第247話 後見人と、魔導師代表と、学校

「ベーク様、またお会いできる事を楽しみにしております。ではみな様方、ごきげんよう」


 ラチェッタがランシェに引き取られていった。

 彼女の立場は微妙だ。

 彼女の名の下に魔導師が結束して国に歯向かう可能性がある。

 殺すのも悪手なんだろうな。

 彼女を殺せば、ファラドの直系は絶える。

 だが、恨みは残る。

 ゲリラ戦やテロ行為に走られるのは勘弁してほしい展開だ。


 こういう時に有効なのは婚姻だ。

 女性だし、適当な男と結婚させれば、魔導師の手綱を握れる。

 目ざとい貴族などは、彼女と結婚させようと、画策を開始している事だろう。


 ランシェから手紙がきて、ラチェッタの結婚相手としてどうかと言ってきた。

 もうハーレムの増員は結構です。

 断りの手紙を書いたが、ややこしい事になりそうだ。


 そして、しばらく経った日。

 ラチェッタが学園にやってきた。

 婚約者ではなく、被後見人としてだ。

 俺が後見人として面倒を見ろって事らしい。


「ベーク、ラチェッタと恋人関係になりたかったら、俺を倒していくんだな」


 絶望したベークの顔。

 そして、決意に燃える眼差しで俺を見た。


「やってやる。魔王が何だ」

「意気込みだけは合格だな。とりあえずは魔法学園の卒業資格と、勘当を解く事だな。これが最低条件だ


「頑張れベーク。ラチェッタのハーレム入り阻止」


 マイラのやる気のなさそうなベークへの激励、ハーレム阻止の所は力がこもっていた。


「僕だってやればできるんだ。ラチェッタ、待ってて。必ず迎えに行くから」

「お待ちしておりますわ」


 座学ぐらいはなんとかしろよ。

 勉強ぐらいわけないだろ。

 若いんだし、吸収力はあるはずだ。

 ラチェッタは受講生として学園に通う事になった。

 今は9月、ラチェッタは12月に行う魔法学園の入学試験を受けるらしい。


「お初にお目に掛かります。魔導師代表のスコット・ファラドです」

「ああ、よろしく」

「よろしくですわ」


 スコットは王国に降伏した魔導師の代表だ。

 大して罪を犯してないので、自由に出歩けるので、こうして挨拶に来た。


「罪を犯さない限りは生存を許そう。魔導師はそれだけ罪深い事をした。ファラドの名前を捨てるなら構わないぞ」

「置かれている立場は十分に理解しています。ですが、罪を償うのは、ファラドの名前でないと意味がありません」


「何人ぐらいいるんだ」

「3千人ぐらいでしょうか」


「よし、土地を買ってやる。そこに里を作れ。非道な行いでなければ、研究に明け暮れても良い」

「分かりました」


 スコットが去って行った。


「ラチェッタは魔導師をどうしたい」

「難しい問題です。攻撃魔法を禁止しようかとも思いましたが、モンスターや盗賊の脅威がある以上、戦いは避けて通れませんわ。どのような集団にしたいか、考えがまとまりません」


 枷が必要だ。

 でもそれはロボット3原則みたいなじゃ駄目だ。

 ウイルス付きの魔道具は常に使ってもらうとして、俺の死後はどうなんだ。

 ウイルス付きの魔道具が作れなくなったら、枷が無くなる。


 結局のところ人が作ったシステムでは破綻は目に見えている。

 よりベターな長く続く施策だな。

 全国民が魔導師になるのが一番だと思う。

 魔導師を資格にして合格した者に神秘魔法名の秘密を教える。

 もちろん資格獲得は国が主導する。

 魔導師には学者になって貰おう。


 博士号みたいな感じだ。

 血を重視するのではなくて、能力を重視する。

 モラルの面は国になんとかしてもらおう。


「魔導師は学者や研究者として生きてもらうのが良いと思う」

「いいアイデアですわね」


 同意するラチェッタ。


「魔導師という血統ではなく、資格にしてもらうのが良いだろう」

「なるほどですわ。では、いまいる魔導師も合格しなければ名乗れない」

「そうなるな。とりあえず魔法学園を卒業は最低条件だな。そして、論文審査だ。審査は学会にさせたいな」

「わたくし、魔導師第1号を目指しますわ」


「魔法学園みたいな学校を増やしたい。競わせないと、伸びないような気がする」

「でしたら、今いるファラド一族を纏め上げて学校を作りたいですね」


「私もやる。学校を作る」


 マイラが話に入ってきた。


「ではわたくしも」

「私もやる」

「私もやりたいけど、どんな学校にしたら」


「セレンのいう通りビジョンがないと」

「ふふん、みんなはどうか知らないけど、私は魔法陣の学校を作る」

「薬学と魔法の学校が作りたいですわ」

「武術の学校がいいな」

「そうよ、星の研究」


「マイラとレクティは資金がありそうだけど、リニアとセレンは資金が問題だな」


 だけど、考えようによっては、資金は問題じゃないかもな。

 リニアの武術は、修練場さえあれば可能だ。


 セレンの星の研究なんかは、目視でもできる事はある。

 望遠鏡なら魔法で再現したりも出来るはずだ。

 若いんだからゆっくりやれば良い。

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