第194話 新年と、入学式と、婚約指輪

 新年が来た。

 俺は9歳になった。

 マイラは13歳。

 レクティとセレンは15歳だ。

 リニアは19歳ぐらいだと思うが、歳をとらないから分からない。

 本人、いわく永遠の17歳だそうだ。


 そして、入学式がやって来た。

 新入生の中に見知った顔を見つけた。

 エミッタの弟妹達だ。

 たしか、コネクタとベスだったな。

 コネクタが13歳で、ベスが12歳だな。

 エミッタ、コネクタ、ベスの順番だと聞いている。


 二人とも小柄だ。

 コネクタが黒髪で、ベスが青みが掛かった髪だ。

 ベスの胸は平たい。

 ここはエミッタとは違うな。

 エミッタはグラマーだった。

 おっと女性の胸についての話は禁句だな。

 視線が死線にもなりうる。


 話してみようか。


「会った事があるよね。エミッタの弟妹さんだよね。おも研の会長をやっているタイトだ」

「覚えてます。順位戦の時の」

「お姉ちゃんがお世話になりました」


「凄いね。二人とも入学?」

「はい」

「ええ、頑張りました」


「分からない事があったら何でも聞いて。力になるよ」

「よろしくお願いします」

「はい、お世話になります」


 二人とも硬さがある。

 そういうのは時間が経てば、なんとかなるだろう。

 おも研に入るのかな?


 賑やかになると嬉しいな。


「きゃあ」


 悲鳴が上がる。

 新入生が倒れた。

 貧血かな。


「死んでる」


 ええと、見た感じ外傷はないな。

 俺は腰に魔力アップの魔道具を付けられているのを確認した。

 もしかして、犯人は俺。


 魔導師ならそうだろう。

 そして重罪を起こしていなければな。


 ランシェが率いている影の一員が横に立っていた。

 びっくり、させるなよ。


「後で話があるようです」

「分かったと伝えろ」


 式が終わって、ランシェがいる控室に入った。


「さあ、吐くのである。一連の魔導師殺しはお前の仕業であるな」

「何の事かな」

「惚けるのであるか」

「証拠は?」


「情報屋であるな」

「辿れないはずだけど」

「匂いである」

「匂い?」


「お前は知らんと思うが、情報屋の一人は影の一員なのである」

「くそう、元締めの野郎。ドジ踏みやがって」

「いくつか情報屋を使ったようであるが、今のところは魔導師にばれてはないようであるな」


「で魔導師殺しで逮捕するのか」

「殺しの手口は何であるか?」

「魔道具に嘘判別とランダムタイマーで発動する即死を仕掛けた」

「即死の種はなんであるか?」

「魂を消した」

「証拠を残さない手口であるな。よかろう許す。大儀である」


「ランシェならそう言うと思ったよ」

「では行ってもよいぞ」


 ランシェにばれてしまった。

 まあ、支障はないというか。

 もうサイは振られている。

 魔道具を回収などいまさら出来ない。


「タイト、探したのよ」


 マイラが現れた。

 俺を探していたらしい。


「何かあったのか?」

「入学式殺人事件、その噂で持ち切り」


 俺の仕業だと思うが、病気という線もあるな。

 心臓とか脳とかだとMRIみたいな物がないとわかりづらい。

 解剖すればその限りではないが、遺族がたぶん許さないだろう。


「医者の診察はどうなんだ?」

「原因は分からないけど、病気だろうって。毒なら苦しむはずだから。外傷も無いようだし」


 ますます、俺の仕業の可能性があるな。

 どうやら、俺は天国には行けそうにない。

 地獄確定だな。

 それとも重罪人をあの世に送って賞賛されるのだろうか。


 転生する時、神様には会わなかったな。

 死後の裁きも受けてない。


 まあ良いか。

 死んだ後の事を考えても仕方ない。


「急にぽっくりく病気はあるさ」

「そうね。後悔しないように生きないと」

「今するのなら、何がしたい?」

「うーん、デートしたい」


「じゃあ、5人で行くか」


 新人勧誘の為に、みんなと合流した。

 そう言えば婚約指輪はどうするんだ。


「レクティ、貴族は婚約指輪とか用意したりする?」


 俺は話し掛けた。


「婚約のプレゼントは用意しますけど、指輪だとは決まってません」


 うーん、何が良いだろう。

 4人、別々の物を用意すると差別になる恐れがある。

 無難に指輪でいいな。


 石の中にいるという即死攻撃を防ぐ魔道具を作ろう。

 それを指輪にするか。

 石の即死攻撃を防ぐ魔道具は簡単だ。

 自然界の魔力を自分の魔力波長に染めて放出すれば、バリアになる。


 さっそく、取り掛かるとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る