第250話 魔法舞踏祭と、魔戦士と、ベークの覚醒

 学園は魔法舞踏祭。


「煌びやかですわね」


 ラチェッタは魔法を使いながらの踊りに心を奪われているようだ。

 隣にいるベークが少し寂しそうだ。


 出し物は続き、いよいよ優勝候補が出てくる。

 舞台に黒い煙が焚かれた。

 凝った演出だな。

 でも魔法でない演出は減点だ。


「我らは魔戦士。魔導を極めんとする者」


 あれっ、雲行きがおかしいぞ。


「ラチェッタは我々がもらい受ける」


 煙が晴れ、トゲが付いた肩パッドを身に着けている男が現れた。


「ラチェッタは渡さない」


 ベークが舞台に上がる。


「どけ小僧」

「小僧じゃない。ベークだ」

「よかろう名乗ってやる。魔戦士の第一席、ダイアックだ」


「先手必勝。【火球よ飛べ】」


 ベークから火球が放たれる。


「ぬるいな」


 ダイアックは手で火球を握り潰した。

 魔力アップの魔道具を使うと魔法抵抗力が上がるから、熱さを無視すればこういう芸当も出来る。

 耐熱グローブみたいなのを着けているんだろうな。

 火傷を負った感じはない。


「【爆ぜろ】」


 ダイアックが爆発の魔法を使う。

 ベークは吹っ飛ばされ錐揉みして舞台から落ちた。

 衝撃波は魔法抵抗力では防げない。


 ベークじゃ、こんなもんか。

 スキルがあるから、ベークは大した怪我を負ってないだろう。

 俺はバリアの魔道具を起動した。

 そしてゆっくりと舞台に上がる。


「【100万魔力火球】」


 俺は舞台より大きな火球を空に浮かべた。

 実際に撃ったりはしない見せ技という奴だ。


「ダイアック様、ここは我々が。魔戦士の第二席、ダイオード参る」

「魔戦士の第三席、トライオード参る」

「魔戦士の第四席、テトロード参る」

「魔戦士の第五席、ペントード参る」


 やはりトゲの肩パッドをつけた奴らが4人現れた。

 しょぼいな。


「【誘導電撃10発同時】」


 俺は火球をキャンセルして、電撃を放った。


「ぐわー」

「ぐっ」

「くそっ」

「負けるか」


 奴らはボロボロになったが耐えたようだ。

 魔力アップの魔道具をばら撒いたのは失敗だったかな。


「退くぞ」

「「「おう」」」


 奴らは逃げ出した。


「何でなのか、暗号が分かる」


 ベークがいつの間にか俺のそばに来て、スペルブックを覗いて呟いた。


「応えを魔法に求めず、贄として囁き数と、囁き群を渡す。何だろこれっ」


 ええとベークに何が起こった。

 頭を打っておかしくなったのか。


 試しに俺は水球窒息魔法をベークに見せた。


extern MAGIC *water_ball_make(float mana);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=water_ball_make(1.0); /*水球生成*/

 while(1); /*無限ループ*/

}


 こんな魔法だ。


「分かるか?」

「外部にありて、返答は魔法構造の水球生成、贄は魔力。応えを魔法に求めず、何渡されず。疾く魔法開始せよ。魔法構造その名はモセ。モセは水球生成、1を渡せ。無限に回れ。われ魔法終了せし。だと思う」


 うん、翻訳されている気がする。


「魔法詠唱してみろ」

「【外部にありて、返答は魔法構造の水球生成、贄は魔力。応えを魔法に求めず、何渡されず。疾く魔法開始せよ。魔法構造その名はモセ。モセは水球生成、1を渡せ。無限に回れ。われ魔法終了せし】」


 10センチぐらいの水球が浮かんだ。

 俺がプログラム魔法を唱えると5メートルぐらいの水球が浮かんだ。


「今度は俺のスペルブックを唱えてみろ」

「これはどう読むんだ」


 英語は読めないらしい。

 でも意味は分かると。

 なんのこっちゃ。


 とにかく覚醒した事は確かだ。

 ベーク翻訳のプログラム的魔法は普通に魔法を行使するより、ずいぶんと効率が良い。

 オリジナルとは比べ物にならないが、それなりに使える。


 他の人のおよそ10分の1の魔力だな。

 ベークの魔法は10倍の威力だとも言える。

 そんなに凄くない。

 だが、画期的だ。


 ベークにはスペルブックを見せない方がいいのか、後でゆっくり考えてみよう。


「ダイアックはどこですか?」


 伝言魔法で報せが行ったんだろう。

 スコットが駆け付けてきた。


「逃げたよ。奴らを知っているのか?」

「あれが離反した魔導師で、魔戦士を名乗っているようです」


 名前を変えても中身が伴わないんじゃ駄目だな。

 スケールダウンしている感が否めない。

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