第233話 消火と、サイリスと、テロリスト

 学園に行くと、火の手が各所から上がっていた。

 ろくな事をしないな。


 火を消すのはダンスホール時にしたから、要領は同じだ。

 レクティとセレンとリニアに魔力を100万に増強する魔道具を渡す。

 プログラム的魔法でないとプールレベルの水は出ない。


 だが、渡しておいて損はないだろう。

 一番近い火事の現場に到着。


「任せて」


 マイラが何かするらしい。


「任せた」


 俺はそう言った。


「【井戸掘り】。ほら、ぼさっとしない。井戸から魔法で水を汲みだす」


「【水よ上がって来い】。水を作るのではなくて持って来るのね」


 セレンが水を汲み上げて消火し始めた。


「私が現場の全てに井戸を掘るから消火しなさい」

「マイラに従いましょう」

「悔しいけど、地下の水の流れは分からないから」


 5人で手分けして消火を行った。

 5倍のスピードでやれば早い。


 水を作るより汲み出す方が効率が良いか。

 確かにその通りだ。


 火元を断たないといけないな。

 放火犯を捕まえないと。


「わん」


 お前はサイリス。

 サイリスはリニアのペットゴーレムだ。

 モンスターの魂が入っている。


 リニアはサイリスを放し飼いしているのだな。

 もしかして、放火犯の場所を知っているのか。


 それにしても姿隠ししている俺を良く見つけたな。

 匂いなのだと思うけど。


 サイリスの後をついていき、怪しい男達を見つけた。

 俺は電撃魔法で痺れさせた。

 懐を探ると火点けの魔道具がある。

 手には油の瓶を持っていた。

 サイリスを疑うわけじゃないが当たりだな。


 あれっ、サイリスは?

 まあ良い、みんなと合流しよう。

 サイリスは捕まったりしないだろう。


 みんなを探すが、火事の現場にはいなかった。

 どこに行ったんだ。


 声を出して探したら姿隠しをしている意味がない。


「サイリス!」


 セレンの声だ。

 その場所に行く。


「セレン、どうした?」

「びっくりした。タイトよね。サイリスが怪しい男を教えてくれたの。やっつけたら消えちゃって」

「俺と同じだ。神出鬼没だな。みんなと合流しよう」

「ええ」


 次に見つかったのはレクティ。

 やっぱりサイリスを探してた。


 セレンとした会話をまたする。


 そして、マイラと合流して、最後にリニアと合流した。

 サイリスはリニアに抱かれて尻尾を振ってた。


「リニア、サイリスにお礼を言っておいてくれ」

「ええ、いいけど。どうしたの?」

「放火犯をサイリスが見つけたんだ」


 みんな頷く。


「お利口ね」


 リニアがサイリスを撫でる。


「よし、サイリス。怪しい奴を片っ端から見つけ出せ」

「わん」


 リニアがサイリスを地面に置く。

 サイリスが走り始めた。

 みんなで後を追うと、ある建物の前だった。

 ここは確か使われていない寮だったような。


 中に生徒がいないか確認しないと。

 まず、ソナー魔法で人の位置を探る。

 好都合な事に一ヵ所に固まっている。


「レクティ、中の様子を確かめてくれ。密偵がいるんだろ」

「お願いしますわ」


 レクティが声を掛けると、男が現れ建物の中に消えて行った。

 そして帰って来た。


「中にはテロリストしかいませんね」


 派手にやって良いらしい。

 セレンに花を持たせてやろう。

 活躍する機会が少ないからな。


「取り壊し予定だから、セレン派手にやれ」

「うん、了解。【メテオ魔法】」


 さあ、来るぞ。

 離れて経緯を見守る。

 1メートルほどはある石が、はるか上空から落ちて来て、建物を破壊した。


 土埃が収まったので、瓦礫をかき分け中に入る。

 男達の死骸が沢山あった。

 むごい死に方だな。


 だが、テロリストには容赦しない。


「サイリス、もういないか?」

「わん」


 サイリスは尻尾を振って動かない。

 どうやらいないようだ。

 よし、王宮に行くぞ。


 途中、店から略奪しようとして、自動迎撃の魔道具で石弾を食らう男達を多数見かけた。

 魔道具は役に立っているようだ。


 王宮が見えた。

 やっばり火の手が上がっている。

 騎士団はどうしたんだ。

 内通者がいるのかな。

 いるんだろうな。

 でなきゃこんな事にはならないだろう。

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