第252話 現実と、攻略ノートと、マーカー

 12月になり、今は試験ウィークだ。

 おも研の部室でベークの顔が暗い。


「ベーク、試験は駄目だったようだな」

「不公平だ。何割かは、魔報によるカンニングをしているんだ」

「それも才能だ。考えてみろ。財力があれば魔導師を何人も雇える。カンニングし放題になるわけだが、社会に出ても縮図は変わらない。コネと金でのし上がる奴らのなんと多い事か。でもそれが現実だ」

「ぐっ、卑怯だ」


「ちょっと前まではお前もその卑怯な事をやっていた」

「ぐぬぬ。悪の道に行く奴を笑えない」

「そっちの道はラチェッタに嫌われるぞ」

「分かっている」


「だから違法でない手段は全部とるんだよ」

「例えば?」

「真面目な学生はみんな攻略ノートを作っている。試験に出そうな問題とかをピックアップしている訳だ」

「うんうん」

「どうにかして誰か一人にそのノートを見せてもらう。それで、魔法で写しを作る。それを持って別の生徒に交換でノートを見せてもらう。繰り返せば、情報が集まる。後は集まった情報をいかに上手く使うかだ。複写の魔法を教えておこう」

「ありがと。何とかしてみる」


 ベークが出て行った。

 ほんとうは手で写した方が良い。

 そうすると写していくうちに覚えるからだ。


 時間が無いから今回は魔法で写したが、工夫する事は色々とある。

 カラーマーカーとか蛍光ペンを作るのも良いな。

 モンスター素材とか色々漁れば面白い物が作れるだろう。


 一時間ほど経って、ベークがノートを沢山抱えて戻ってきた。


「これを全部覚えるのか。駄目だ。僕には無理だ」

「ラチェッタ、励ましてやれ」

「ベーク様、がんばですわ!」


 ラチェッタが両手を握って、可愛らしくほほ笑む。


「分かった、頑張る」


 ベス、コネクタ、リッツを入れて勉強会が始まった。

 みんな頑張れよ。

 俺? 俺なら卒業に必要な単位は全て取得済みだ。


 マーカーとかを考えるか。

 フェルトと綿は、なんとかなるだろうから。

 後は金属の筒だな。

 これも魔法で製造できる。

 ネジを切って分解できるようにして、インクを補充、ペン先を交換すれば、繰り返し使えるな。

 問題はインクだ。

 油性が好ましいが、そんなの俺の知識にはない。


 俺は馬鹿だ。

 魔道具でマーカーを作りゃ良いんだ。

 細い筒にペンキみたいなのを入れて、魔法で紙に書いて瞬時に乾燥させりゃ良い。


 いや、焼き付けさせればもっといい。

 気分はコピー機の原理だ。

 でもレーザーは不味いな。

 熱で何とかしよう。


extern MAGIC *red_ink_little(void);

extern void baked_paint(MAGIC *mp);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=red_ink_little(); /*インクを魔法に*/

 baked_paint(mp); /*焼き付け*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 魔法はこんなんで良いな。

 握りの筒は鉄を召喚して作って、とりあえず中にインクを入れてコルクで蓋をする。

 魔道具の要である魔石を取り付けて、マーカー型の魔道具の完成だ。


 試してみたところ、連続起動しないと線が書けない。

 ちょっと使いづらい。


extern int paper_touch(void);

extern MAGIC *red_ink_little(void);

extern void baked_paint(MAGIC *mp);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 while(1){

  if(paper_touch()==1){ /*紙に接地かどうか*/

   mp=red_ink_little(); /*インクを魔法に*/

   baked_paint(mp); /*焼き付け*/

   mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

  }

 }

}


 これで良いだろう。

 カラーマーカーの出来上がりっと。


「これを使ってみてくれ」

「変わったペンだ」

「太くて握りづらい」

「でも、インクを補充しないで書けるのは、よろしいですわ」


「うん、良いかも」

「太い線なのは良いね」

「インクが滲んだり飛んだりしないのも良いわ」


 また、儲かりそうなのを作ってしまった。

 インクを入れる筒は鉄で無くてアルミを使いたいところだ。


 極細バージョンが欲しいというので作る。

 文房具に革命を起こしてしまったか。

 インク詰まりがないので、ボールペンより便利かも。

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