第202話 猫と、スパイと、魂の大きさ

 エレクが友達猫を連れて来た。

 茶トラで可愛いな。

 自動迎撃魔道具の攻撃リストを更新しないと。


 猫達が戯れるのをしばらく見て癒された。


「視線を感じる」


 マイラが突然そう言った。


「どこから?」

「その猫から」


 くそっ、魔導師め。

 猫を利用するなんと許せない。


 でも、マイラの気のせいかも知れない。

 猫って人間を観察するような時があるから。

 確かめないと。


 追跡魔法は前に作った。

 エレクでテストしているから、今回も大丈夫だろう。


 茶トラ猫の魔力の痕跡を追う。

 問題は茶トラ猫と魔導師が接触するかだ。

 生徒が犯人だった場合は特定は難しいな。


 茶トラ猫は寮に何度か寄った。

 餌をもらったりしている。

 会った人間の誰かが犯人なのか。

 分からん。

 くそう、犯人探しが難航するとはな。


「マイラ、今までの生徒で怪しい人はいた?」

「ううん、いない」


 マイラの勘だけが頼りだ。

 茶トラ猫の追跡は続く。


 茶トラ猫がある女生徒の前で止まる。


「怪しい」


 マイラのレーダーに引っ掛かったようだ。

 だが、確信が持てない。

 何気ないふりして話をしてみようか。


 俺とマイラは女生徒の所に近寄った。


「猫、可愛いな」

「あなたも猫が好きなのね」

「うん、エレクという白い猫が家族だ」


 ええと話のきっかけはなんとかなった。


「この猫はあなたが飼っているの?」


 マイラが尋ねる。


「いいえ、寮長が猫アレルギーで飼えないのよ。この子はたまに餌をあげているわ」

「そう、それは残念」


 さて、ここからどうする。

 マイラの勘だけでは、なんともな。


 茶トラ猫が俺の足元にすり寄ってきた。

 なんの気なしに俺は茶トラ猫を抱き上げた。

 そして首筋をかいてやった。


「あひゃひゃひゃ」


 女生徒が突然笑い始めた。

 うんっ?


 ああ、使い魔と感覚を共有しているんだっけ。

 五感を共有していれば首筋をくすぐられれば、そりゃぁね。


「マイラ、確信した。こいつが犯人だ」


 マイラが女生徒の死角に潜り込み、後頭部を殴打して意識を刈り取った。

 使い魔の魔法にこんな弱点があるとはな。


 マイラが女生徒の持ち物を漁る。


「手加減したのに、死んでるよ」


 俺は女生徒の首筋に手を当てて脈をとった。

 本当だ。

 死んでいる。


 口をこじ開け、毒感知の魔法を使う。

 反応があった。

 毒を飲んだのか。

 いいや、殴った時の衝撃で、飲んでしまったのかも。

 くそっ、勿体ない事をした。


 後始末を王家の影に頼んだ。

 とりあえずの他の猫対策は、リビング以外の部屋には自動迎撃を設置して、リビングでは重要な話をしない事にした


 使い魔は厄介だな。

 だが、訓練出来る動物は限られている。

 何とかなるだろう。


 茶トラ猫は俺に懐いた為、一時的に保護する事にした。

 後で飼い主を探してやらないと、元締めやレクティの関係は駄目だな。

 再び使い魔にされると秘密が漏れる可能性がある。

 俺達は茶トラ猫の絵を描いて、飼い主募集のポスターを作った。

 とりあえずはこれで良いだろう。


 使い魔になっているかの判別魔法を作る必要があるか。


 使い魔は一時的に魂が二倍になっているから、その線から判別しよう。


int main(void)

{

 int file_size=0; /*ファイルのサイズ*/

 FILE *fpi; /*入力の定義*/


 fpi=fopen("神秘魔法名.soul", "rb"); /*魂を開く*/

 fseek(fpi,0,SEEK_END); /*ファイルの最後に移動*/

 fgetpos(fpi,&file_size); /*ファイルのポジションを獲得*/


 fclose(fpi); /*閉じる*/

 return(file_size); /*魂の大きさを返す*/

}


 これで魂のサイズが分かる。

 サイズは個人差があるけど、猫の標準はエレクを参考にしよう。

 犬とか出て来たらその都度サンプルを集めればいいや。

 神秘魔法名の獲得は散々やったから、そのソースを合体させて完成だ。


「魂の大きさを調べる魔道具を作った。利用してくれ。あからさまに大きい動物がいたら使い魔だ」

「そんなの無くても分かる」

「分かるのはあんただけよ」


 リニアも分からないらしい。


「部下の分も欲しいのですが」


 レクティ部下と王家の影には渡しておくことにしよう。


「私も気になったら調べるよ。でも動物まで疑うのは嫌だな」


 とセレン。

 俺もそう思うが、敵が使ってくるのだから、仕方ない。

 これで使い魔対策は良いと思う。

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