第180話 掃除と、臭い消しと、女の魅力

 カジノから帰ってから、セレンとリニアがぶーたれている。

 夏休みなのに二人とも学園から出ないのか。

 何も寮にある俺の部屋に来なくても良いのに。


「じゃあ、旧バリアブル邸、今はバラクタ邸にでも行くか」

「いくいく」

「いきましょ」


 あそこはタイトにとってろくな思い出がない。

 でも、思い出というのは塗り替える事が出来る。

 つらい思い出も、楽しい思い出で、上書きしてしまえばいい。


 マイラとレクティを加えた5人で、バラクタ邸に入った。

 使用人は最低限なので、掃除が行き届かない部屋もある。


 俺達は泊る部屋の掃除から始めた。


「くふふ、勝った」


 得意げなリニアの顔。

 何の勝負なんだか。

 確かに掃除は肉体労働だが。

 魔法があるんだよ。

 深夜、風呂に入りたくなくて作った汚れ消去魔法だ。

 今も時たま使っている。


 それと臭い消去魔法だ。

 こんな感じの魔法だ。


char smell[100]; /*臭い百立方センチ*/

extern MAGIC magic_make(char *target_obj,int target_size,int image);

extern void magic_delete(MAGIC *mp);

extern void mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=magic_make(smell,sizeof(smell),IMAGEUNDEFINED); /*臭いを魔法として登録*/

 magic_delete(mp); /*臭いを消去*/

 mclose(mp); /*魔法を終わる*/

}


 これを汚れ消去魔法と合わせると、風呂に入ったよりも気持ちいい。

 俺は自分の部屋をピカピカにして臭いを消した。

 匂いがないと寂しいので、いい匂いのする花を選んで花瓶にける。


 マイラが俺の部屋に顔を出した。


「タイト、凄い」

「ピカピカだろ」

「私の部屋にもやって。埃がなかなか集まらないの。ほうきで掃くとふよふよと散らばるし」

「いいよ」


 マイラの部屋に入って。


「【汚れ消去】【匂い消去】。どう、凄いだろ」

「うん、凄い」


 マイラに連れられてリニアの部屋に入る。

 体力無限のリニアはテキパキと掃除していた。


「マイラ、もう終わったの」

「楽勝よ」


「くっ、悔しい」

「マイラの部屋は俺の魔法で終わらせたよ」

「なんだ。ずるしたのね」

「いいのよ。ダーリンに手伝ってもらうのは、ずるに入らない。悔しかったらタイトに頼むのね。ただし、頼むと家事ができないって烙印を押されるかも」

「あんたも一緒じゃない」

「私は財力があるから。今は使用人は雇ってないけど、10人ぐらい屁でもないわ」

「くっ、言い返せない」


「【汚れ消去】【匂い消去】。はい、終わった」

「やーい、家事失格」

「マイラ、煽るなよ。リニア、手を抜く所は抜いた方がいいぞ」


「そうね、ダーリンにやってもらっちゃった。えへっ」


 セレンの部屋に行くと、セレンは埃と格闘してた。


「セレン、魔法を使ったらどうだ?」

「風の魔法を使ったら余計酷くなったのよ」


「埃を魔法として認識して、それから消すんだよ」

「なるほどね。埃を認識って難しいわね。石だと一つだから簡単なのに、埃だと難しいわ」

「埃を一つの集合体だと認識するんだよ」

「やってみる。【埃の集合体よ消えろ】。やった! 消えたわ!」

「簡単だろ」


 セレンが魔法を使い始めたので、最後にレクティの部屋に行った。

 レクティは掃除を終え、優雅にお茶を飲んでいた。


「くっ、負けた」


 うなだれるリニア。


「レクティはどうやったんだ?」

「部下にやってもらいました」


 レクティは、しれっと言った。


「くっ、かねなの。戦闘力は役に立たないの」


 リニアが更にうなだれる。


「戦闘力でも負けたつもりはないけど」

「そうね。わたくしも何でもありなら、リニアさんに勝てますわ」

「くっ、屈辱」


 セレンがやってきて、流れている雰囲気が掴めなくて、口を挟もうか迷っている。


「戦闘力は重要じゃないわ。金も重要じゃない。心よ。愛情が大切よ」

「それも負けてない」

「わたくしもですわ」

「何かわからないけど私も」


「タイトに決めてもらいましょ。女の魅力は何?」


 マイラがそんな事を言い始めた。

 何だろうな。

 考えた事がなかった。

 マイラのどこが好きなんだろ。


 前にマイラを豹に例えたけど、野生の魅力っていうのかな。

 そういうのかな。


「自分にはない部分に惹かれるかも」


 4人は考え始めた。

 そして納得したらしい。

 誰も自分が負けたと思ってないようだ。

 顔つきがそう言っている。

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