第245話 ラチェッタと、決戦と、突入

 雲一つない快晴。

 ベーク以外に寝不足はいないようだ。

 ベークの目の下のクマが酷い。

 一睡もできなかったらしい。


 村が見える所に俺達は陣取った。

 村にはローブ姿の魔導師が沢山いるのが遠目で分かる。


 ベークはちょっと前に俺達と別れて村へ行った。

 ちょっと待ってやるか。

 ほどなくしてベークはラチェッタの手を引いて現れた。


「攻撃を止めて下さいまし。お爺様達になんの罪がございましょう」

「リニア、見せてやれ」


 リニアの手がおぞましい触手に変形する。


「ひっ、これをお爺様達が」

「そうだな。それにしてもベークは凄いな。どうやって中に入って出て来たんだ」


 ラチェッタが固まったので、ベークに話題を振った。


「正直にラチェッタに一目ぼれしたので会いに来たと言ったら、入れてくれた。ラチェッタに星を落とす攻撃で村が壊滅すると言ったら、ラチェッタが抜け道を教えてくれたんだ。それで一緒に出て来れた」


 運のいい奴だ。

 ラチェッタがベークに助けられるのは予定調和なのか。

 この二人は結婚までいくかもな。

 きっと運命なのだろう。


「お爺様達はそんなに酷い事を。お爺様はふといなくなる時があって、どこに行ったのか教えてくれませんでした。村人の一人が秘密だと言って、ファラドの名と村の歴史を教えてくれました。わたくしはどうしたらいいですか?」

「俺達を恨むのも良いだろう。だがそれは魔導師が行った犯罪を全て知ってからだ。全てを知れば、どうすればいいのかは、おのずと見えてくるんじゃないかな」

「納得はいきませんが、もうどうしようもないのですね」

「俺としてはラチェッタには、滅びと再生を見守ってほしい」


「ラチェッタ、誰が敵になろうと僕は君の味方だ。今は話を聞く事しかできないけど、出来る限り力になる」

「ベーク様、ありがとうございます」


「タイト様、敵側に動きがあります」

「分かった。小手調べだ。【バリア1億魔力】」


 村をバリアで囲った。

 儀式魔法みたいなのを発動したらしい。

 1キロメートルはある巨大な火の玉が空に浮かび、こちらに向かって来て、バリアで防がれた。

 火球は散らばり、村の中は灼熱地獄になった。


 目につく魔導師のほとんどは焼け死んだ。

 バリアに戦士が果敢に斬りつけるのが見える。

 だが、バリアは突破出来ないようだ。

 こちらからも攻撃は出来ないが、向こうも攻撃できないはず。


「レクティ、降伏勧告をしてくれ」

「はい」


 レクティの部下が降伏勧告に行く。


「どうやら徹底抗戦らしいです。ほとんどの者が裁かれると死罪だと言っています。死ぬなら戦って死にたいと」

「愚かだな」


 自分のやった事を裁かれるのが怖いのか。


「ラチェッタ、良く見ておくんだ。彼らがどういう存在なのかを」

「それがわたくしの役目なのですね」


 しばらくして降伏すると言う者が現れた。

 バリアを解くと戦士がわっと俺達に向かって駆け出す。

 そう来ると思ってたよ。


「マイラ、リニア頼む。かれらに絶望を」


 魔導師側の戦士はマイラによって切り伏せられ、リニアの鉄拳で叩きのめされた。

 本当に降伏する者が出始めた。

 レクティの部下が武装解除して、移送していく。


 俺は再びバリアを張った。

 最終勧告をするべきかな。


「レクティ、最終勧告を」

「はい」


 最終勧告が行われた。

 バリアに向かって放たれる数々の魔法。

 それが返答か。


「セレン、重荷を背負わせて済まないな。覚えておいてほしい。命令を下したのは俺で、この村を滅ぼしたのは俺だ。じゃあやってくれ」

「【メテオ魔法】」


 空が明るくなり、空に点が見えた。

 俺はバリアを解除。

 そして閃光がきらめき、轟音と共に村が消滅した。

 吹き飛ばされないように樹につかまる。

 終わったな。


「お爺様」


 ラチェッタの目に涙が光った。

 ベークが優しく肩を抱きしめる。


 俺は終わりだと思っていたが、どうやら違ったようだ。


「タイト様、地下への入口を発見しました」


 レクティがそう報告して来た。

 本拠地は地下だったんだな。


「マイラ、リニア、突入するぞ。後の人間は待機だ」

「わたくしも参ります」

「なら僕も行く」


 ラチェッタとベークも行くらしい。

 俺達は村のあった場所に出来たクレーターに入り、地下へ続く穴に垂らされたロープを伝って下に降りた。

 灯りの魔道具を点ける。

 マイラとリニアが辺りの様子を窺いながら歩を進め始めた。

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