第214話 剣技大会と、負け犬と、ベーク死す
そうそう、ベークはやっぱりアルバイト仲間の一人と揉めたらしい。
アルバイトが出来なくなったようだ。
やっぱりな。
良い奴ばかりじゃないのが世の常。
泣きついてきたので、魔道具作りの内職を紹介しておいた。
魔力が多いので動作チェックできる数も多い。
それなりに稼いでいるらしい。
だが、やっぱり主婦と揉めた。
魔力量はあるので、元締めが取りなしたようだ。
取り柄があって良かったな。
魔法学園、恒例の剣技大会の始まりだ。
俺は出ないよ。
脳筋じゃないからな。
魔法ありならワンチャンあるかもだけど、魔法なしじゃね。
おも研では唯一ベークが出る。
「ベーク、去年の優勝者の手ほどきを受けたくはないか?」
「無料なら」
「マイラ、リニア、出番だ」
「よわい、激よわ、超よわ、神よわ、どれが良い」
「普通の弱いで」
ベークとマイラが修練場の舞台に上がる。
そして対峙した。
「始め」
リニアの合図と共にベークが木剣をマイラに打ち込む。
マイラはベークの死角に消えた。
「ほぇ」
マイラに足を掛けられ、ベークは無様に転がった。
「くそう」
「今度は神よわで、もう一回やる?」
「馬鹿にしやがって。何でも良い、やる。このまま引き下がれるか」
「早く立って構えなよ」
「始め」
マイラがゆっくりと木剣を動かす。
そして、ベークの首筋にぴたっと押し付けられた。
「あれっ。剣が消えた」
「魔法とか言ったら、ボコボコにするから」
まあ、なんとなくわかる。
瞬きしたんだろう。
ただ、ベークのその瞬間をマイラが把握しているのが凄い。
少なくても神よわではないな。
「なんで勝てないんだ」
「じゃ、次は私ね」
リニアとベークが対峙する。
「始め」
マイラの合図と共に、リニアの剣が消え、ベークは剣を落とした。
剣を高速で叩かれたのだろう。
「えっ」
「手加減はした」
「くそっ、どいつもこいつも。タイト、お前に対戦を申し込む」
「仕方ないな。相手をしてやるよ」
「始め」
マイラの合図に俺は剣を振りかぶって普通に軽く打ち込んだ。
ベークが受けて鍔迫り合いになる。
俺は手加減して、押した。
ベークは二転三転、転がった。
実は身体強化の魔道具を使ってた。
悪く思うなよ。
普通にやったら良い勝負だと思うが、会長の面目もあるからな。
「くそう。セレン嬢、お願いします」
「その心意気よし」
セレンとベークが対峙する。
「始め」
セレンとベークは普通に打ち合っていたが、セレンの剣の速度が徐々に上がる。
「ちょ」
なすすべなく、何回もベークは打たれた。
セレンは少し恨みに思ってたのかな。
「勘当を解いてもらう予定だったのに。辞めた。もう辞めた」
ベークは剣技大会で優勝して勘当をどうにかしてもらうつもりだったらしい。
そんなに上手く行くはずがない。
「やーい、負け犬」
マイラは色々と酷い。
「僕って、実は駄目な奴」
すっかり自信を失った。
「魔力量はあるんだからそれを活かせよ。いい仕事を紹介してやる」
「話を聞かせてくれ。報酬によっては受けよう。ただし、僕の美学に反する依頼は駄目だ」
殺し屋が言うような台詞を言ってくるな。
「アリの外皮の加工だ。魔法で包丁の柄を作る作業だ」
「美しくない仕事だ」
「選り好み出来る立場にないだろう」
「セレン嬢と一緒ならやる」
こいつ、セレンをまだ諦めてなかったのか。
「セレン、言ってやれ」
「お断りよ。仕事に貴賤をいう人は嫌い。能無しも嫌い」
「ぐはっ」
「ついでに貧乏と不細工も嫌い」
マイラが追い打ちを掛ける。
「ぐはぁ」
うなだれるベーク。
「ベークが死んだぞ。ベス衛生兵、回復魔法を」
リッツがそう言った。
「こんなのは斜め45度チョップで治るわよ」
ベスがベークの頭をチョップする。
「やったな。次はベス、お前と対戦だ」
「私、強いわよ。マイラ先輩とリニア先輩ほどじゃないけど。セレン先輩とは良い勝負かも」
「じゃあ、リッツとやる」
「ふふっ、神狼剣の奥義を見せてやろう」
「じゃあ僕は、貴族剣、奥義。金貨スラッシュだ」
「金貨、持っているの?」
「いやない」
「じゃあ不発だ」
「貴様、運のいい奴だ。今回は見逃してやろう」
ベークも打ち解けてきたな。
すっかり、仲間の一員だ。
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