第236話 反乱と、空気の魔道具と、地方

 例の決行日になって、円卓の騎士は全て捕まった。

 事はこれで終わるかと思われたんだが。


「マイラ、偵察ご苦労様」

「街で魔導師が一斉蜂起してる」


 魔導師の奴ら、最終決戦するつもりらしい。

 下っ端の魔導師も全員が反乱に加わっている。

 ランシェが無能だったというより、この展開が読めなかった。

 まさか、5千人近くが蜂起するとはな。

 ランシェも3日で全員を逮捕は出来なかったようだ。


 今回の反乱の特徴は首謀者がこの場にいない。

 指示は全て通信魔法で行われている。

 口を割った魔導師がそう話した。


 当日まで班のリーダーさえ知らされていない。

 用心深い事だ。

 魔導師も後がない事が分かっているんだろうな。

 そりゃ、仲間が原因不明でばたばた死んでいけば、そう思うのも仕方ない。


 俺のせいかも知れない。

 ここは俺が何とかしないと。


 明るい材料は王宮が鉄壁の守りって事ぐらいだ。

 内通者もいない。


「魔導師を何とかしたい。知恵を貸してくれ」

「流石に私達でも3千人は手に余る」


 そうマイラが悔しそうに言った。


「うんうん、手あたり次第ぶちのめしても、どれぐらい掛かるか分かんない」


 諦めた様子のリニア。


「王都中にメテオ降らせて良いのなら対処できるけど」

「それは不味いな。民間の被害が大きすぎる」


 セレンの提案は受け入れられない。


「軍は不味いのでしょうね」


 思案しながらレクティがそう言葉を漏らした。


「軍は王宮の周りに配置してあって、正面衝突すると王都が灰燼かいじんに帰す恐れがある。それは最終手段だと思う」

「魔導師を野放しにしたツケが回りましたね」

「いまさらだよ」

「これでも数を減らした方だ」


「魔法で魔導師だけを皆殺しにしちゃえば良いのに」


 マイラは俺なら何とかしてくれると思っているようだ。


「それが出来れば、やってるよ」


 ウィルスは成功した。

 成功が今回の引き金だけど、とにかくウィルスをバージョンアップする方向で考えてみよう。


 魔道具に組み込むのは良いけど、それを魔導師に配布する時間がない。


「魔導師だけに効く毒があれば良いのですわ。そうすれば、王都の空気をそれで染め上げれば」


 そうだね。

 待てよ。

 配布。

 配らなくても、常に手元にある物。


 魔力だ。

 魔力に毒というかウィルスを付加する。


 そんな事が可能か?

 魔石を気体にすれば可能か。

 人体に魔石が毒で無い事は知られている。

 元はモンスターの体の中にあった物だからね。


 魔石を液体にする魔法は作った。

 それをいじくれば、簡単に気体にできる。

 その気体を魔道具にするのは簡単だ。

 そして、その気体に触れて、他の魔道具を起動させようとすれば終わりだ。


「よし、魔法は組めた。王宮のある全ての魔石をかき集めるぞ」


 ランシェの手伝いもあり、山と魔石が集まった。

 それを全部気体にする。


 王都全体が巨大な一つの魔石になった。

 そして、それに魔導師殺しの魔法を組み込んだ。


「じゃあ、偵察行って来る」


 マイラが王都の街に飛び出した。

 そして帰ってきた。


「ばっちり、罪を犯した魔導師は全員死んでる。残っているのは無害そうな奴だけ」

「よし、ランシェに言って、軍に制圧を任せよう」


 抵抗したりして、殺人を犯せば、気体の魔導師殺しが炸裂するだろう。

 混乱はすぐに収まるはずだ。


「あっぱれである。だが、今回使った手段は禁忌と致す。この場にいた者は全て忘れるように、いいな」


 ランシェにそう言われた。

 確かに条件で選別して殺すすべは危ない。

 この技術が他の人にも出来るようになると地獄が出現するだろう。


「民衆にはどう説明するの?」

「王家に伝わっている1度しか使えぬ神器を使った事にしておく。代償は魔石である。さすれば、魔導師殺しが始まる前に魔石を集めた言い訳にもなるのである」


 神器が失われたか貴族や他国は疑うだろうけど、王家には逆らわないと思う。

 逆らったら魔導師の二の舞いだ。

 問題は魔導師の頭目が生き残っている事だよな。

 こいつを何とかしない事には終わらない。


「大変です。地方でも魔導師の反乱が起きました」

「タイト、頼めるであるか?」

「さっきの技は使えないとなると、ちまちま対処しないといけないな」

「であるな。苦労を掛ける」


 今度はどんな手でいこう。

 行ってから考えるか。

 何か良い案が浮かぶかも知れない。

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