第199話 選挙と、解析と、盗聴器

 生徒会選挙が始まった。

 もちろん俺はカソードを支持している。

 今回はカソードに対しての有力な対抗馬はいないようだ。


 ビラを作ったりして、手伝ったが他はする必要がなかった。


 ある候補が、無料で魔道具を配り始めた。

 冷暖房の魔道具だという。

 そんな高い物を配ってよく金があるな。

 俺なら安い魔石で同じ性能の物が作れる。


 戦いを仕掛けるにも相手を知らないとな。

 俺は配っている魔道具をいくつか手に入れた。

 魔道具に適当な神秘魔法名を割り振る。

 そこで解析魔法の出番だ。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>


void main(void)

{

 system("debug モチキニソカララリ.exe"); /*魔道具に対してデバッグコマンドを起動*/

}


 『u』を入れてと。

 解析できたぞ。

 『debug』は一部環境でしか使えなかった。

 最新のウィンドウズ環境では廃止されたコマンドだ。

 だが、使えたんだな。


 世界に対して意味が伝わったという事だろう。

 解析の結果。

 この魔道具は冷暖房以外に盗聴の機能が持たせてあるようだ。


 たぶん、魔導師の仕業だな。

 さて、どうしよう。

 事実を公表しても証拠がない。

 より高性能の冷暖房魔道具を配布しても、駆逐は出来ないだろう。


 盗聴結果を受け取っている人物の神秘魔法名は判明している。


 人探しの魔法を作るべきだな。

 前に作ったのを改良して起動させた。

 神秘魔法名を入力。

 その人物の居場所が分かる。

 おあつらえ向けに、全員が固まっているようだ。

 おまけに王都の外だ。


 俺はその場所に行ってみた。

 なんの変哲もない小屋が建っている。


 100万魔力の火球を放った。

 小屋が灰になり、地面が凹んだ。

 どうやらアジトは地下室だったようだ。


 中にいた人物は全員が灰になったようだ。

 この場所の神秘魔法名を確認したから、生き残りはいないと思われる。


 魔道具の配布が止まった。

 魔導師側がアジトの壊滅に気がついたのだろう。


 同じ方法では盗聴は無理だと悟ったに違いない。


「どこに出かけたの?」


 マイラに聞かれた。


「ネズミ狩りさ」

「誘ってくれたら良かったのに」

「魔法1発でケリがついたから、とるに足らない事さ」


「カソードの対抗馬はハウスキーパーをただで派遣するみたい」


 あー、盗聴器を設置するつもりだな。

 でもこれは対処できる。

 魔道具を停止させる技術が俺にはあるからだ。

 寮の部屋を回るのは大変だな。

 そうか敵と同じ事をすりゃあいい。

 ハウスキーパーを派遣して魔道具を停止させればいい。


「レクティ、頼みがある。ある魔道具を持ってハウスキーパーをやってくれ」

「配下にやらせれば、いいんですよね」

「そうだ」


 これで問題はないな。

 次はどんな手に出てくるかな。

 またハウスキーパーを派遣して盗聴の魔道具を再起動してくるかな。


「怪しい魔道具を回収しました」


 レクティがそう報告してきた。

 ナイスだ。

 魔道具を解析。

 神秘魔法名を割り出し、位置を把握する。


 アジトの位置を割り出し、レクティの部下が強襲する。

 ハウスキーパーの派遣もしなくなった。


 いよいよ種切れらしい。

 対抗馬に目立った動きがなくなった。

 こっちはハウスキーパーを続けている。

 怪しい魔道具は見つけ次第集めている。

 部屋の人間に確認を取っているから間違いがない。

 漏れもあるだろうけど、魔道具の停止も行っているから、こちらの方が上手のはずだ。


「相手の工作員はいなくなりましたね」


 寮のと部屋でレクティが話し掛けてきた。


「まあな。通用しない手にしがみついたりしないさ。受け手の身元がばれる盗聴器なんて欠陥品も良い所だ」

「魔法陣ラジオを改良すれば盗聴器は作れますね」

「まあな。でも誰でも受信できると、それはそれで対抗策が産まれる」

「絶対ばれない盗聴器は出来ないものですか」

「無理だと思う。人間の作った物に完璧はない。生き物だってどこかに欠陥を抱えている。だから神が作っても完璧はないんじゃないかな」

「ですね」


 この世界の魔法システムにもバグはあるんだろうか。

 ふとそんな事を考えた。


 この魔法システムは誰が作ったんだ?

 古代人が作ったにしては完成度が高すぎる。

 神かな。


 俺の保有魔力を際限なく増やせば、この世界を壊す魔法もできる。

 やらないけどな。

 やると神が止めるんだろうか。

 この考えは忘れた方がいいような気がする。

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