第239話 三毛猫温泉と、まんじゅうと、秘密

 王家から代官が送られてきて仕事を引き継いだ。

 肩の荷が下りたよ。


「みんなお疲れ様」

「やったー、温泉♪ 温泉♪」


 三毛猫温泉にやって来た。

 猫はサイリスを見ても怖がらない。

 よく見たら犬を連れている人もいる。

 犬も大丈夫なようだ。


 まずは足湯に浸かる。

 あー、のんびりほかほか。

 癒されるな。

 エレクも連れて来たけど、エレクはお風呂を見ると、一目散に逃げていった。

 ダイナが慌てて後を追いかける。

 ほのぼのした光景だな。

 サイリスはお湯を怖がらないみたいだ。

 足湯に浸かって気持ちよさそうにしている。

 もっとも、サイリスはでかいから、腹しか浸かれないが。


「まんじゅう買ってきたよ」


 リニアが前が見えないほどのまんじゅうを抱えてきた。

 サイリスが食いたそうにしている。

 犬ってまんじゅうは大丈夫だったかな。

 ええと、砂糖が良くないんだったっけ。

 小麦粉じたいは平気なはずだ。


 俺はリニアからまんじゅうを一つ取ると、サイリスに向かって投げた。

 サイリスは空中でキャッチ。

 一口で食い終わった。


「沢山は体に良くないから一つだけな」

「ばふっ」


 サイリスがリニアにすり寄る。


「ちょっとサイリス、冷たい」


 リニアがスカートがびしょ濡れになる。


「やーい、リニアが漏らした」


 マイラが騒ぎ立てる。


「じゃあ、まんじゅうを食ったら温泉に行こうか」


 まんじゅうの餡は肉だった。

 肉まんだったんだな。

 ねぎは入ってないようだ。

 入ってたらリニアが止めているだろう。


 外で食う飯は美味い。

 何でだろうな。

 買い食いとか不思議に美味かったんだよな。

 コロッケとか焼き鳥とかお好み焼きを買い食いしたっけ。


 腹も膨れたので宿に入る。

 予約した風呂は大きい家族風呂だった。

 くっ、やられた。


 一緒に入るという落ちなのか。

 だが、こんな事もあろうかと海パンを用意してある。

 準備は万全だ。


 はぅ、おっぱいが沢山。


 サイリスだけを見ていよう。

 平常心だ。


 マイラが背中に密着する。

 それは駄目だ。

 当ててるのよは駄目だ。


 バリアの魔法を発動。


「ちぇっ」

「風呂はいちゃつく場所じゃない」


 ふぅ、お湯でくつろごう。

 誰とは言わないが、発育の良い体が視線に入る、いや死線に入る。

 死活問題だ。


 のぼせて、鼻血が垂れてきた。


「お先に」


 着替えて、送風の魔法で涼む。

 ジュースに氷を入れて、一気飲みした。

 爽快だ。

 頭が冷える感覚がなんとも気持ちいい。


 マイラ達が上がって来る。

 俺は慌てて宿の部屋に退散した。

 上気した肌をして、マイラ達が遅れてやってくる。

 くそっ、色気がむんむんだ。


 サイリスに送風の魔法を当てて冷やしてやる。

 サイリスはブルンブルンと体を揺すっていた。


 フワフワになったので、サイリスに抱きついた。

 癒されるなぁ。


「私に抱きついてくれても良いのよ」


 マイラが品を作るが、まだ大人になりきってはいないので、色っぽさに欠ける。

 まだ俺は10代前半なんだぞ。


 何でマイラはこんなにませているんだろう。

 踏み込んだら、マイラはドギマギして、赤くなったりするんだろうか。

 本気になられたら堪らないから、やらないが。


「トランプしよう。罰ゲームとかは無しだ」

「ちぇっ」

「それでは面白くありませんわ。何か秘密を一つ喋るというのはどうでしょうか」

「いいわね」

「望むところです」


「分かったよ。それでやろう」


 色々な事を喋らされた。

 みんなの意外な一面も知れて仲良くはなれたかな。


 マイラの弱点がナメクジだとは。

 カタツムリは平気らしい。

 殻がついているかの違いだけだろう。

 もっとも寄生虫がいるそうだから、手で触るような事はしないが。


 レクティが10歳までおねしょしてたとはな。

 もっとも、この事は弱点にはならないがな。

 計算高いレクティだから、そういう事を喋ったんだろうが。


 リニアは子供の泣き声が嫌いらしい。

 でも怒ったりはしないそうだ。

 なんとか泣き止ませるように努力するみたいだ。

 3人も同時に泣かれるとパニックになるそうだ。


 セレンは数字の桁が増えていくと嫌になるそうだ。

 大きい数字が嫌いらしい。


 色んな事があるな。

 俺は割り算で割り切れないというのが嫌いだ。

 分数は許せる。

 というか分数の計算は得意だ。

 理系脳とはちょっと違う気がする。

 性格なんだろうな。


 みんなも誰かに知られて困るような事は話さなかった。

 楽しいレクリエーションになったような気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る