第224話 説教と、罠と、ベッド

「話って?」


 寮の俺の部屋でリッツと会う。

 リッツは何事かと心配そうに俺に尋ねた。

 セレンがお茶を淹れる。


 みんなの視線はリッツに集中した。


「嫌だなぁ、みんなに見つめられると不安になります。あっこれお土産」


 渡されたのは豚の置物。


「もしかして、今日のラッキーアイテムか?」

「よく分かりましたね。今日のラッキーアイテムなんだ。贈り物すると、みんなハッピーになれるらしい」


「話は一つだ。ソレノが居ながら女と買い物してたな。まだハーレムを目指しているのか?」

「えー、心外だな。そんな事は、ないない。ソレノ一筋に決まってるじゃないですか」


「そうか。じゃあ行っていいぞ。釘を刺したかっただけだから」


 若干、不思議そうな顔をしてリッツが出ていく。

 豚の置物には魔石がはめ込まれていた。


 やっぱりね。

 魔道具を停止させた。


「どう思う。盗聴器を仕掛けるのにお土産だと言って渡すか」

「自然にやってましたわね。演技なら大したものです」

「体のどこにも余分な力は入ってなかった。自然体」


 レクティとマイラの意見は白か。

 盗聴器を解析して、盗聴している場所をレクティに知らせた。


「この盗聴器を使えないかな。例えば誰かにあげるとか。そして、その人物にたまに会いに行く。そこで偽情報を流す」

「すぐにばれると思います。ですが、駄目元でやってみるのもよろしいかと」


 レクティが賛成したのでそうする事にした。

 誰に渡すかな。

 私生活が分かっても被害がない奴。

 俺は魔道具を起動して、ベークの所に行った。


「これ要らないからやるよ」


 ベークは豚の置物を受け取り損なって落とし、慌てて豚の置物を拾った。


「ああ、もらっておく。お返しはまた」

「お返しは別にいいよ。金が無いんだろ」

「馬鹿にするな。良いアルバイトが見つかって裕福に暮らしている」

「そうか。とにかくお返しは要らないから」


 ベークに悪い事したかな。

 少し罪悪感がある。

 許せベーク。

 部屋に帰るとレクティが部屋にいた。


「やはり、気づかれまたね。盗聴者は姿をくらましました」

「あんまり期待してなかったからいいや。ベークに彼女でも紹介してやろうかな。レクティはどう思う」

「ええと、みんな嫌がると思います」


「そっか、嘘の彼女でも良いんだけどな。しばらく喜ばせて、綺麗に別れる。できるだろ」

「できますけど」

「頼むよ」

「仕方ありませんね」


 そして、何時間か経って、レクティがやってきた。


「彼女は要らないそうです。断られました。もう彼女はいるそうです」

「彼女は元婚約者の一人だったりしてな」

「ベークならありえそうです。複数婚約者がいても不思議はありません。調べますか」

「ベークの事はそっとしておこう。振られたら紹介してやれば良い」


「ちわー、家具屋です。キングサイズのベッドをお届けに参りました」


 そう言って男が入ってきた。

 マイラが通したんだろ。


「この部屋に置いてくれ」

「へい」


 4人掛かりでベッドが運ばれた。


 男達が去るとセレンの手で、シーツが敷かれ、マイラが飛び乗る。

 そして俺を手招きした。

 俺はリニアに運ばれベッドの上に乗せられた。


「ちょっと」


 服を剥かれてないから、まだ安心だ。

 でも4人全員がベッドの上に上がってきた。


「殿、お覚悟を。お情け頂戴ませ」

「マイラ、冗談だよね」

「うん、冗談」


 もっかの敵は4人の婚約者。

 一戦交えるわけにもいかない。

 身内というのはかくも扱いが難しい。


 今は4人の関係は良好と言えるだろう。

 だが、何かのはずみに敵に回る事もあるかも。

 身内が潜在的な敵。


 嫌な考えだ。

 だが、考えてしまう。


 4人に包まれて寝る。

 まだ早い時間なのに寝入ってしまった。


 夜中に起きて、心の中で何かが引っ掛かった。

 今日の出来事で何か重要な事があった気がする。

 夢の中で謎が解けたんだ。

 何の謎だったかな。


 何だろ。

 駄目だ、思い出せない。


 前世の記憶は思い出せるのに、現世の記憶は忘れることがある。

 謎も解答も思い出せない。


 完全記憶が欲しかったな。

 まあ良いや。

 寝直そう。


 4人とキスをしてから寝た。

 これで変な夢は見ないだろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る