第225話 アリの巣ダンジョンと、スキルと、必滅矢

 演習旅行の季節になった。

 行くのはベークとリッツとベスとコネクタ。

 行ってらっしゃいと送り出した。


 俺達はアリの巣ダンジョンに行く事にした。


「レクティとセレンは前に出るなよ」


 入口で作戦会議をする。


「ええ、肉弾戦はマイラさんとリニアさんに任せます。毒も使えなさそうですし」

「流石に天井崩したら不味いよね。メテオ魔法は地下だと役に立たない。メテオ魔法って実は弱いのでは」


「前にも思ったんだけど、それって崩落魔法だよ。強いけどね。どんなイメージで魔法をやるの」

「天井を少し下に召喚するんだ。後は自由落下に任せる」


「魔力をそこに伸ばすのが大変そうだな」

「ええ、発動までに時間が掛かるわ」


「魔力を離れた場所に召喚出来ないかな。【魔力召喚、でもって点火】。駄目だ、召喚したら魔力の繋がりが切れた」

「【魔力召喚、点火】。出来たわよ」


 ほんとだ。

 離れた所に一瞬で火が出た。


「どうやったんだ」

「召喚する穴を閉じなきゃ良いのよ」

「なぬっ。【魔力召喚、点火】。駄目だ俺には出来ない。セレンはなんか特殊な訓練したか?」

「たぶん、だけど。物覚えが付かない小さい頃に、父が玩具を作ってくれたの。お椀を糸でつないだ玩具よ」

「お気に入りだったのか」

「覚えてないけど、片時も離さずに遊んでいたらしいわ。相手をする父と母が喋り疲れたと言っていたから」


 つながるという意識があるのか。

 2点間をどうにかする事が出来るのだな。


 となるとマイラは視線を含む動きの把握だな。

 ステータスが出ないので分からないが、スキルみたいな物があるんだろう。


 スキルの要素は無視して良いな。

 出来ない事は出来ない。

 いや待てよ、プログラム的魔法なら出来るか。

 後で試してみよう。


「じゃあ、セレンのメテオ魔法も完成だな。上空に石を召喚すれば良い」

「それじゃ当たらない気がするわ。誘導も付けないと」

「後で試してみろよ」

「ええ」


「いちゃついてないで入るわよ」

「そうそう」


 マイラとリニアが焦れたようだ。


「よし、入ろう」


 中に入るとアリの巣をグラスファイバーで覗いたかの様だ。

 縮尺が違うという以外はアリの巣穴だな。

 微妙に曲がりくねっている。


 おっと、アリモンスターが出て来た。

 マイラが死角から足を斬りつける。

 だが、硬い外殻を断ち切れなかったようだ。

 リニアが頭をもぎって止めを刺した。


 リニアに打って付けの場所だな。

 俺なら冷気の魔法を撃ち込むけどな。

 電撃でもいいような気がするけど。

 火は駄目だな、酸素が無くなる。

 空気タンクの魔法を使うのならそれもありだが。


 冷気が一番安全なような気がする。

 収納魔法に死骸を入れながら進む。


 マイラは2匹目でコツを掴んだらしい。

 関節を斬り裂くことが出来るようになった。

 レクティは団子を投げている。


 効くか試しているそうだ。

 アリにホウ酸団子は定番だけど、図体がでかい。

 2メートルはあるから、これに見合うホウ酸団子はかなりの大きさになるだろう。

 だが、毒には強力な奴もあるし、生態によってはカフェインだって毒になる。


 レクティよ、安全に退治する毒が見つかればいいな。

 セレンはというと拘束の魔法で無双した。

 なにせ魔力を伸ばす必要がないので、瞬時に魔法で拘束できる。


 俺の出番はなさそうだ。

 魔法でも作るか。


 『magical_power_hole_make();』の一行を魔法に追加すれば、魔力が移動できる穴が出来る。


 点火に組み込んでみた。

 やった離れた場所に瞬時に点火できたぞ。

 俺も誘導付きのメテオ魔法が作れるな。


 そんな事を考えていたら、3メートルはあるアリモンスターが出て来た。

 上位種かな。

 セレンの魔法で拘束され、マイラが足を斬り飛ばし、リニアが首を落とす。

 瞬殺だと言えるだろう。

 一連の作業が流れるようだ。

 連携がとれているな。


 わらわらとアリモンスターが現れる。

 レクティが団子を投げ、それを食ったモンスターは動きが鈍った。


「やっと効く毒を見つけました」

「猛毒じゃないだろうな」

「植物由来です。大量に摂ると毒ですけど、薬にも使われています」


 レクティのスキルはたぶん頭脳系だな。

 そんな気がする。


 俺のは何だろう。

 何となく分かった必滅矢だ。

 タンタルが使ってた。

 防御を無視する。

 仕組みまで分かってしまった。


 振動だ。

 矢は幻で攻撃の本体は振動だ。

 物理的に繋がっていれば、振動は伝わる。

 真空でもない限りはな。


 これの習得の訓練は振動する楽器だ。

 シンバルとトライアングルみたいなのを、やらされていた記憶がある。

 あれはスキル習得訓練だったのだな。


 魔法は伝授されてなかったが、スキルは存在するかもしれない。

 後で練習してみよう。

 今回の旅行は有意義だったな。

 発想があった。

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