第213話 オルタネイト邸と、スパイと、魔導師チェック

 休日、4人の婚約者と共にオルタネイト邸に出かけた。


「紹介するよ。マイラは知っているから、こちらがセレンで、こちらがリニア」

「ようこそ。君達に会いたかった。マイラ嬢とも一度世間話をしてみたかったんだ」

「タイト様、庭園をご案内します」


 レクティがそう言って俺を庭園に案内してくれた。


「オルタネイト伯が、マイラに興味を抱くのは分かる。リニアとセレンは何でかな」

「あなたの周りには異才の持ち主が集まるようですから、気になったのでは」

「がっくりしなきゃいいけど」


「うっ」


 女性の使用人が倒れた。

 俺は駆け寄って脈をとった。

 死んでる。


 レクティが持ち物を調べる。

 あの魔力アップの魔道具があった。

 ウィルスで死んだな。


「たぶん、だけど魔導師だ」

「その根拠は?」


 いかん、うっかりウィルスの事を喋りそうになった。


「勘だ」

「身元を詳しく洗ってみます」


 レクティがハンドサインを出すと、男が現れた。

 レクティが色々と指示を出す。


 オルタネイト邸にもスパイが入り込んでいるんだな。


「嘘判別の魔道具を作れるけど使う?」

「全員の面接は不味いですね。一網打尽には出来ますが、泳がせた方が色々と都合が良いと思います。見ただけで、判別できるような物は作れませんか」


 うーん、バックアップの有無は調べられるけど、決定打ではない。

 魔力量を調べるのも本人の許可がないと。

 健康診断の魔道具を作って、それに魔力量のチェックを組み込めば、解決するけどね。

 ただ、魔力量だけだと、決定打にはならないんだよな。

 貴族の血筋だと、多い事も考えられるから。


「現状では難しいな」

「そうですか。魔法も万能ではありませんね」


 魔導師かどうかだけの嘘判別の魔道具を作って、結果を光とかで報せるとかは出来るな。

 小説で門番が使っている犯罪者を見分ける水晶みたいな感じには出来るが、どうやって使わせるかが問題だな。


 そうか、火点けとかの生活用品の魔道具に組み込んだらいいのか。

 報せる光は赤外線か紫外線にすれば、見えない。


 これなら本人は分からない。


 if(liar_checks("魔導師か?",str)=='Y'){ /*魔導師か判別*/

  mp=uv_light_make(0.000001); /*紫外線生成*/

 }


 これを追加しておけば良い。

 紫外線にしたのは、赤外線だと暖かいからばれる危険性があるからだ。

 紫外線の方がより隠密性が高い。


「出来そうだ」

「ほんとですか」

「ああ」


 魔導師あぶり出しの魔道具を作った。

 水を出すやつとか、火点けとか、照明とか、掃除とか、洗浄とか、今まで作った生活用の魔道具に全て組み込んだ。

 紫外線が見える魔道具を俺とレクティが装着する。

 前に赤外線ゴーグルは作ったから、それの紫外線版だ。


 生活用魔道具を配りながら使用人に使わせる。

 魔導師がいるな、丸わかりだ。


 レクティの部下にも使わせて、魔導師チェックをする。

 部下には魔導師はいないようだ。

 レクティの部下に紫外線ゴーグルを配備した。


 ランシェにも後で送ってやろう。

 王宮にもスパイが沢山いるはずだ。


 オルタネイト伯の所に戻る。


「どうだった。親睦は深められた?」

「オルタネイト伯はいい人ですね」


 とセレンの感想。

 マイラとリニアはそれをニヤニヤして見てる。


 二人とも正体を知っているわけだ。

 まあ、良い人には違いないか。

 王国の現状を憂いて、いろいろとやっているみたいだし。


「そうだね。立派な人だ」

「タイト君に褒められるとむず痒くなる」

「けなせませんよ。お義父とう様ですから」

「はははっ、裏でどんな事を言われてるやら、恐いね」

「言ってませんよ」


「けちである事は確か」

「マイラ君は手厳しいね。充分に特許料を払っていると思うんだが」

「最近、下がってきた」

「コストを削減しないと、やっていけないんだよ。苦労を分かってほしいな」


「私はいい取引が出来きたよ」

「リニアが売る物があるのか」

「アリの外皮を少しね」

「ああ、アリの巣ダンジョンの奴か」


「あれは良い素材だ。金属より加工し易くって、皮より頑丈だ」

「入れる許可は私の物だから」


「独占出来るのは美味しいよな」


「みんなお金持ち。私だけが」

「セレンも何か見つかるさ。それにそんなに必死に稼がなくて食っていくだけあれば良い。結婚したら不自由させないよ」


 リニアはなかなかやるな。

 アリの外皮をオルタネイト伯に売り込むとは。

 レクティとの付き合いもあるから、露骨に値段を下げられたりしないだろう。

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