第197話 的当てと、コツと、対戦
3人の新入生ともなれて、学園は順位戦の準備でそわそわしているような気配だ。
「さて、予選は的当てだが、どうだ」
「俺は劣等生だから、ちょっと自信が」
「出来たばかりの彼女も応援に来るんだろ。頑張れよ」
まあ、頑張っても情報を集めたら別れる運命だ。
密偵の心を溶かす事が出来れば別だけどね。
「やってやるぜ。【火球よ飛べ】」
リッツはスペルブックを開き、短縮詠唱した。
火球が出来のろのろと飛んで行く。
そして的を外して後ろの壁を焦がした。
「よく、試験に受かったな」
「あの日は絶好調だったんだ」
「日によって波があるのか? そんな奴もいるんだな」
呪文は補助だ。
魔法が事故防止搭載の車だとすると、人間の運転は魔力操作とイメージで、事故防止の部分が呪文で補助というわけだ。
俺のプログラム的魔法は、自動運転の車みたいな物だ。
好調の波が少ない。
だから、魔法を失敗した事は1度もない。
この機械の自動操作の部分を大きくすることが必要だな。
「よし、呪文の改良だ」
「どうやったら」
「呪文を【魔力10で火球を生じさせ、飛ばせ】と現在なっているな。これじゃ駄目だ。スペルブックがせっかくあるんだからもっと詳しく書かないと」
「どんなふうに」
「【魔力10を用いる、そのうち5は燃料に、そのうち1は酸素を送り込め、そのうち1は温度を上げろ、そのうち3は風で炎を運べ】こんな具合かな。風で運べという所も改善の余地がある。どうやったら風で早く正確に運べるか考えるんだ」
「原理と発想が大事なんだ。ありがと、コツが少し分かったよ」
「火がなぜ燃えるのか考えるといい」
リッツが呪文を考え始めた。
どうやら出来たようだ。
「【火球よ飛べ】。今度はどうだ」
さっきより早い速度で炎も安定している。
今度はちゃんと的に当たった。
コネクタの方を見ると、石弾を飛ばしている。
まずまずの腕だ。
スピードと命中率が上がれば言う事なしだ。
回転と加速だな。
銃身のライフルリングとレールガンの加速があれば言う事なしだ。
ベスの方を見ると、石弾で散弾を飛ばしていた。
これなら命中率は関係ないな。
複数の物体を同時に操るのは高等技術なのになかなかやる。
速度を何とかするなら、火薬なんだけど。
火薬の技術は伝えたくない。
となれば空気の圧縮だな。
「コネクタ、ベスは空気の圧縮を呪文に付け加えると良い。圧縮した空気で弾を押し出すんだ」
「なるほど」
「魔王ともなると違いますね」
「それと回転だ。回転があった方が軌道が安定する」
「参考になります」
「複数を回転させるのはちょっと」
「ベスの散弾はそのままでいいかな」
コネクタとベスの魔法も改善された。
これなら予選はどうにかなりそうだ。
的当てがなんとかなったので、対戦形式で模擬戦をする。
まず、俺とリッツが対戦する。
マイラの始めの合図で、リッツが火球を放つ。
俺は水の盾でそれを受けた。
水の盾から別れて、水弾がリッツに飛ぶ。
リッツはパニックになった。
水弾は濡れても有効打とは認められない。
衝撃で吹っ飛ばされればそうでもないが。
慌て過ぎだ。
実戦に慣れてないな。
もっとも水で濡らしたら、電撃を放つけど。
「降参します。動きながら魔法が発動できない」
「反復横跳びしながら、魔法を放つ練習をしたら良いよ」
「そうしてみる」
「次はコネクタだ」
マイラの開始の合図で俺は石の盾を作った。
コネクタは石弾を撃ってくる。
俺は石の盾で防御しながら、殴りにいった。
なすすべなくシールドバッシュを食らうコネクタ。
勝者タイトとマイラが宣言する。
「コネクタが負けたのは搦め手を持ってないからだ。盾で押してきたら、上とか横から攻める。基本だ。石だと上からの落下で攻めるのも良い」
「なるほど」
「盾どうしで鍔迫り合いするのでも良い。とにかく攻撃方法は複数だ」
「分かった」
「次はベスだな」
マイラの開始の合図でベスは石で俺の足を固めにきた。
うむ、なかなかやる。
俺はジャンプして浮遊する板の上に乗った。
ベスが石の散弾で攻撃。
石の板から飛び降りて石の盾で守った。
ベスが石の塊を俺の頭上から落下させる。
バリアの魔道具でそれを防ぐ。
磁力の筒のレールガンで金属弾を撃ち出す。
ベスはその速さになすすべなく撃ち抜かれた。
勝者タイトのマイラの声。
「最後の一撃は卑怯よ。何であんなに速いの」
「加速させたからだ」
「どうやって」
「そこは企業秘密だな」
ベスが一番強いな。
コネクタより年下なのに同時期に入学してきただけの事はあるか。
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