第237話 地方と、アルゴと、髪セット

 とんだ夏休みだ。

 反乱を収めに地方に行く事になった。

 さて、どう始末をつけよう。


 反乱分子は都市を占領している。

 要は籠城戦だろう。

 100万魔力で魔法を放てば城壁なんか楽々と壊せる。

 でも、後で暮らす人の事も考えないと。

 話し合いだな。

 降伏を促すのが最良だ。


 ならば見せかけの戦力だな。

 大軍を率いていくのも良いけど、それじゃ魔導師は折れないだろう。

 もちろん、国軍には出動を要請する。

 でもそれは武装解除や民衆を落ち着かせる役目だ。

 主に後始末だな。


 要ははったりが利けば良いんだ。

 よし、ドラゴンのアルゴに頼もう。


 元バリアブル領のソレノイド領に飛んだ。

 そして魔境に入る。


『おーい、アルゴ』


 俺は通信魔法を飛ばした。

 そして、100万魔力の火球を浮かべた。

 空にある黒い点が大きくなりドラゴンの形になった。


 風を巻き起こして着地。

 みんなの髪は乱れた。


「何ですか?」

『ちょっと頼まれてくれるか』

「いいですよ。暇ですから」


 反乱している都市に向かってアルゴと一緒に飛ぶ。

 最大スピードだったからみんなの髪は風でなびいた。


 都市は既に国軍によって包囲されていた。


『アルゴ、こう言うんだ。お前達は包囲されている。抵抗は無駄だ。大人しく降伏しろ』

「お前達は包囲されている!!!! 抵抗は無駄だ!!!! 大人しく降伏しろ!!!!」


 アルゴの声が大音量で響く。

 ドラゴンの声量は半端ないな。

 都市のどこにいてもアルゴの声が聞こえただろう。


 声と共に風が吹き荒れ、みんなの髪が乱れる。


『吠えてやれ』

「ギャーオォォォ!!!!」


 物凄くうるさい。

 城壁にいる魔導師の動きが慌ただしくなった。


 そして、城門が開いた。

 魔導師が降伏したわけではない。

 魔導師に協力してた市民が降参したのだ。


「突入!!!!」


 アルゴの号令の下、国軍が街に流れ込む。

 あとは国軍がなんとかするだろう。


 地下に潜る魔導師はいるだろうけど、そういうのは王家の影に任せる。

 俺の仕事は終わりだ。


「髪の毛なんとかして。アルゴがいると乱れっぱなし」

「ですわね。乙女の敵ですわ」

「タイトなら何か作ってくれるさ」

「ですね」


 えー、整髪料を作れと言うのか。

 無茶ぶりだな。

 油で良いんじゃないか。

 うんうん、それじゃ駄目なんだよね。


 ええと、熱で曲げて、ヘアスプレーで固めるというのが定番だけど。

 熱までは魔法で出来る。

 ヘアスプレーはないから油だな。


extern MAGIC *hair_assignment(void);

extern void thermal_deformation(MAGIC *mp);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp;

 mp=hair_assignment(); /*髪の毛を魔法として指定*/

 thermal_deformation(mp); /*熱変形*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 これをした後に油で固める。

 何回もやると髪が痛みそうだ。


 マイラはショートのストレートヘア。

 レクティは縦ロールに。

 セレンはウェーブが掛かったロングに。

 リニアはストレートのロングになった。


 一瞬で髪型が決まる魔道具は売れそうだ。


「結局、髪が乱れて、整えて終わりだった。ちょっと運動したい気分」

「マイラ、後始末は国軍に任せろよ。彼らの体面も考えないと」


「ですわね。いい女は働かなくても周りがお膳立てしてくれるというものですわ」

「蜘蛛は巣で餌を待つのが仕事だから分かるけど、獅子はこちらから仕掛けるものなの」

「あなたは豹だと思いますわ。死角から一撃ではなくて」


「二人とも喧嘩するなよ。あれっリニアがいない」

「リニアさんなら、街に入っていきました」

「しょうがない奴だな。俺達も中に入ろう」


 アルゴに待機するよう伝え、俺達は街に入った。

 街の中は焦げ臭い匂いと血の匂いがした。

 打ち捨てられた子供の死体。

 これだから、戦争は嫌なんだ。


 弱い者から犠牲になる。


「殺された人が誰に殺されたか調査しろよ」


 俺は一緒について来た国軍の士官に言った。


「了解しました。犯罪は取り締まるようにします」

「犯人が国軍だとしてもだぞ」

「はい、伝えておきます」


 全く嫌だね。

 俺は政治家には向いてないんだろうな。

 大事の前の小事なんて考え方は出来ない。

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