第179話 カジノと、ゲームと、マウント
模擬実戦も終わり、季節は移り変わり、明日から夏休みだ。
どこかに行くべきなんだろうな。
「マイラ、どこに行きたい?」
「うーん、カジノ」
なぜにカジノ。
あれってどちらかと言えば、男向けだよな。
裏社会が長かったから、ああいう雰囲気に浸りたいのかな。
「わたくしも行ってみたいです」
「連れてってくれるのなら」
「私もいいかな?」
レクティとセレンとリニアも便乗したいらしい。
元締めがやっているカジノならいいか。
「よし、5人で行こう」
夏休みが始まり、昼は課題をやって、夕方になってカジノに繰り出した。
「学園の坊ちゃま、お嬢ちゃんにはちと早い。もっと歳を食ってから出直すんだな」
入口でカジノの保安要員だろうにそう言われた。
学園の制服は不味かったか。
いいや、私服でも年齢で何か言われただろう。
「これでも不服」
マイラが短剣を抜き放ち、保安員の首に突きつける。
「救援頼む!」
保安員が声を張り上げる。
カジノから保安員の同僚が多数現れた。
「げっ、鎌鼬のマイラ」
元締めのカジノだから、古株はマイラの事を知っている。
「入れてくれなさそうだから、こうなったのよ。もちろん入れてくれるわよね」
古株はこくこくと頷いた。
俺達はあっけにとられる保安員達を尻目に、堂々と中に入った。
中ではルーレット、カードゲーム、サイコロゲーム、俺が作ったエアホッケーゲームが行われていた。
マイラはカウンターで金貨100枚分をチップに換えた。
それをセレンとリニアが羨望の眼差しで見る。
レクティはお嬢様だから、別に何にも思わないらしい。
レクティは優雅な仕草で金貨1枚をチップに換えた。
セレンとリニアは負けたような顔で銀貨1枚をチップに換えた。
俺は金貨1枚でいいや。
適当にすって帰ろう。
レクティはカードゲームがお気に召したらしい。
ゲームをやっているテーブルに腰かけた。
慣れた感じで飲み物を頼む。
こういう所は初めてじゃないのか。
情報機関の手下を抱えているらしいから、来た事があるのかもな。
マイラはエアホッケーゲームに挑戦するらしい。
マイラの後ろに立って遊ぶ様子を観察する事にした。
マイラの対戦相手の候補はすぐに決まった。
座った男は頬に傷のある男で、見るからに堅気じゃない。
「お嬢ちゃん、俺で良いのかい」
「構わないわ」
男はカモがいると踏んでいるようだ。
金貨10枚分のチップを賭けて対戦が始まった。
最初マイラは負けた。
そして、負け続け後がなくなると勝ち始めた。
段々と実力が分かったのか男が殺気を放つ。
殺すような目つきでマイラを睨んでいるが、マイラはどこ吹く風。
そして、点数が逆転。
これを勝てばマイラの勝利だ。
「ふざけるな。お前、堅気じゃないだろう」
「なんの事? ほらほら、喋っていると負けちゃうよ」
「くそっ」
マイラがはじき返したパックが相手のゴールに突き刺さる。
プレイヤー1の勝ちの音声が流れる。
「さあ、チップを置いてって」
「お前の顔は覚えたからな」
「そんな事を言っていいのかな。私はここの元締めと良い仲なのよ」
「その年で情婦なのか?」
「ええ」
マイラが立ち上がって俺にキスをする。
「このバイタが」
「ああ、負け犬の遠吠えが気持ち良い」
男は席をたって大股で去って行った。
マイラの対戦相手はそれから現れない。
「マイラさん、勘弁してほしいですよ。ゲームしないで居座られると困ります」
古株が注意しにきた。
「マイラ、カードゲームでもしたらどう」
俺はマイラにカードゲームを勧めた。
「次はサイコロをしてみようかな」
サイコロの賭博をする事になるようだ。
今度は俺も賭けてみよう。
サイコロを振り、出た目が前のより高いか低いか当てるゲームのようだ。
前の出た目が高いと、高く出る方に賭けると倍率が高い。
前と同じ目が出ると、賭金の半分が賭場の収入で、半分は返って来る。
単純なゲームだ。
最初は笑って見てられた。
マイラが親になり、サイコロを振った時から、マイラの連勝が始まった。
どうやらマイラは出目を操作できるらしい。
マイラが親である限りサイコロを振る権利がある。
俺のチップは段々少なくなり、マイラのチップは増え続けた。
古株が青い顔をして飛んでくる。
「姐さん、勘弁して下さい」
「普通に遊んでるだけだけど」
「出入り禁止にしますよ」
「じゃあ、やめとこうかな。また来たいし。チップの9割を換金してね」
宝箱に入った約2000枚の金貨が運ばれてくる。
俺は宝箱を浮かせた。
マイラと一緒にレクティとセレンとリニアの様子を見に行く事にした。
レクティは金貨2枚ぐらいになっていた。
レクティはマイラを見ても視線を一瞬寄越しただけで、なんの感情も浮かべなかった。
セレンは負けて、すったのだろう。
カウンターバーで、ジュースをちびちびやっていた。
セレンはマイラのチップを見ると、来るんじゃなかったという顔をした。
リニアはエアホッケーゲームでそこそこ稼いでいたが、元手が銀貨1枚なので、銀貨10枚ほどだ。
リニアがマイラのチップを見ると、闘志を燃やした顔つきになった。
マイラが従業員を呼ぶ。
「このチップでみんなに飲み物を
手に持っていたチップを全て差し出した。
金貨200枚分はあるだろう。
それを見てリニアの目の光がなくなった。
なんでマイラがカジノに来たかったのか分かったような気がする。
マウントがとりたかったのだな。
やっぱりマイラだな。
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