


「タイト、血流が一点に集まっているよ」


 ツイ○ターゲームを一緒にプレイしているマイラから指摘されてしまった。


「頼む。血の流れを読まないで」


 恥ずかしい。

 婿に行けない。

 もう負けよう。


「痛たぁ、足がつった」


 俺はわざと負けた。

 マイラと組み合ったまま崩れる。

 不味い。

 この体勢は不味い。


「こほん」


 リニアが咳払いして俺はマイラから逃れようともがいた。

 がっちりホールドされている。

 マイラの唇が俺の顔面に迫って来る。


 サイリスがマイラ首筋に噛みついて引きはがしてくれた。

 ふぅ、危なかった。

 18禁に突入するところだった。


「ええと今みたいに遊ぶのですわ」


 カップルの客は少し恥ずかしそうに、でもうずうずとしているようにも見えた。

 一人客は目が死んでた。

 強く生きろよ。


 いちゃいちゃを喜んで見ている一人客の変態もいる。

 いや、女子のはだけた姿に興奮しているのだろう。


「サイリス、変態共を排除してくれ」

「がうっ」


 サイリスが変態共を会場から追い出した。

 この催し物、無理があるんじゃないかな。

 俺の忍耐力がゴリゴリと削られるし、公序良俗に違反しているような気もする。


 隣の部屋にベッドとか置いて防音とか施すと流行るんだろうな。


「タイト、続きをやりたくない?」


 マイラがスカートをちらりとめくって太腿を見せる。

 猿顔の怪盗だったら、服を脱ぎながらダイブして、ノックアウトを食らうのだろうな。


「健全な催しなんだよ。ちょっと頭を冷やして来る」


 俺は会場を出て、中庭のベンチで風に当たった。

 後1ヶ月ほどで今年の新年を迎えると、マイラは14歳。

 たぶん地球の数え方だと15歳。

 年齢的には女子高生だ。


 エッチな事に凄く興味があるんだろうな。

 早い女の子はこのくらいの年齢で結婚している。

 地球の価値観は当てはまらない。


 マイラが17歳になるのでは我慢すると決めたんだ。

 体は子供でも精神は大人だ。

 我慢できるはず。


 つやつやした顔で、ベークとラチェッタが歩いて来た。

 やったんだな。

 純粋に楽しめる奴がうらやましい。


「カップルの熱気が凄くてちょっと、涼みに来た。タイトもだろう」

「わたくしは幸せな気分になれて、ああいう空間は好きですわ」


「ベーク余裕だな。状況は待ってはくれないぞ。息抜きもいいけど精進しろよ」

「タイトはお義父さんみたいだな」

「ラチェッタの後見人だからな」


「今なら何でもできる気がするんだ」

「論文は書けたのか?」

「なぜ新魔法が優れているのか分からないんだ? そこで詰まっている」

「何でもできると言ったばかりだろう」


「わたくしが考えますに、好きか嫌いかなのでは。好きな方には力を貸してあげたくなるでしょう」


 ラチェッタの意見だと、世界の好みに合致しているという事になるな。

 本当にそうだろうか。

 そうなるとルールが決まった物が好きという事だ。

 秩序を愛するのかな。

 女の勘は侮れないから、あたらずといえども遠からずという事なのかも知れない。


「神の好みという事か。それで論文を書いてみる。ラチェッタ、愛している」

「まあ、ベーク様ったら」

「愛のエネルギーは無限だ」


 会場に戻ると、激しい音楽が流されていた。

 そして、薄暗い部屋に、色とりどりの光が舞っている。

 何となくクラブを思わせる。

 カップルの歓声が凄い。

 そしてカップルが何組もゲームしてくんずほぐれつしている。

 ベークが熱気に当てられたと言っていたが、これはちょっと。


「マイラがやったのか!!」


 大声でマイラに伝える。


「すごいでしょ!! 頑張ったのよ!!」


 使っている魔道具は賭場から注文があった奴だ。


 おいおい、あんなに体を擦り合わせて。

 やめろと言ったら暴動が起きそうだ。


「一線は超えないようにな!!」

「分かった!! 模範プレーをそろそろやらない!?」


 くっ、恐れていた事が。


「彼等の邪魔しちゃ悪い!! 踊らないか!!」


 クラブで踊るような踊りを披露する。

 マイラも天性の運動神経で合わせて来た。


 ゲームしてない周りのカップルも踊り始める。

 こうやって発散させてやればいいか。


 レクティ達も踊りに参加して、俺は4人と踊った。

 ツイ○ターゲームではなくてクラブにすれば良かったんだな。

 これなら一人客も参加できる。

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